タライ落とし

マイきぃ

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タライ 九個目

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────7月25日(火曜日) 午後8時11分

 僕は、今まで見てきた『黄金のタライ』のことを考えていた。

 最初にそのタライを見たのは、6月の24日だった。テレビ番組の中での出来事だったのだが……。

 次はその一週間後だ。どちらも異世界転生が関わっていた。

 そして、7月22日、この日に近所のコンビニで『黄金のタライ』を見てしまった。その時も、やはり異世界転生が関わっていた。

『黄金のタライ』は、異世界転生がキーワードになっているのか?

 それと、このすべてのタライは土曜日にだけ発生しているということだ。

 土曜日に、何の意味があるのだろうか……。だが、それだと、妹の正美がそれを口にしたのに大丈夫だったというのが不思議だ。

 なにか、フラグみたいのなものでもあるのか……。

 それと、もう一つだ。一樹が意識不明になった件だ。おそらく、意識不明になったのは7月15日の土曜日の夜。僕と会話していた最中だ。その時、何らかの理由で『黄金のタライ』が落ちてきた、ということが考えられる。

 だがその日、一樹は異世界転生の話をしていない。じゃあ、なぜ意識不明になったのか……。

 今まで聞くのをはばかっていたが、僕はその日、一樹の家に電話して事情を聴くことにした。もちろん、聞くのはタライのことだ。

 僕は、一樹の家にスマホで電話をかけた。

「はい、佐藤です」

「落合です、こんばんは。あの~ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」

「正人さんですね、こんばんわ。えっと、何が聞きたいの?」

「一樹た倒れた時のことなんですけど……その時、『黄金のタライ』はありませんでしたか?」

「えっと、『黄金のタライ』? ……ん~黄金じゃないけど、普通のタライだったらありましたよ」

「普通のタライ?」

「ええ。結構大きなものだったのだけど……綺麗なタライだったわ。一樹が買ってきたのかしら」

 タライがあった!? ということは……タライが原因で一樹が意識不明になった可能性がでてきた、ということになる。だが、黄金じゃなく、『普通のタライ』って言っていたことが気になる。

「今度、そのタライ見せてもらっていいですか?」

「ええ、構いませんけど」

「じゃあ、また来る時電話します」

「ええ、わかりました。待ってますね」

「じゃあ、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 とりあえず、一樹のところはオーケーだ。あとは、零子にも連絡をいれておこう。何かわかるかもしれない。

 僕は、急いで零子に電話を入れた。

「なになに~、正人。珍しいね、かけてくるなんて」

「たまにはね。それより、タライの事なんだけど……僕の友達の一樹が意識不明になったのは知ってるよね」

「うん、知ってる」

「それでね、その一樹の家にタライがあったんだよ。今度調べてみようと思うんだけど」

「それ、本当? …………。わかったわ。くれぐれも、そのタライのことは周りに喋らないでね」

「あーうん。あまり広げたくない話題だから」

「じゃあ、行くときは、必ず連絡いれてね」

「もちろんだよ。じゃあ、おやすみ」

「おやすみ」

 スマホの通話をオフにして、ホッと一息ついた。とりあえず、準備は整った。行くのは、今週の土曜日だ。何かあるとすればこの日……何かわかるといいのだが……。
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