47 / 63
人食い花に転生しました ~復讐~~その人を食べる日まで~
荒れた森
しおりを挟む
人間たちは、森を去りました。ですが、人間たちの残していった森の傷跡はひどいものです。まだ、火は消えていません。ゆっくり森を焼いていきます。そんなに大きな森ではないですが、このままでは居場所がなくなってしまいます。
呆然と燃える炎を見ながら立ち尽くしていると、《フィオレ》が、桶をもって飛んできました。どうやら水が入っているようです。
「シュカ~、森が火事だよ~! 消さなきゃまずいよ~! あれ、人型になってる」
「《フィオレ》さん。そんな水じゃ消せないですよ、この炎は」
「うん、わかってる。でも、何かしなきゃって思ったから……でも近場に水場がなくて……運ぶの大変」
「水場……ですか……」
…………。
なんとなくですが、試してみたいことがありました。基本的に私の体は植物としての機能を有します。腕からは蔓と花が出ました。ならば足は……。
私は、足にイメージを送りました。すると、足は根に変化しました。
──予想どおりです。
「ちょっと待ってくだいね」
「どうするの? 《シュカ》」
「見てのお楽しみです」
変化させた両足の根を地面に突き刺し、深く掘り進みます。すると、掘り進んだ先に水の感触を捉えました────地下水です。
私は、そこに根を固定して、思いっきりその水を吸い上げました。どんどん水が上がってきます。
次に、両腕を花に変え、燃え盛る炎に向けました。
「いきますよ!」
根から吸い上げた水は、私の体を通過し、両腕の口から炎に向けて大量に噴射されました。
大量の水は、滝のように流れ出て、どんどん炎を鎮火していきます。
────成功です!
物は試しですね……やってみるものです。イメージどおりに水を操作できました。
周囲には、蒸したような湯気が充満します。
「すごーい! やっぱり《シュカ》だね!」
炎はだいたい消し終わりました。風がなかったのが幸いです。
最後に、水の噴射を上に向け、シャワーのようにして水を浴び、体についた血を洗い流します。
「つめたーい。でも気持ちいい~」
《フィオレ》も水を浴びてはしゃいでいました。これで一段落です。
森は、ようやく静けさを取り戻しましたが、動物たちは、この騒ぎでどこかへ逃げてしまったようです。物音ひとつ聞こえません。
その静けさの中、はっきりとした足音が聞こえてきました。濡れた土壌の水を弾きながら歩く音です。
「ここにいましたか、マドモアゼル! 姿がお美しくなられていたので気が付きませんでしたぁ」
「変なのがきたー!」
青装束の男《アズール》でした。それを見た《フィオレ》は、私の後ろに隠れ、嫌がる顔で舌を出しています。
「《アズール》さん……ですか……」
「はい、その通りでぇす。しかし……お手並み拝見と、新兵を送り込んでみたのですが、イレギュラーな帝国魔導師まで倒してしまうなんて……世界樹の力……とても素晴らしい。私のものにならなかったのが残念で仕方ありません」
「知っていたのですか、私の世界樹の力のことを……それであの数の兵を……試したのですね」
「はい、その通りでぇす。ですが、あの帝国魔導師を倒してくれたのは感謝いたしますよぉ。あの人たちは、まともに戦うと強いですからねぇ」
「ひとつ、お聞きしたことがあるのですが……この植物の力を私に与えてくれたのは……あなたですか」
「んんっ、どういう過程でそれを知ったのですかぁ」
《アズール》の口調がちょっとだけ低く変化しました。もしかすると、これは聞いてはいけないことだったのかもしれません。
「声が……似ていたもので……」
「声が、似ていた? それは、天の声のことですかぁ」
「いいえ、私が死ぬ直前に聞いた声のことです」
