3 / 4
3
しおりを挟む
指が不器用に、クレアのブラウスのボタンを外す。だがその手を止め、ファリドはうわごとのように呟いた。
「いや、強引に抱く男が、悠長に服など脱がすはずはないな」
ファリドが懐から短刀を取り出し、メイドのお仕着せの襟元につきつける。なにを、と口に出す間もなく、クレアのボロボロの服が縦に裂かれた。
突如むき出しになった肌を恥じらい、クレアは身をよじる。下着姿を人に見られたことなど一度もないのに……。だが彼の指は器用によれた下着を引っ張り、身体に傷を付けぬようぷつりと生地を裂く。
「なかなかいい眺めだな。僕から逃げられなくなる感想はどうだ」
服の残骸に両袖を通しただけのあられもない姿で、クレアは羞恥と恐怖にぎゅっと唇を噛んだ。
――殿下、どうか罪など犯さないで。
だがその祈りは届かなかった。
クレアの身体から下着の残骸を引きはがしたファリドが、己の衣装をかなぐり捨てて、痩せた身体にのし掛かる。
「い、いや、だめ……だめぇ……ッ」
すくみ上がって動けなかったクレアは、組み敷かれて我に返り、必死にもがいた。
だが、放してはもらえなかった。
ファリドはクレアの右手首を押さえつけ、もう片方の手で、閉じようとする足を、強引に開かせる。
「あ……あ……だめ……」
一糸まとわぬ姿で秘部を暴かれ、クレアの身体がすくみ上がる。
人目にさらしたことのなかったその部分に、冷たい夜の風がひやりと触れた。
「っ、だめ、見ないで……っ!」
だが、足を閉じることは出来なかった。
ファリドの身体が、両足の間に割り込み、更に大きく足を開かせる。
このままでは王子である彼が、本当に罪を犯してしまう。
怯えたクレアは、自由な片手で必死にファリドの肩を押しのけようとした。
だが、記憶のものより遙かにたくましさを増した身体には、非力な彼女の抵抗など何の意味もなさなかった。
「どこに逃げるんだ。こんな裸同然の格好で……いや、裸よりずっといやらしいな。君は自分が今、どんな姿で男を誘っているのか分からないのか」
ファリドの声に愉悦がにじむ。
同時に彼の片手が、味わうように内股の肌をなでた。
たださらりと触れられただけなのに、身体中に衝撃が走る。
「あぁ……っ!」
思わず声を漏らしたクレアの反応に満足したのか、ファリドが小さく喉を鳴らした。
ファリドの指先が、濡れて震える裂け目をすうっと撫でた。
「い、っ」
あり得ない。こんな場所に触れられるなんて。クレアの腰がビクンと跳ね上がる。
彼の指は離れず、閉じ合わされた陰唇を左右に開かせ、より深い部分をもう一度撫でた。
「いやぁ!」
クレアは指先から逃れようと必死に身体をよじった。だがファリドは容赦せず、敏感な反応を見せるその箇所を執拗に弄び続けた。
「お前のここに、俺の指を入れたい」
あっさりと囁かれた言葉に、クレアは愕然となって目を見開いた。
「え、な……っ……ああぁ……っ!」
長い指が、小さくすぼまった蜜孔にズブリと沈み込む。
異物を受け入れたことのなかった襞と襞のあわいが、与えられた衝撃にわななく。
「中が狭いな、これから少し辛いかもしれない」
いいながら、彼が更に指を進めた。じゅぷりという嫌らしい水音を立てて、濡れそぼったクレアの中がゆっくりとかき回された。
「あ……あ……なに……を……」
「広げているんだ、こんな風に」
蜜洞を弄ぶ指が、中でクイ、と軽く曲げられた。音を立てて粘膜が開かれ、身体の奥から熱い雫があふれ出す。
「ひぃ、っ!」
衝撃と共に、クレアの目尻から一粒の涙がこぼれ落ちる。
――きもち……いい……。
クレアは、重なり合う肌の熱に理性を失いかけている事を実感し、歯を食いしばった。
――私の馬鹿。だめよ、だめ、ファリド様にこんな事をさせてはだめ、ファリド様を汚しては……駄目なのに……。
涙が次々にあふれ出し、止まらなくなった。
「痛いのか?」
クレアの涙の意味を誤解したのか、ファリドが秘裂を弄ぶ手を止める。
「いいえ、痛くは……」
素直に答えると、ファリドは目を細めた。
「なら、いい」
泥濘の外に出ている親指が、きゅっと茂みの中に立ち上がる花芽を押す。
「あ、だめ……そんなところに、さわっては……」
途切れ途切れの言葉が、再び接吻で塞がれる。
