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タライ 十三個目
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────7月30日(日曜日) 午前2時00分
────タライ……ゴールド……輝きたい……もっとだ……。
────モットオオオオォォォォ! ゴンゴンゴンゴンゴンゴン…………。
僕は、布団にくるまった。
────7月31(月曜日) 午前10時00分
今日は、家の掃除だ。お盆になる前に客間や仏壇の掃除をしなければならない。
僕は、仏壇の掃除をしていた。
母に『仏壇の引き出しを開け、中のものを一度出して、整理する』を任された僕は、すべての引き出しを引っ張り出した。
「ああ、正人、一番上の引き出しはそのままでいいからね」
「へいへい」
母から声がかかった。一番上の引き出しは通帳や印鑑が入っていた。僕ならこんなところには絶対置かない。空き巣に入られたら確実に狙われる場所だと思っているからだ。
ふと、その引き出しを元に戻そうとしたとき、なかに黒い手帳が入っていた。僕はその手帳を手に取った。
僕は、手帳を開いた、すると…………。
『タライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライ…………』
────タライの文字がびっしりと書かれていた。
僕は思わず息をのんだ。だが、冷静になり、次のページをめくった。
そこには…………。
『
タライ落としの注意
タライは指定のタライを使うこと(練習時も)
練習時はヘルメットを必ず被ること。(かつらヘルメット着用)
落とす高さと速度を把握しておくこと
当たるタイミングを覚えること
当たった後、転がる位置を覚えること
芸人のネタを把握すること
』
メモ……タライ落とし……なぜこんなところにタライ落としの事が……。
僕は、手帳の裏を見た。そこには、名前が書いてあった。
────『落合光男』
うちのじいさんじゃないか……!
僕はもう一度、裏から手帳をめくった。
最後のページにたどり着く。
『
結局、事故は起きてしまった。
我々は、きちんと安全面を考えてタライ落としをしていたのだが、その番組はそれを怠り、見よう見まねでタライ落としをしてしまった。
芸人は意識不明の重体、のち、死亡が確認された。
結局その事故が元で、タライ落としは危険と判断され、すべての番組において、タライ落としは禁止になった。
もう、タライが黄金に輝く日はやってこないのだろうか。
』
この手帳は……タライ落としの記録みたいなものか!?
僕は、この手帳を母に見せた。
「母さん、この手帳なんだけど……タライ落としって」
「へー、懐かしいわねぇ。あなたのおじいさん。タライ職人だったのよ。あ、違った。タライ落とし職人か」
「タライ落とし職人?」
初耳だ……。というか、昔ちょっとだけ聞いたことがある。僕は多分、タライ職人と聞いていた気がする。まさか、タライ落としの方だったのか……!?
「結局、肺を患って逝っちゃったけど、じいさんの落とすタライはとても光ってたわ、黄金に見えるくらい」
「そうなんだ」
黄金に見えるくらい……まさか、このタライ事件はじいさんの仕業……!?
────タライ……タライ……タラ…………。
また幻聴が聞こえた。
────タライ……ゴールド……輝きたい……もっとだ……。
────モットオオオオォォォォ! ゴンゴンゴンゴンゴンゴン…………。
僕は、布団にくるまった。
────7月31(月曜日) 午前10時00分
今日は、家の掃除だ。お盆になる前に客間や仏壇の掃除をしなければならない。
僕は、仏壇の掃除をしていた。
母に『仏壇の引き出しを開け、中のものを一度出して、整理する』を任された僕は、すべての引き出しを引っ張り出した。
「ああ、正人、一番上の引き出しはそのままでいいからね」
「へいへい」
母から声がかかった。一番上の引き出しは通帳や印鑑が入っていた。僕ならこんなところには絶対置かない。空き巣に入られたら確実に狙われる場所だと思っているからだ。
ふと、その引き出しを元に戻そうとしたとき、なかに黒い手帳が入っていた。僕はその手帳を手に取った。
僕は、手帳を開いた、すると…………。
『タライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライタライ…………』
────タライの文字がびっしりと書かれていた。
僕は思わず息をのんだ。だが、冷静になり、次のページをめくった。
そこには…………。
『
タライ落としの注意
タライは指定のタライを使うこと(練習時も)
練習時はヘルメットを必ず被ること。(かつらヘルメット着用)
落とす高さと速度を把握しておくこと
当たるタイミングを覚えること
当たった後、転がる位置を覚えること
芸人のネタを把握すること
』
メモ……タライ落とし……なぜこんなところにタライ落としの事が……。
僕は、手帳の裏を見た。そこには、名前が書いてあった。
────『落合光男』
うちのじいさんじゃないか……!
僕はもう一度、裏から手帳をめくった。
最後のページにたどり着く。
『
結局、事故は起きてしまった。
我々は、きちんと安全面を考えてタライ落としをしていたのだが、その番組はそれを怠り、見よう見まねでタライ落としをしてしまった。
芸人は意識不明の重体、のち、死亡が確認された。
結局その事故が元で、タライ落としは危険と判断され、すべての番組において、タライ落としは禁止になった。
もう、タライが黄金に輝く日はやってこないのだろうか。
』
この手帳は……タライ落としの記録みたいなものか!?
僕は、この手帳を母に見せた。
「母さん、この手帳なんだけど……タライ落としって」
「へー、懐かしいわねぇ。あなたのおじいさん。タライ職人だったのよ。あ、違った。タライ落とし職人か」
「タライ落とし職人?」
初耳だ……。というか、昔ちょっとだけ聞いたことがある。僕は多分、タライ職人と聞いていた気がする。まさか、タライ落としの方だったのか……!?
「結局、肺を患って逝っちゃったけど、じいさんの落とすタライはとても光ってたわ、黄金に見えるくらい」
「そうなんだ」
黄金に見えるくらい……まさか、このタライ事件はじいさんの仕業……!?
────タライ……タライ……タラ…………。
また幻聴が聞こえた。
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