《アズール》は、指を鳴らし、何もない空間から紳士風の悪魔を出しました。
「ハッハッハ! 天の声! それは、私のことだな。いつも見ていたよ、可憐で美しく、時には非情で獣のように荒々しいその美しい花を!」
この悪魔が……声は天の声そのものでした。私のマップに表示されなかったのは、《アズール》と同じなんらかの理由でしょうか。今は表示されています、そしてイエローゲージです。
私は、その言葉を聞いた瞬間に恥ずかしくなりました。その反動で、無意識にその悪魔をロックし、右腕の蔓を伸ばしてしまいました。
「ハッ! いったい何を! あっ! やめてやめてそれはいやああああ!」
瞬時に悪魔を縛り上げ、引き寄せて食べてしまいました。
────パクリ…………ゴクッ。
「あらららら……私の使い魔の《インキュバス》が一瞬で……あーこわいこわい」
「いえ……そんなつもりはなかったんですけども……体が勝手に……」
「まあ、いいでしょう。それよりも、彼と私の声では、全く似ていないことがわかったはずです。そして、最初の声を知っているということは……あなたは、私がかけた記憶の呪いを解除したということになりますねぇ……人間の感情のままでこの現状を切り抜け、『エナジークリスタル』を666個あつめるとは……実に素晴らしい! 私の見立ては、やはり間違っていなかったぁ! …………コホン」
「やはり、記憶は封じられていたのですね」
つまり……私は信用されていなかったために呪いで記憶を封じられていた。と、いうことになるのでしょうか……。
「それでは、あなたの集めた『エナジークリスタル』全ていただきましょう」
また《アズール》は、パチンと指を鳴らしました。
私の周囲に紫色のクリスタルが環状に並んで出現しました。
そして、そのクリスタルは、《アズール》が(どこからか取り出したかはわかりませんが)持っていた大きなクリスタルに吸い込まれていきます。
私の『エナジークリスタル』は、全て《アズール》の手に渡りました。
【エナジークリスタル x 0】
「では、いずれまた…………。あ、そうそう達成時のプレゼントはすでに開けられてしまったようです。では、ごきげんようマドモアゼル」
そういうと、《アズール》は、さっさと行ってしまいました。
『達成時のプレゼントはすでに開けられた』とは…………この、呪いのことだったのでしょうか……。
呆然と燃える炎を見ながら立ち尽くしていると、《フィオレ》が、桶をもって飛んできました。どうやら水が入っているようです。
「シュカ~、森が火事だよ~! 消さなきゃまずいよ~! あれ、人型になってる」
「《フィオレ》さん。そんな水じゃ消せないですよ、この炎は」
「うん、わかってる。でも、何かしなきゃって思ったから……でも近場に水場がなくて……運ぶの大変」
「水場……ですか……」
…………。
なんとなくですが、試してみたいことがありました。基本的に私の体は植物としての機能を有します。腕からは蔓と花が出ました。ならば足は……。
私は、足にイメージを送りました。すると、足は根に変化しました。
──予想どおりです。
「ちょっと待ってくだいね」
「どうするの? 《シュカ》」
「見てのお楽しみです」
変化させた両足の根を地面に突き刺し、深く掘り進みます。すると、掘り進んだ先に水の感触を捉えました────地下水です。
私は、そこに根を固定して、思いっきりその水を吸い上げました。どんどん水が上がってきます。
次に、両腕を花に変え、燃え盛る炎に向けました。
「いきますよ!」
根から吸い上げた水は、私の体を通過し、両腕の口から炎に向けて大量に噴射されました。
大量の水は、滝のように流れ出て、どんどん炎を鎮火していきます。
────成功です!
