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第三話 大事な家族

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 僕は、父さんたちに退避を促す。

「父さん! 母さん! 来ちゃだめだ!」

 父さんたちのいる位置は、家の窓から見える位置だ。これでは中にいるゴブリンに見つかってしまう。

「あっちにも人間!」
「あっち襲う!」

 父さんたちの姿に気づいたゴブリンの2匹が、窓を破り、家の外へ出て走り出してしまった。こうなると、もうヘイトをこっちに向けることはできない。
 僕はドアを閉め、家の中にいるゴブリンを狩るのを後回しにし、父さんたちの方へ向かったゴブリンを追いかけた。
 もちろん、間に合わない。だが、僕は希望を捨てなかった。

 ゴブリンは、持っていたナイフで母の背中を切り裂く。
「キャアアアアアアア!」
 そして父も同様に、切り裂く。
「ぐああああああ!」

 切り裂くのに夢中なゴブリンは、まだこちらに気づいていない。

「やめろおぉ! ゴブリン!」
「ンギャピー!」

 僕は斧をぶん回し、2匹のゴブリンを背後から斧で切り裂いた。

 だが、さっき家の中にいたゴブリンが、僕を追いかけてくる。
「2匹か……」

 まず、一匹。とびかかってくるのに合わせて後ろに下がり斧を振りぬく。
「ンギャピー!」

 そして──もう一匹も同じ方法で倒せたはずだった。だが、そんなに奴らは甘くなかった。斧を振り終えたタイミングを狙ってもう一匹が襲ってきた。

「最初の一匹は、囮……!」
「はい死んだー! お前、俺のエサ確定!」
 嬉しそうな声を上げて、僕の懐に入り込むゴブリン。
 小さな短剣が腹に向けて突き刺されようとしていた。

 その時、別な力によって体が横に突き飛ばされた。

「お前は……生きろ……」
「父さん!?」

 気が付くと、父が僕の身代わりになって刺されていた。

「ん……なんだおっさん!?」
 ゴブリンは、突然人が入れ替わったことに困惑していた。
 もちろん、僕はその隙を見逃さない。
 湧き上がる怒りに任せ、僕は斧を振りぬく。

「うおああああ!」
「ンギャピー!」

 最後のゴブリンを倒した。

「はぁ……はぁ……はぁ…………この……畜生がああああああ!」

 父は、さっきのゴブリンの一撃で絶命していた。
 側で倒れている母も致命傷だ。おそらくもう助からない。

 だが、母はそんな状態を顧みず、何かを懐から取り出し、僕に手渡そうとした。
 それは、手のひらサイズのプレートのようなものだった。

「こ……これ……を……」
「母さん、喋っちゃだめだ!」

「これは、あなたへのプレゼント……15歳まで育てたら、それを渡すように女神に言われていたの……」
「女神……!?」
「本当は、あなたは私の子じゃないの……雷とともに何かに包まって落ちてきた赤子なの……」
「母さん……何を言って……」

 その時、遠くで歓声が聞こえた。数百──いや、数千の声。その声は、ずっと同じ言葉を繰り返していた。

「「「魔王様万歳! 魔王様万歳! 魔王様……」」」

 高台から声のする方を見下ろした僕は、そこで驚くべき光景を目にした。
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