厚い舌先がクレアの唇をこじ開け、口内に侵入してきた。
「ん……っ!」
クレアは、驚きのあまり思わずうめくような声を漏らす。
その声に煽られたように、舌の動きはますます激しくなった。
「ん、ふぅ……っ!」
そのとき、蜜襞を弄んでいた指が、一度、中から抜けた。だがその指は本数を増やし、再びクレアの隘路をこじ開けようと忍び込んできた。
身体の疼きが抑えられなくなる。
クレアは唇を噛み、ファリドの裸の背中に片手を回す。
逃げないと悟ったのか、右手首を押さえつけていた彼の手が緩む。クレアは自由になった両腕で、彼の身体に縋り付いた。
「お願いです、指を、抜いて」
懇願しながらも、吐き出す息は熱を帯びてゆく。
こうやってファリドにしがみついていないと、自分が自分でなくなりそうだ。
「嫌だ、止めない」
ファリドが、うわごとのような声音で呟いた。
「お前の中は嫌がっていない。こんなに俺の指を締め上げて、もっと触ってくれって、可愛らしく強請ってる」
「そんな……ちがう、ちが……んっ……」
逆らう言葉は、再び唇で塞がれた。
淫らな姿勢で大きく足を開かれ、蜜音と共に秘部をもてあそばれながら、クレアははしたない声だけはあげまい、と唇を噛み続ける。
いつしかクレアの脳裏からは、理性が失われはじめていた。
ファリドにこんな愚行を止めさせねばいけないはずだ。
なのに、なぜ中を責め立てる指を恥ずかしい場所にくわえ込んで、何度も口づけを交わしているのだろう。
「駄目……ファリドさま……」
ようやくその言葉を押し出すと、ファリドの指が離れた。ぬるい蜜が、名残を惜しむように幾筋もしたたり落ちる。
「あ……」
ようやくこの甘くて苦しい責めから解放されたのだ。ほっとしたクレアは手の甲で涙を拭う。
だがその瞬間、いきなり両手で腰を捕まれた。
「残念だが、まだ終わっていない。これからだ、クレア」
ファリドの形のいい唇が弓形に釣り上げられる。
クレアの両足を再び大きく開かせた彼は、ズボンを下ろし、そこから立ち上がる巨大なものを彼女の秘裂に押し付けてきた。
「い、いやあっ!」
裂け目にぴったりと、反り返った肉杭があてがわれる。彼の身体はどうなっているのだろう。戸惑って震えるクレアの蜜裂を、幾度もその肉杭の表面が行き来する。
ぐちゅぐちゅと音がするたび、下腹が焼かれたように熱くなる。
「……っ、あ……いや、だめっ、これ、だめ……っ」
本能的に恐怖を感じて、クレアは激しく首を振る。だが彼は、それを擦りつけるのを止めてくれなかった。
「あぁ……っ、こするの、やめて……っ」
クレアの身体の芯に、再び耐えがたい疼きが生じる。クレアはその快感をやり過ごそうと、大きな呼吸を懸命に繰り返した。
そのとき、ファリドが大きく息を吐いた。
「もう限界だ」
クレアの足首がつかまれ、軽々と持ち上げられる。あられもない体勢を取らされ、クレアの頬が羞恥に火照った。
「見ないでぇ……っ!」
「ああ。のんきに見ている余裕などない。今から俺は、お前を犯すんだからな」
ファリドの低い声が、クレアの耳朶を震わせた。
「おか……す……?」
「そうだ。俺の事は嫌いになっていい。……全部、俺がお前を側に置きたいからすることだ」
ファリドの美しい顔が、一瞬苦しげにゆがむ。
だが彼はすぐに厳しく眉を寄せ、下腹部をクレアの秘部に押し付けてきた。
散々愛撫されて濡れそぼった蜜口に、反り返った肉杭の先端が押し付けられる。
「挿れるぞ」
その言葉と共に、指とは比べものにならない圧倒的な質量が、クレアの身体の中に押し入ってきた。
身体を開かれる違和感に圧倒され、クレアは思わず枕の端を握りしめる。
「っ……あ……いや、いれないで……こんなの、無理……」
切れ切れの哀願も、ファリドには届かなかったようだ。
クレアの痩せた身体が、昂ぶる剛直に無理矢理開かれる。あまりの恐ろしさに、クレアはのけぞって訴えた。
「ひぃ……っ、いや……こわい……こわい……っ」
しゃくり上げるクレアに、ファリドが優しい声で囁く。
「枕ではなく、俺の首筋につかまれ」
混乱していたクレアは、素直に彼の首筋にしがみつく。言われたとおりにすると、少し楽だった。身体の震えは止まらないが、肌と肌がぴったり重なっていると安心する。
「ファリド……さま……」