物は試しですね……やってみるものです。イメージどおりに水を操作できました。
周囲には、蒸したような湯気が充満します。
「すごーい! やっぱり《シュカ》だね!」
炎はだいたい消し終わりました。風がなかったのが幸いです。
最後に、水の噴射を上に向け、シャワーのようにして水を浴び、体についた血を洗い流します。
「つめたーい。でも気持ちいい~」
《フィオレ》も水を浴びてはしゃいでいました。これで一段落です。
森は、ようやく静けさを取り戻しましたが、動物たちは、この騒ぎでどこかへ逃げてしまったようです。物音ひとつ聞こえません。
その静けさの中、はっきりとした足音が聞こえてきました。濡れた土壌の水を弾きながら歩く音です。
「ここにいましたか、マドモアゼル! 姿がお美しくなられていたので気が付きませんでしたぁ」
「変なのがきたー!」
青装束の男《アズール》でした。それを見た《フィオレ》は、私の後ろに隠れ、嫌がる顔で舌を出しています。
「《アズール》さん……ですか……」
「はい、その通りでぇす。しかし……お手並み拝見と、新兵を送り込んでみたのですが、イレギュラーな帝国魔導師まで倒してしまうなんて……世界樹の力……とても素晴らしい。私のものにならなかったのが残念で仕方ありません」
「知っていたのですか、私の世界樹の力のことを……それであの数の兵を……試したのですね」
「はい、その通りでぇす。ですが、あの帝国魔導師を倒してくれたのは感謝いたしますよぉ。あの人たちは、まともに戦うと強いですからねぇ」
「ひとつ、お聞きしたことがあるのですが……この植物の力を私に与えてくれたのは……あなたですか」
「んんっ、どういう過程でそれを知ったのですかぁ」
《アズール》の口調がちょっとだけ低く変化しました。もしかすると、これは聞いてはいけないことだったのかもしれません。
「声が……似ていたもので……」
「声が、似ていた? それは、天の声のことですかぁ」
「いいえ、私が死ぬ直前に聞いた声のことです」
《アズール》は、指を鳴らし、何もない空間から紳士風の悪魔を出しました。
「ハッハッハ! 天の声! それは、私のことだな。いつも見ていたよ、可憐で美しく、時には非情で獣のように荒々しいその美しい花を!」
この悪魔が……声は天の声そのものでした。私のマップに表示されなかったのは、《アズール》と同じなんらかの理由でしょうか。今は表示されています、そしてイエローゲージです。
私は、その言葉を聞いた瞬間に恥ずかしくなりました。その反動で、無意識にその悪魔をロックし、右腕の蔓を伸ばしてしまいました。
「ハッ! いったい何を! あっ! やめてやめてそれはいやああああ!」
瞬時に悪魔を縛り上げ、引き寄せて食べてしまいました。
────パクリ…………ゴクッ。
「あらららら……私の使い魔の《インキュバス》が一瞬で……あーこわいこわい」
「いえ……そんなつもりはなかったんですけども……体が勝手に……」
「まあ、いいでしょう。それよりも、彼と私の声では、全く似ていないことがわかったはずです。そして、最初の声を知っているということは……あなたは、私がかけた記憶の呪いを解除したということになりますねぇ……人間の感情のままでこの現状を切り抜け、『エナジークリスタル』を666個あつめるとは……実に素晴らしい! 私の見立ては、やはり間違っていなかったぁ! …………コホン」
「やはり、記憶は封じられていたのですね」
つまり……私は信用されていなかったために呪いで記憶を封じられていた。と、いうことになるのでしょうか……。
「それでは、あなたの集めた『エナジークリスタル』全ていただきましょう」
また《アズール》は、パチンと指を鳴らしました。
私の周囲に紫色のクリスタルが環状に並んで出現しました。
そして、そのクリスタルは、《アズール》が(どこからか取り出したかはわかりませんが)持っていた大きなクリスタルに吸い込まれていきます。
私の『エナジークリスタル』は、全て《アズール》の手に渡りました。
【エナジークリスタル x 0】
「では、いずれまた…………。あ、そうそう達成時のプレゼントはすでに開けられてしまったようです。では、ごきげんようマドモアゼル」
そういうと、《アズール》は、さっさと行ってしまいました。
『達成時のプレゼントはすでに開けられた』とは…………この、呪いのことだったのでしょうか……。
0
お気に入りに追加
764
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる