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第五話 スマホ起動

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 爆発の威力は強大だった。体を地に伏せても吹き飛びそうになりそうな爆風。直接浴びたら燃えてしまいそうな熱風。
 もし、高台にいなかったら、爆風の直撃をうけ、自分も巻き込まれていただろう。

 爆発が落ち着いた後、爆心地を恐る恐る覗く。
 すると、地面はクレーターのようにえぐれ、そこにいたゴブリンたちの姿は、跡形もなく消えていた。何かが焦げた臭いがそこら中に充満している。

 大勢いたゴブリンの群れは、ゴブリンロードを含め、約4分の3が消失していた。

「ニゲロ! ニゲロ! 大将、死んだ!」
 残ったゴブリンたちは後退を始めた。
 引き際が良すぎる。かなり統率の取れたゴブリンのようだ。まさか、この町一帯を支配するつもりだったのだろうか。
 あり得ない話ではないが、たとへ占領したとしても、王国の騎士団が出てくれば、勝てるとも思えない。
 とすれば、何か別の目的が──と、考えてはみたものの、それ以上わかる筈もなかった。

 それにしても──異世界スマホの破壊力には驚かされた。
 おそらく、この使い方は本来の使い方ではない。だが、これだけのポテンシャルを秘めているとすれば、能力も期待できそうだ。

 だが、未だにスマホはダウンロード中の表示のまま、静寂を保っている。

「あと、何分だ?」
『使用可能になるまで、あと10分です』
「…………」

 ふと、倒れている両親の姿を眺めた。
 ゴブリンに殺された父と母──もうピクリとも動かない。
 だが、記憶が戻った僕には、その父と母を両親と認識することはなかった。
 だからといって、たとえそれが偽物だったとしても、父と母として、僕を育ててくれたとには変わりない。悲しんでもいいのだと、僕は自分に言い聞かせた。

 今、頭の中にある二つの世界の記憶が交差する。
 元の世界は、道具はたくさんあり、何不自由ない世界に思える。
 だがそこでは、文明の利器に飲まれ、自らが道具になっていたような気もする。
 プライベートを監視され、どこにいても呼び出され、スマホに命令されているような毎日。
 人間をも管理する道具──スマホ。

 だが、悪いところばかりではないことも確かだ。
 要は、それを利用する人間次第ということだ。

 そして今、僕は念願の異世界スマホを手にしている。
 いったいどんな未知の力を発揮するのだろうか。
 
『異世界スマホVr.1.0起動します』

 画面が表示された。一般的なスマホと同じようなものだ。
 違うのはアイコン。
 魔法アイコン、道具アイコン、武器アイコン、etc……
 いかにも異世界用に作られたスマホだ。

 いろいろ機能を試してみたいが、ひとまず、今は後回しだ。
 その力を使って早速やらなければならないことができた──

「スマホ……一つ聞きたいのだけど……」
『何でしょうか』
「蘇生できる?」

 ──それは、両親の蘇生だ。

『できます』

 あっさりと答えが出た。
 さすが、異世界スマホというだけのことはある。蘇生が可能だったことに、僕は安心した。

『通常の蘇生であれば蘇生率50パーセント、記憶保持率50パーセントとなります。ただし、失敗するごとに蘇生率は下がり、次の蘇生まで10分のクールタイムが発生します。ただし、蘇生対象が死んで1時間を経過した場合は蘇生不可となります』

 失敗にクールタイム、それに制限時間──それだと、うかつに失敗できない。だが、これは通常の蘇生の場合のことを言っている筈だ。ならば、通常じゃない方法を聞いてみることにする。

「じゃあ、パーセンテージを上げるには?」
『課金することによってパーセンテージを上昇させることが可能です』

「か……課金!?」

 それは、貧乏性の僕にとって、嫌な響きのする言葉だった。
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