頼りない口調で彼女は、懐かしい人の名を呼んだ。
こんなことになって、取り返しが付かないかもしれない。服まで真っ二つにされて……どうしていいのか分からない。このままでは彼が本当に『犯罪者』になってしまう。
ファリドが少し半身を離し、ボロボロと涙を流すクレアの顔を覗き込んだ。
その顔は柔らかく、優しくて、心底幸せそうな男に見える。これから不幸になる人の顔には、到底思えない。
「いけま……せん……」
クレアの声はかすれて震えていた。
「いいんだ。愛してる。お前がいなければ、俺は生涯、ただの泥人形だ」
紫色の透き通るような目が、クレアの顔を映した。
……久しぶりに、自分の顔を見たような気がした。明るい灰金色の髪に、青色の丸い目。そうだ、自分は確かに、こんな髪と目の色をしていて、こんな顔立ちだった。クレアは食い入るように、ファリドの瞳に映る自分の顔を見つめた。
瞳の中の自分の顔が、不意にふわりと笑う。
――私……笑って……る……。
自覚した瞬間、クレアの目から、ぼろぼろと大粒の涙があふれ出す。その涙は、今までの苦しさや寂しさや諦めを全部押し流すような、不思議な涙だった。
「私も……お慕いして……います」
小さな声で告げたクレアに、ファリドが晴れ晴れと笑いかけた。最高の言葉を聞いた、といわんばかりの笑みだった。
「いや、強引に抱く男が、悠長に服など脱がすはずはないな」
ファリドが懐から短刀を取り出し、メイドのお仕着せの襟元につきつける。なにを、と口に出す間もなく、クレアのボロボロの服が縦に裂かれた。
突如むき出しになった肌を恥じらい、クレアは身をよじる。下着姿を人に見られたことなど一度もないのに……。だが彼の指は器用によれた下着を引っ張り、身体に傷を付けぬようぷつりと生地を裂く。
「なかなかいい眺めだな。僕から逃げられなくなる感想はどうだ」
服の残骸に両袖を通しただけのあられもない姿で、クレアは羞恥と恐怖にぎゅっと唇を噛んだ。
――殿下、どうか罪など犯さないで。
だがその祈りは届かなかった。
クレアの身体から下着の残骸を引きはがしたファリドが、己の衣装をかなぐり捨てて、痩せた身体にのし掛かる。
「い、いや、だめ……だめぇ……ッ」
すくみ上がって動けなかったクレアは、組み敷かれて我に返り、必死にもがいた。
だが、放してはもらえなかった。
ファリドはクレアの右手首を押さえつけ、もう片方の手で、閉じようとする足を、強引に開かせる。
「あ……あ……だめ……」
一糸まとわぬ姿で秘部を暴かれ、クレアの身体がすくみ上がる。
人目にさらしたことのなかったその部分に、冷たい夜の風がひやりと触れた。
「っ、だめ、見ないで……っ!」
だが、足を閉じることは出来なかった。
ファリドの身体が、両足の間に割り込み、更に大きく足を開かせる。
このままでは王子である彼が、本当に罪を犯してしまう。
怯えたクレアは、自由な片手で必死にファリドの肩を押しのけようとした。
だが、記憶のものより遙かにたくましさを増した身体には、非力な彼女の抵抗など何の意味もなさなかった。
「どこに逃げるんだ。こんな裸同然の格好で……いや、裸よりずっといやらしいな。君は自分が今、どんな姿で男を誘っているのか分からないのか」
ファリドの声に愉悦がにじむ。
同時に彼の片手が、味わうように内股の肌をなでた。
たださらりと触れられただけなのに、身体中に衝撃が走る。
「あぁ……っ!」
思わず声を漏らしたクレアの反応に満足したのか、ファリドが小さく喉を鳴らした。
ファリドの指先が、濡れて震える裂け目をすうっと撫でた。
「い、っ」
あり得ない。こんな場所に触れられるなんて。クレアの腰がビクンと跳ね上がる。
彼の指は離れず、閉じ合わされた陰唇を左右に開かせ、より深い部分をもう一度撫でた。
「いやぁ!」
クレアは指先から逃れようと必死に身体をよじった。だがファリドは容赦せず、敏感な反応を見せるその箇所を執拗に弄び続けた。
「お前のここに、俺の指を入れたい」
あっさりと囁かれた言葉に、クレアは愕然となって目を見開いた。
「え、な……っ……ああぁ……っ!」
長い指が、小さくすぼまった蜜孔にズブリと沈み込む。
異物を受け入れたことのなかった襞と襞のあわいが、与えられた衝撃にわななく。
