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第八話 スマホ勇者

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 勇者になった僕は、ひとまず、スマホの能力を確認してみることにした。
 まず、道具のアイコンをタップする。
 道具は、空間ストレージという所へ保管できるようだ。手に持てないものは、そこへ保管できる。
 他にも、オートマッパーや仲間作成機能、通貨の売買、ゲーム、インターネットと、機能は満載だ。

 最後に、魔法のアイコンをタップする。すると、画面を埋め尽くすほどの魔法リストが出てきた。スワイプしながら、全てのリストを確認する。
 火、水、土、風の属性魔法はもちろんの事、その他、光魔法、闇魔法、召喚魔法、補助魔法、etc……。この世界で使用可能な魔法が全て載っていてもおかしくないぐらいの数の魔法が記載されていた。

 その魔法、よく見ると、魔法名のコスト欄に消費硬貨という数値が書いてあった。
 まさかとは思うが──魔法を使用するのにMPじゃなく軍資金を消費するのだろうか──僕はその疑問を直接スマホに尋ねた。

「おい、スマホ。この魔法は全て軍資金が必要なのか?」
『はい。使用時に軍資金を消費します』
「なぜ、MPを消費しないんだ?」
『それは、あなたがスマホ勇者だからです』
「す……スマホ勇者!?」

 たしかに、スマホを持った勇者だ。だが、そんな名称でいいのだろうか……少し、恥ずかしい。

「ただの……普通の勇者じゃないのか?」
『いいえ。スマホ勇者は勇者とは別物です。ただし、この世界では勇者として扱われます』
「…………」

 勇者とは別物!?
 それだけでは、納得できない。スマホに詳しく問い詰める。

「じゃあ、僕は勇者より強いということなのか?」
『いいえ、それはあなたの適正次第です』
「適正!?」

 どんどんスマホ勇者というものが、謎の存在に見えてきた。
 勝手に解釈するならば、スマホを使いこなすだけの勇者ということなのだろうか──。

 その後、何度もスマホ勇者のことを聞いたが、答えは同じだった。
 だが、一つだけはっきりとわかったことがある。このスマホは、高度なアプリを使用する際、課金を必要とする。それならば──金さへあれば、その機能を余すことなく利用できる──異世界のスマホ勇者は金次第といったところか。

 日が暮れたので、アイテム欄に置かれていた寝袋をタップした。
 突然、目の前の空間が裂け、そこから寝袋が出現する。
 僕は、それを取り出して地面に広げた。体力こそ回復しないが、道端で寝るよりはましだろう。
 寝袋に包まりながら、明日の予定を考える。

 ──まずはお金だ。
 軍資金を手に入れる為、日が昇り次第、町のギルドに出向くことにした。
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