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本編
第三話 巻き戻り
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──そして────
────目が覚めた──
俺は、車の助手席に乗っていた。
車は動いている。そして、京谷も生きている。
(あ、あれ……さっきのは夢?)
左腕にジャラっとした感覚がある。それは、少女にもらった腕輪だ。
じゃあ俺は、車の修理が終わるまで、寝ていたのか。
「おい隆司、もうすぐ林道だ。窓しめとけ。蚊が入る」
「あ……ああ……わかった」
ドアに付いているハンドルを回し、窓を閉めた。
周囲の風景は、一度見た海の光景だ。
(この景色……一度戻ったのか……)
腕輪を確認したついでに、時計も確認する。
(フェリーがこの孤島に着いたのが3時だ。もう、一時間は経過した。なのに、時計の針はまだ午後3時20分。おかしい……俺は、疲れているのだろうか……まさか……予知夢)
「おい、隆司。おまえ、変だぞ。顔色青くないか?」
「そ……そうか!?」
「まあ、もう少しまってくれ。この林道を抜けたら、部長たちと合流できる」
「ああ、頼む」
(まさかとは思うが、このあと車がエンストするなんてことが起これば……それと、蔵だ。もし蔵が……車が故障した先にあれば……)
確かめなければならない。
蔵の置物、謎の少女、そして、京谷を襲うものの正体。
もし、京谷が襲われるのであれば、助けなければならない。
彼は、俺が唯一本音をぶつけることのできる友人だ。
こんなところで失いたくはない。
だが、実際のところ、どうだろう。
もし、さっきの夢のような恐怖に駆られたら、俺は平静を保っていられるだろうか。
そんな不安が、頭をよぎる。
少し、考えすぎたかもしれない。取り越し苦労であればいいのだが……。
しばらくして、林道に入る。わだちがひどく、荒れ地のような道だ。
車は上下左右に激しく揺れ、頭が天井にぶつかり舌をかみそうになる。
(やはり、同じだ。俺は一度、これを経験している。そしてこの後、車が止まる)
予想通り車は、突然止まった。故障の原因は点火プラグだ。
京谷は、悲鳴を上げるように叫んだ。
「あーもう……エンストかよっ!」
「プラグ、かぶったんじゃないか?」
「あーいらいらしてきた」
京谷は車から飛び出し、後部のドアを開けて工具を取り出した。
もちろん、この後の行動も俺ははっきりと覚えている。
京谷は車のボンネットを開け、黙々と修理を始める。
プラグコードを外し、プラグレンチで点火プラグを引っこ抜く。
「あ~あ、プラグがかぶっちまってるよ……ハハハ、しょうがねえな。隆司の言った通りだ」
京谷は、故障の原因がわかって嬉しそうにしている。
安心した京谷は、胸のポケットからタバコを取り出した。
「ちょっと一服するか……」
「俺も、コーヒーを一服する」
「タバコも一服してみるか? コーヒーの後の煙草はうまいぞ」
「いいや、俺は吸わない派なんだ」
「ま、無理にとは言わねえけどな」
京谷は近くにあった石段を上り、広い所で煙を吹かし始めた。
俺もその後に続き、缶コーヒーを飲みながら京谷の後ろを歩く。もちろん、風上だ。
「隆司、蔵があるぜ。ずいぶんボロボロだな」
「ああ、そうだな」
京谷が蔵に興味を持つ。ここまではいい。
あとは蔵の中にある金の像だ。
それが確認できれば、認めざるを得ない。
──俺の時間が巻き戻ったことを──
京谷は蔵をこじ開ける。
「ずいぶん古い蔵だな……潰れたりしねーよな」
「気をつけろよ」
中に入る。すると、見覚えのある神棚があった。
だが……
そこに金の像はなかった。
「なんだ、神棚以外、なんにもないな。あるのは瓦礫の山だ」
おかしい、鮫と人間の形をした金の像があったはずだ。
やはり、俺の勘違いなのだろうか。
「俺は修理にもどるぜ」
「ああ、頼む」
京谷は蔵を出て車に向かった。
次は、中学生の少女だ。
だが、おそらく、彼女を待つと、京谷が危ない。
その確認は諦めて、京谷のところへと向かう。
石段を下り、京谷の姿を確認する。
京谷は動いていた。まだ無事だ。
俺は、車の運転席の横に置いてある工具ボックスから、スパナを取り出し、京谷の後方につく。
この位置なら、生い茂る木の間から蔵を見ることができるので、少女がきたかどうかが確認できる。
もちろん、車の周囲も見渡せる。もし、誰かが襲ってきてもわかるはずだ。
しばらくして、生臭い臭いが漂ってきた。
この臭いは、やはり前に感じたものと同じだ。
この臭いの主が、おそらく京谷を殺した犯人だ。
俺は、息を殺した。そして、耳を澄ました。どんどん臭いがきつくなる。
あまりの生臭さに吐き気がしてきた。だが、それをじっと我慢する。
荒い息遣いが聞こえてきた。周囲に姿は見えない。だが、近くにいる。
集中する。とにかく、全神経を尖らせる。
──ウマ……ソウ……──
声がした。
(どこから……どこからくる!)
周囲を確認する。そして、京谷との距離をゆっくりと詰めた。
震える足を無視して、スパナを握る手に力を込める。
その瞬間、どこからか、ガサッと草木の擦れる音が聞こえた。
(何かくる!)
その瞬間、俺の視界は闇に飲まれた。
首筋に痛みが走り、首から下の感覚が消え、意識が遠のく。
(狙われていたのは……俺……!?)