「中が狭いな、これから少し辛いかもしれない」
いいながら、彼が更に指を進めた。じゅぷりという嫌らしい水音を立てて、濡れそぼったクレアの中がゆっくりとかき回された。
「あ……あ……なに……を……」
「広げているんだ、こんな風に」
蜜洞を弄ぶ指が、中でクイ、と軽く曲げられた。音を立てて粘膜が開かれ、身体の奥から熱い雫があふれ出す。
「ひぃ、っ!」
衝撃と共に、クレアの目尻から一粒の涙がこぼれ落ちる。
――きもち……いい……。
クレアは、重なり合う肌の熱に理性を失いかけている事を実感し、歯を食いしばった。
――私の馬鹿。だめよ、だめ、ファリド様にこんな事をさせてはだめ、ファリド様を汚しては……駄目なのに……。
涙が次々にあふれ出し、止まらなくなった。
「痛いのか?」
クレアの涙の意味を誤解したのか、ファリドが秘裂を弄ぶ手を止める。
「いいえ、痛くは……」
素直に答えると、ファリドは目を細めた。
「なら、いい」
泥濘の外に出ている親指が、きゅっと茂みの中に立ち上がる花芽を押す。
「あ、だめ……そんなところに、さわっては……」
途切れ途切れの言葉が、再び接吻で塞がれる。
厚い舌先がクレアの唇をこじ開け、口内に侵入してきた。
「ん……っ!」
クレアは、驚きのあまり思わずうめくような声を漏らす。
その声に煽られたように、舌の動きはますます激しくなった。
「ん、ふぅ……っ!」
そのとき、蜜襞を弄んでいた指が、一度、中から抜けた。だがその指は本数を増やし、再びクレアの隘路をこじ開けようと忍び込んできた。
身体の疼きが抑えられなくなる。
クレアは唇を噛み、ファリドの裸の背中に片手を回す。
逃げないと悟ったのか、右手首を押さえつけていた彼の手が緩む。クレアは自由になった両腕で、彼の身体に縋り付いた。
「お願いです、指を、抜いて」
懇願しながらも、吐き出す息は熱を帯びてゆく。
こうやってファリドにしがみついていないと、自分が自分でなくなりそうだ。
「嫌だ、止めない」
ファリドが、うわごとのような声音で呟いた。
「お前の中は嫌がっていない。こんなに俺の指を締め上げて、もっと触ってくれって、可愛らしく強請ってる」
「そんな……ちがう、ちが……んっ……」
逆らう言葉は、再び唇で塞がれた。
淫らな姿勢で大きく足を開かれ、蜜音と共に秘部をもてあそばれながら、クレアははしたない声だけはあげまい、と唇を噛み続ける。
いつしかクレアの脳裏からは、理性が失われはじめていた。
ファリドにこんな愚行を止めさせねばいけないはずだ。
なのに、なぜ中を責め立てる指を恥ずかしい場所にくわえ込んで、何度も口づけを交わしているのだろう。
「駄目……ファリドさま……」
ようやくその言葉を押し出すと、ファリドの指が離れた。ぬるい蜜が、名残を惜しむように幾筋もしたたり落ちる。
「あ……」
ようやくこの甘くて苦しい責めから解放されたのだ。ほっとしたクレアは手の甲で涙を拭う。
だがその瞬間、いきなり両手で腰を捕まれた。
「残念だが、まだ終わっていない。これからだ、クレア」
ファリドの形のいい唇が弓形に釣り上げられる。
クレアの両足を再び大きく開かせた彼は、ズボンを下ろし、そこから立ち上がる巨大なものを彼女の秘裂に押し付けてきた。
「い、いやあっ!」
裂け目にぴったりと、反り返った肉杭があてがわれる。彼の身体はどうなっているのだろう。戸惑って震えるクレアの蜜裂を、幾度もその肉杭の表面が行き来する。
ぐちゅぐちゅと音がするたび、下腹が焼かれたように熱くなる。
「……っ、あ……いや、だめっ、これ、だめ……っ」
本能的に恐怖を感じて、クレアは激しく首を振る。だが彼は、それを擦りつけるのを止めてくれなかった。
「あぁ……っ、こするの、やめて……っ」
クレアの身体の芯に、再び耐えがたい疼きが生じる。クレアはその快感をやり過ごそうと、大きな呼吸を懸命に繰り返した。
そのとき、ファリドが大きく息を吐いた。
「もう限界だ」
クレアの足首がつかまれ、軽々と持ち上げられる。あられもない体勢を取らされ、クレアの頬が羞恥に火照った。
「見ないでぇ……っ!」
「ああ。のんきに見ている余裕などない。今から俺は、お前を犯すんだからな」
ファリドの低い声が、クレアの耳朶を震わせた。
「おか……す……?」
