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第十一話 レベルシステム

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 次の日、依頼の指定場所の山林へと向かった。目的地は鉱山跡地、ゴブリンが住み着くのにはうってつけの場所だ。
 山は、奥に進むにつれ、ジャングルと化す。細い獣道は枝が伸び、道をふさいでいる。空間ストレージから斧を出し、枝をそぎ落としながら道を作る。
 念のため、スマホに内蔵されていた赤外線サーモグラフィーを使用しながら先へ進む。今は、斧しか装備がない──万が一ということもある──過信は禁物だ。

「なあ、スマホ。このレベル3というのはゴブリンに対してどの程度のものなんだ?」
『レベル5のゴブリンに対し、通常攻撃で同時に2匹を相手にできるぐらいの強さです』
「なるほど……」
 そんなに極端な強さではなさそうだ。だが、スマホ勇者レベル3で2匹のゴブリンを狩れる力があるのなら、単純に計算するならば──。

「レベル6になれば、4匹狩れるのか?」

『いいえ、レベル6の場合、全ての基本能力が6%上乗せされる強さなので、レベル3の時よりもゴブリン2匹を多少楽に狩れる強さです』
「…………」

 ──あまりにも弱すぎる──これでは勇者になった意味がない。コツコツとレベルを上げて、レベル50でようやくゴブリン3匹と渡り合うことができるとでもいうのか。
 現実を知ると気が遠くなりそうなので、あまり聞きたくははいが、試しに聞いてみる。

「スマホ……僕はあと、どのぐらい敵を倒せばレベル50になれるんだ?」
『敵を倒してもレベルを上げることはできません』
「な……なんだってぇ!」

 敵を倒しても、レベルが上がらない──それじゃあ、敵を倒す意味がない。
 だが、スマホの課金能力を使う為の金は稼げる。やはり、スマホ勇者はスマホに頼らざるを得ないのだろうか。

『レベルの上昇システムが、基本とは違います』
「と、いうと?」
『残念ながら、私にはこのシステムを把握することはできません。ただ、レベル条件として──月と名声の名の下に強さを与えられん──というメッセージが残されています』
「なんだその謎かけのようなメッセージは……」

 月と名声。月は一応この世界にもある。月が条件に関係しているのだろうか。名声は恐らく、クエストやイベントを達成することによって上がっていく可能性もある。これは、クエストを達成しなければ確かめることができない。

 それよりも、この強さの状態で、どうやってクエストをクリアするかだ。
 村人に毛の生えた程度の強さしかないスマホ勇者レベル3で、通常4人の冒険者で挑むクエストを一人で達成しなければならない。もちろん、軍資金さえあればスマホのチート級のスキルを使用して達成することも可能だが、あいにく今は軍資金がない。

「…………」

 ──ふと、素晴らしい考えが浮かんだ。

「爆発するスマホの複製、作れる?」
『はい。作れます』
「それ、課金必要?」
『いいえ、必要ありません』

 考えてみれば、課金せずとも高威力の攻撃をすることができたのだ。
 スマホを受け取った直後、いろいろありすぎてその時は気が動転していた。そのせいで事の詳細をつかめていなかったが、確かにゴブリン一個大隊を撤退させる威力があった。
 その威力は、金貨10枚を課金して発動できるL5クラスの攻撃スキルと同等。それが、スマホを複製するだけで使えるのだ。これを利用しない手はない。

 だが、巣穴を潰すには、やはり巣穴の奥へ放り込まないと、おそらく効果は半減するだろう。
 何かいいアイディアはないものだろうか──。

 僕は、スマホに本体の複製を作らせ、有効利用する手立てを考えながら目的地へと向かった。
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