────目が覚めた──
俺は、車の助手席に乗っていた。
車は動いている。そして、京谷も生きている。
(あ、あれ……さっきのは夢?)
左腕にジャラっとした感覚がある。それは、少女にもらった腕輪だ。
じゃあ俺は、車の修理が終わるまで、寝ていたのか。
「おい隆司、もうすぐ林道だ。窓しめとけ。蚊が入る」
「あ……ああ……わかった」
ドアに付いているハンドルを回し、窓を閉めた。
周囲の風景は、一度見た海の光景だ。
(この景色……一度戻ったのか……)
腕輪を確認したついでに、時計も確認する。
(フェリーがこの孤島に着いたのが3時だ。もう、一時間は経過した。なのに、時計の針はまだ午後3時20分。おかしい……俺は、疲れているのだろうか……まさか……予知夢)
「おい、隆司。おまえ、変だぞ。顔色青くないか?」
「そ……そうか!?」
「まあ、もう少しまってくれ。この林道を抜けたら、部長たちと合流できる」
「ああ、頼む」
(まさかとは思うが、このあと車がエンストするなんてことが起これば……それと、蔵だ。もし蔵が……車が故障した先にあれば……)
確かめなければならない。
蔵の置物、謎の少女、そして、京谷を襲うものの正体。
もし、京谷が襲われるのであれば、助けなければならない。
彼は、俺が唯一本音をぶつけることのできる友人だ。
こんなところで失いたくはない。
だが、実際のところ、どうだろう。
もし、さっきの夢のような恐怖に駆られたら、俺は平静を保っていられるだろうか。
そんな不安が、頭をよぎる。
少し、考えすぎたかもしれない。取り越し苦労であればいいのだが……。
しばらくして、林道に入る。わだちがひどく、荒れ地のような道だ。
車は上下左右に激しく揺れ、頭が天井にぶつかり舌をかみそうになる。
(やはり、同じだ。俺は一度、これを経験している。そしてこの後、車が止まる)
予想通り車は、突然止まった。故障の原因は点火プラグだ。
京谷は、悲鳴を上げるように叫んだ。
「あーもう……エンストかよっ!」
「プラグ、かぶったんじゃないか?」
「あーいらいらしてきた」
京谷は車から飛び出し、後部のドアを開けて工具を取り出した。
もちろん、この後の行動も俺ははっきりと覚えている。
京谷は車のボンネットを開け、黙々と修理を始める。
プラグコードを外し、プラグレンチで点火プラグを引っこ抜く。
「あ~あ、プラグがかぶっちまってるよ……ハハハ、しょうがねえな。隆司の言った通りだ」
京谷は、故障の原因がわかって嬉しそうにしている。
安心した京谷は、胸のポケットからタバコを取り出した。
「ちょっと一服するか……」
「俺も、コーヒーを一服する」
「タバコも一服してみるか? コーヒーの後の煙草はうまいぞ」
「いいや、俺は吸わない派なんだ」
「ま、無理にとは言わねえけどな」
京谷は近くにあった石段を上り、広い所で煙を吹かし始めた。
俺もその後に続き、缶コーヒーを飲みながら京谷の後ろを歩く。もちろん、風上だ。
「隆司、蔵があるぜ。ずいぶんボロボロだな」
「ああ、そうだな」
京谷が蔵に興味を持つ。ここまではいい。
あとは蔵の中にある金の像だ。
それが確認できれば、認めざるを得ない。
──俺の時間が巻き戻ったことを──
京谷は蔵をこじ開ける。
「ずいぶん古い蔵だな……潰れたりしねーよな」
「気をつけろよ」
中に入る。すると、見覚えのある神棚があった。
だが……
そこに金の像はなかった。
「なんだ、神棚以外、なんにもないな。あるのは瓦礫の山だ」
おかしい、鮫と人間の形をした金の像があったはずだ。
やはり、俺の勘違いなのだろうか。
「俺は修理にもどるぜ」
「ああ、頼む」
京谷は蔵を出て車に向かった。
次は、中学生の少女だ。
だが、おそらく、彼女を待つと、京谷が危ない。
その確認は諦めて、京谷のところへと向かう。
石段を下り、京谷の姿を確認する。
京谷は動いていた。まだ無事だ。
俺は、車の運転席の横に置いてある工具ボックスから、スパナを取り出し、京谷の後方につく。
この位置なら、生い茂る木の間から蔵を見ることができるので、少女がきたかどうかが確認できる。
もちろん、車の周囲も見渡せる。もし、誰かが襲ってきてもわかるはずだ。
しばらくして、生臭い臭いが漂ってきた。
この臭いは、やはり前に感じたものと同じだ。
この臭いの主が、おそらく京谷を殺した犯人だ。
俺は、息を殺した。そして、耳を澄ました。どんどん臭いがきつくなる。
あまりの生臭さに吐き気がしてきた。だが、それをじっと我慢する。
荒い息遣いが聞こえてきた。周囲に姿は見えない。だが、近くにいる。
集中する。とにかく、全神経を尖らせる。
──ウマ……ソウ……──
声がした。
(どこから……どこからくる!)
周囲を確認する。そして、京谷との距離をゆっくりと詰めた。
震える足を無視して、スパナを握る手に力を込める。
その瞬間、どこからか、ガサッと草木の擦れる音が聞こえた。
(何かくる!)
その瞬間、俺の視界は闇に飲まれた。
首筋に痛みが走り、首から下の感覚が消え、意識が遠のく。
(狙われていたのは……俺……!?)
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