「そうだ。俺の事は嫌いになっていい。……全部、俺がお前を側に置きたいからすることだ」
ファリドの美しい顔が、一瞬苦しげにゆがむ。
だが彼はすぐに厳しく眉を寄せ、下腹部をクレアの秘部に押し付けてきた。
散々愛撫されて濡れそぼった蜜口に、反り返った肉杭の先端が押し付けられる。
「挿れるぞ」
その言葉と共に、指とは比べものにならない圧倒的な質量が、クレアの身体の中に押し入ってきた。
身体を開かれる違和感に圧倒され、クレアは思わず枕の端を握りしめる。
「っ……あ……いや、いれないで……こんなの、無理……」
切れ切れの哀願も、ファリドには届かなかったようだ。
クレアの痩せた身体が、昂ぶる剛直に無理矢理開かれる。あまりの恐ろしさに、クレアはのけぞって訴えた。
「ひぃ……っ、いや……こわい……こわい……っ」
しゃくり上げるクレアに、ファリドが優しい声で囁く。
「枕ではなく、俺の首筋につかまれ」
混乱していたクレアは、素直に彼の首筋にしがみつく。言われたとおりにすると、少し楽だった。身体の震えは止まらないが、肌と肌がぴったり重なっていると安心する。
「ファリド……さま……」
頼りない口調で彼女は、懐かしい人の名を呼んだ。
こんなことになって、取り返しが付かないかもしれない。服まで真っ二つにされて……どうしていいのか分からない。このままでは彼が本当に『犯罪者』になってしまう。
ファリドが少し半身を離し、ボロボロと涙を流すクレアの顔を覗き込んだ。
その顔は柔らかく、優しくて、心底幸せそうな男に見える。これから不幸になる人の顔には、到底思えない。
「いけま……せん……」
クレアの声はかすれて震えていた。
「いいんだ。愛してる。お前がいなければ、俺は生涯、ただの泥人形だ」
紫色の透き通るような目が、クレアの顔を映した。
……久しぶりに、自分の顔を見たような気がした。明るい灰金色の髪に、青色の丸い目。そうだ、自分は確かに、こんな髪と目の色をしていて、こんな顔立ちだった。クレアは食い入るように、ファリドの瞳に映る自分の顔を見つめた。
瞳の中の自分の顔が、不意にふわりと笑う。
――私……笑って……る……。
自覚した瞬間、クレアの目から、ぼろぼろと大粒の涙があふれ出す。その涙は、今までの苦しさや寂しさや諦めを全部押し流すような、不思議な涙だった。
「私も……お慕いして……います」
小さな声で告げたクレアに、ファリドが晴れ晴れと笑いかけた。最高の言葉を聞いた、といわんばかりの笑みだった。
22
お気に入りに追加
1,049
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
【R18】婚約破棄に失敗したら王子が夜這いにやってきました
ミチル
恋愛
婚約者である第一王子ルイスとの婚約破棄に晴れて失敗してしまったリリー。しばらく王宮で過ごすことになり夜眠っているリリーは、ふと違和感を覚えた。(なにかしら……何かふわふわしてて気持ちいい……) 次第に浮上する意識に、ベッドの中に誰かがいることに気づいて叫ぼうとしたけれど、口を塞がれてしまった。
リリーのベッドに忍び込んでいたのは婚約破棄しそこなったばかりのルイスだった。そしてルイスはとんでもないこと言い出す。『夜這いに来ただけさ』
R15で連載している『婚約破棄の条件は王子付きの騎士で側から離してもらえません』の【R18】番外になります。3~5話くらいで簡潔予定です。
(完結)バツ2旦那様が離婚された理由は「絶倫だから」だそうです。なお、私は「不感症だから」です。
七辻ゆゆ
恋愛
ある意味とても相性がよい旦那様と再婚したら、なんだか妙に愛されています。前の奥様たちは、いったいどうしてこの方と離婚したのでしょうか?
※仲良しが多いのでR18にしましたが、そこまで過激な表現はないかもしれません。
伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】
ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。
「……っ!!?」
気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる