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タライ 十一個目
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────7月29日(土曜日) 午後6時35分
僕は、零子と合流して、一樹の家に向かった。普通の二階建ての家だ。
とりあえず、家のチャイムを鳴らす。
────ピンポーン!
「はーい」
一樹の母の声がした。玄関の扉が開いた。
「正人さん、こんばんわ。あら、彼女連れですか」
「え、いや、あの、その……」
僕は、その言葉に、ちょっとうろたえてしまった。
「幼馴染の零子です。今日は、よろしくお願いします」
「あら、しっかりした彼女ね。まあ、上がってください」
「「お邪魔しまーす」」
僕らは、一樹の家にお邪魔させてもらった。部屋のある2階へいく。母は、一樹の部屋の扉を開く。僕と零子はゆっくりと部屋に入った。
部屋の中は机とベッド。テレビにパソコン。僕の家の部屋とたいして変わらなかった。そして、ベッドの上に問題のタライが置かれていた。60センチほどのアルミでできた普通のタライだ。
「これがその……タライなんですけど……。まさか、これで頭を打って意識不明になったのでしょうか……」
「いえ、それはまだ……わからないです」
この場合、それを疑うのが普通なのだが、不自然に知らないふりをしてしまった。
部屋に不自然に置いてあるタライ……。誰でも怪しく思う。だが、見たわけではないので断定はできないし、それを証明することもできない。ここは、余計なことは言わない方がいいだろう。
零子は、タライを手に取り、くまなく調べていた。
「おい、さわっても大丈夫か?」
「普通のタライね……わりと綺麗に磨いてある……でも、どうして金色じゃないんだろう」
「そもそもアルミでできた普通のタライが金色ってことはないと思うが……」
「何かが違うのかしら……条件とか」
「もしかして、すでにこのタライが原因と決めてないか」
「そうじゃなきゃ、私はここにきません」
「それもそうか……」
一樹の母は、零子に話しかける。
「あの……何かわかりました……?」
「いえ……一樹くんのお母さん。普通のタライでした」
「そうでしたか……心配かけてすみません」
「いえいえ、こちらこそ何もできないで」
「もしよかったら夕飯どうでしょうか? いつも間違って多く作ってしまうので……」
零子の表情がニンマリとした表情に変化した。
「夕飯ですか? ぜひ、ぜひ!」
「助かるわ、じゃあ、後で台所へ来てください。用意しておきますね」
「いえいえ、こちらこそ」
零子は、喜んでいた。もう少し遠慮してもいいのではないかと思うのだが……。
────7月29日(土曜日) 午後8時2分
僕らは、食事を終えて帰ることにした。得られた情報は、タライが存在していたことと、黄金のタライじゃないことだけだった。やはり、この意識不明の事件には、タライが関係しているとみるべきだろう。
「じゃあ、そろそろ帰ります」
「暗いから、気をつけてね」
「ごちそうさまでした! とてもおいしかったです!」
「あら、ありがとう」
僕と零子は、一樹の家を後にした。夜も遅いので、零子を家まで送ることにしよう。
「零子、少しは遠慮したほうがいいぞ。あんまり食べ過ぎると豚になるぞ」
「豚になっても、ブタないでね」
「ブツかよ……」
ため息が出そうな零子のギャグだった。
────タライ……タライ……。
背中がゾクッっとした。そして、謎の声……幻聴か……それとも……。
上から何かの気配を感じた。そして、僕はその気配の感じる方向を向いた。そこは、雲一つない星空だった。その中に、一つだけ金色に光り輝く何かを見つけた。そして、それはどんどん大きくなって…………。
────「タライだ!」
僕は、零子と合流して、一樹の家に向かった。普通の二階建ての家だ。
とりあえず、家のチャイムを鳴らす。
────ピンポーン!
「はーい」
一樹の母の声がした。玄関の扉が開いた。
「正人さん、こんばんわ。あら、彼女連れですか」
「え、いや、あの、その……」
僕は、その言葉に、ちょっとうろたえてしまった。
「幼馴染の零子です。今日は、よろしくお願いします」
「あら、しっかりした彼女ね。まあ、上がってください」
「「お邪魔しまーす」」
僕らは、一樹の家にお邪魔させてもらった。部屋のある2階へいく。母は、一樹の部屋の扉を開く。僕と零子はゆっくりと部屋に入った。
部屋の中は机とベッド。テレビにパソコン。僕の家の部屋とたいして変わらなかった。そして、ベッドの上に問題のタライが置かれていた。60センチほどのアルミでできた普通のタライだ。
「これがその……タライなんですけど……。まさか、これで頭を打って意識不明になったのでしょうか……」
「いえ、それはまだ……わからないです」
この場合、それを疑うのが普通なのだが、不自然に知らないふりをしてしまった。
部屋に不自然に置いてあるタライ……。誰でも怪しく思う。だが、見たわけではないので断定はできないし、それを証明することもできない。ここは、余計なことは言わない方がいいだろう。
零子は、タライを手に取り、くまなく調べていた。
「おい、さわっても大丈夫か?」
「普通のタライね……わりと綺麗に磨いてある……でも、どうして金色じゃないんだろう」
「そもそもアルミでできた普通のタライが金色ってことはないと思うが……」
「何かが違うのかしら……条件とか」
「もしかして、すでにこのタライが原因と決めてないか」
「そうじゃなきゃ、私はここにきません」
「それもそうか……」
一樹の母は、零子に話しかける。
「あの……何かわかりました……?」
「いえ……一樹くんのお母さん。普通のタライでした」
「そうでしたか……心配かけてすみません」
「いえいえ、こちらこそ何もできないで」
「もしよかったら夕飯どうでしょうか? いつも間違って多く作ってしまうので……」
零子の表情がニンマリとした表情に変化した。
「夕飯ですか? ぜひ、ぜひ!」
「助かるわ、じゃあ、後で台所へ来てください。用意しておきますね」
「いえいえ、こちらこそ」
零子は、喜んでいた。もう少し遠慮してもいいのではないかと思うのだが……。
────7月29日(土曜日) 午後8時2分
僕らは、食事を終えて帰ることにした。得られた情報は、タライが存在していたことと、黄金のタライじゃないことだけだった。やはり、この意識不明の事件には、タライが関係しているとみるべきだろう。
「じゃあ、そろそろ帰ります」
「暗いから、気をつけてね」
「ごちそうさまでした! とてもおいしかったです!」
「あら、ありがとう」
僕と零子は、一樹の家を後にした。夜も遅いので、零子を家まで送ることにしよう。
「零子、少しは遠慮したほうがいいぞ。あんまり食べ過ぎると豚になるぞ」
「豚になっても、ブタないでね」
「ブツかよ……」
ため息が出そうな零子のギャグだった。
────タライ……タライ……。
背中がゾクッっとした。そして、謎の声……幻聴か……それとも……。
上から何かの気配を感じた。そして、僕はその気配の感じる方向を向いた。そこは、雲一つない星空だった。その中に、一つだけ金色に光り輝く何かを見つけた。そして、それはどんどん大きくなって…………。
────「タライだ!」
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