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第二十一話 仲間の食事

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 森林地帯を抜け、山岳地帯を進む。
 足場は悪いが見通しは良く、警戒は赤外線サーモグラフィーだけで事足りた。

「グルルルルル……」

 時折、ウェアウルフが5匹程群れを組んで襲ってくるが、ファーストが余裕で対処してくれる。どうやら、ファーストをスピードタイプに設定したのは正解だったようだ。

「キャイィィィィン!」
「連携もなしに突っ込んでくる……これじゃあ、群れを成す意味がありませんね」

 稀に赤外線サーモグラフィーが熱源反応をキャッチしても、視界に敵がいない場合がある。それは、上空からのガルーダの攻撃だ。急降下で僕たちを狙ってくる。
 だが、それをセカンドは稲妻の魔法で一蹴する。

「サンダー!」

 稲妻の攻撃を受けたガルーダは、黒く焼け焦げ墜落していった。

「近づいてくるとわかれば怖くありません」

 ──この場合も課金を消費するわけだが──まあ、一応節約指令は出してある。ちょっと金銭的な事に関して、神経質になりすぎているのかもしれない。

 サードが墜落するガルーダを見てつぶやく。
「あの鳥、食べれるかな」
「食べないでください」
 と、すかさずセカンドが突っ込む。

 ──そういえば、「食べる」で気が付いたのだが、このメイドたちが食事をとっているところを見たことがない。スマホの仲間の場合は、大丈夫なのだろうか──。

「君たちは、食事はとらなくても平気なのかい?」
「食事ですか……取らなくても平気といえば平気ですが、食べると能力値がUPするようにできています」

「それは初耳だ……」
 というよりも──これでスマホで作成した仲間は人間ではないという事実が判明してしまった。人の姿をした別の何かと捉えた方がいいのだろうか──。
 ──と、だからといって別に困ることもないので、その辺のことは考えないようにした。

「そうですね。試しにサードがガルーダを食べるとどうなるか試してみましょう」
 セカンドはそう言うと、墜落したガルーダの足を握って拾い上げると、すかさずファイヤーの魔法で念入りに焼き、サードへと差し出した。

「いっただっきまーす! モグモグモグ……うまーい!」

 こんがりと焼けたガルーダを、サードがかぶりつく。とても美味しそうに食べている。

「あーおいしかった……あれ、なんだか背中がむず痒い……」
「どうした、サード」

 サードの様子が変だ。背中をもぞもぞと動かし、次第にのたうち回り始める。

「あーん、かいて~背中が痒い~」
「どれ、かけばいいんだな」

 ──と、背中を差し出すサードの上着の背中をめくったその瞬間──。

 ──ボフッ──

 サードの背中から勢いよくモフモフな羽が生え、僕の顔はその羽に埋ずまった。
「ゲホッ……ゴホッ……これは……どういうことだ?」

 羽は、さっきセカンドがサードに食べさせたガルーダのものと同じだ。スマホに事の詳細を尋ねると、即座に回答が返ってきた。
『食べたものが指定のモンスターの場合、一時的にそのモンスターの能力をランダムで得ることができます』
「ランダム……じゃあ、今回は羽だったのか……」
『ただし、運悪くハズレになった場合、指定外のモンスターを食した場合、複数の食事で食い合わせが悪い場合は、激しい腹痛と下痢で戦闘不能に陥ります』
「え……じゃあ、もしハズレだったら……」

 ──どうやら、モンスターを食べさせるのは、あまり望ましくないようだ。

「サード、良かったですね。おなか壊さなくて」
 セカンドがサードを皮肉るが、サードは羽を動かすことに夢中でまるで聞いていない。それどころか空をぐるぐると飛び始める。

「飛べる! 私飛んでる!」
「おーい、サード。あまり長い時間は飛べないぞ。早く降りてこい」
 心配するファースト。だが、大喜びで飛び回るサードの耳には届かない。羽が生えてうれしいのはわかるが──。

 ──と、突然サードは空中で静止して指を差す。
「ねえねえ、あそこに城が見えるよ。真っ黒い雲に包まれてる。私たち、今からあそこに行くんだよね」
「城? 魔王の城か!?」
「壁があって町があって、中央に城がある。結構大きい城だね」

 サードが指を差した方向は、僕らが今目指している魔王の城の方向だった。

 ──そこに、魔王が存在する。おっぱいの成長の力を、今もなお吸い続けている邪悪な魔王が──。
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