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第十五話 主の承認

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 シグルドは、私の疑問に答えた。
「私は一人寂しいお嬢様たちの愛玩……じゃなくて、前線で戦う勇敢な方々をサポートするために作られた、高性能機械です」

「今、ちょっとだけ気になることを口走ったきがしますけどぉ~」
 シグルドの言葉を聞いたエミリアは、目をふさぎながら不安そうな声を出す。

 私が思うに、おそらくシグルドは、二つの機能を備えているということなのだろう。
 それよりも、さっきのロボットとの関係が気になった。それとなくシグルドに問う。

「君は、さっきのロボットの仲間なのか?」
「種類に関して言えば同類、仲間と言っていいでしょう。ですが、用途は違います。あなた方がロボットと言っているものは、守護兵器のことだと思われます。あれは、古代文明最後の生産ラインで作られた量産型です。後期型なので、マナを動力源に直接変換して動くことができます」
 
 彼の言っていることはよくわからなかった。
 だが、どうやらマナを消費して動くものということは分かったつもりだ。

 続いてシグルドは、真剣な表情で私に話しかける。

「私の創造主の命により、剣を抜いたあなたに忠誠を誓います。どんなことでも致します。なので、承認をお願いします」
 シグルドは、私の前にひざまずき、頭を下げた。

 どうやら、剣を抜いた私をご主人様に選ぼうとしているようだ。
 だが、本当にどんなことでもするのだろうか。
 どんなことでも…………なぜだか、わくわくが止まらない!

 だが、ここで私利私欲に走るのも気が引ける。
 ひとまず、裸のシグルドを見て恥ずかしがっているエミリアをどうにかしなければならない。

「ふむ……では、男の体を見せられてエミリアが困っているのだが……なんとかならないか?」
「男では、都合が悪いですか。では、シグルコに変形します」

「シグルコ?」

 すると、シグルドの体が開き、中から別のパーツが出てきた。シグルドは、見る見るうちに胸のある美少女へと姿を変えていく。さらに、大事な部分には神々しい光のおまけつきだ。

「私は一人寂しい男子たちを癒すためにこの世に放たれたダッ……じゃなくて、これが女形モードです。シグルコとお呼びください」
 と、シグルコと名乗ったシグルドはかわいいマシンボイスで話した。
 男の体から女の体に変形するのには正直驚いた。

「ぶっ……ブラボー!」
 それを見ていた隊長は、そう叫ぶと鼻血を吹いて倒れた。

「やっぱり、このロボット……何か怪しいですぅ……」
 エミリアは、さらに不審がっている。

 どうやら説明が足りなかったらしい。
 ……開いたコートを閉じてもらうだけでよかったのだが……
 ストレートにコートを閉じろと命令したほうがよさそうだ。
 それにしても、なぜコートを開く必要があったのだろう。

「それにしても、なぜ君はコートを開いて裸の姿を晒す必要があったのだ?」
「それは、販売促進用のプログラムが組み込まれていますので、人前でコートを開くように設定されていたからです。私たちは、売れるために必死でした」

「売り物……?」

「はい。実は私は大金持ちのあるお方にオーダーメイドで発注されたものでした。ですが、発注者が事故でお亡くなりになってしまい、受取人不在となってしまいました。もし私が玩具や召使い程度の品であれば、すぐに売り手はついたのですが、あいにく私は戦闘に特化されているのでマナを大量に消費します。なのでコスト面で買い手が付かなかったのです。廃棄するのももったいないとのことだったので、今まで封印されていたのです」

「そうか……お前……今までずっと一人で……」
 どうやら、聞いてはいけないことを聞いてしまったようだ。
 そのあまりにも悲しい話に、私は目を濡らす。

 私はロボットに告げる。
「ならば、私がお前の主として、面倒を見よう」
「本当ですか、では、あなたの手で魔剣グラムを私にお与えください」
「これをお前に授ければいいのか?」

 私は、王家のしきたり通りに、先ほど抜いた魔剣グラムをシグルドに授与する。
 すると、一瞬だけシグルドの目が赤く光った。
「認証完了しました。あなたを主と認識します」

 これで私は、シグルドの正式な主となった。

 その直後、突然シグルドがフラフラと倒れた。
「どうした! シグルド!」
「ああ……しばらくマナが充電されていなかったので……もう、活動限界です……」
 シグルドはそのまま私にもたれかかる。

「死んでないですよね……あ、ロボットだから……死なないのか……」
「私のマナを分け与えることができるといいのですけど……」
 エミリアとエリザは、シグルドを心配してくれている。
 どうやら、彼女たちもシグルドを仲間と認識してくれたようだ。

「ふう……持ち帰るのが、大変そうだ。じゃあ、帰るぞ」
 私たちは、マナ切れを起こしたシグルドを背負い、帰還の途に就くのだった。

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