結果的には愛してる

栢野すばる

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「うん……?」
 間抜けな性奴隷が連行されてくるのを待っていたオディロンは、ふと異変に気づいて己の手を透かし見た。
 ――指先が透けておるな。これも魔法の影響なのか。もはや何が起きようとも諦めるしかないが……あの間抜けに説明させるか。
 溜息を吐いてオディロンは透き通る指先に触れた。
 実体がない。ぱっと見は分からないが、触れてみると身体の先端が陽炎のようにすけ始めているのが分かる。
 一体これは何なのだろう、と思った瞬間、部屋の扉が叩かれた。
「あ、あの、陛下、魔導師レイノルドを連行いたしました」
「其奴だけ置いてゆけ。他のものは部屋に入らずに下がっておれ」
「ですが」
 こんな半透明になりかけている姿を見せる訳にはいかないのだ。
「命令だ」
 扉はすぐに開き、ぐずぐずと泣いている美しい青年が部屋の中に押し込まれた。
「うっ……うっ、陛下、申し訳……」
 オディロンは床に丸くなってメソメソしている青年の背中に、とんと小さな脚を乗せた。
「なぜ私はこのように体が透け始めておるのだ? これもお前が仕損じた魔法の影響なのか?」
 背中を踏みつけられたまま、レイノルドが苦しそうに顔を上げた。同時に、ぎょっとしたように美しい目を見開いた。
「あ、あ……本当に……崩壊が始まって……」
「崩壊?」
 オディロンは眉根を寄せて、マヌケな美青年を踏みつける足に力を込めた。
「どどど、どうしよう、本当に二十四時間以内にアレをしないと……あああ文献通りなんだ……どうしようどうしよう、僕どうし」
 どうやら、間抜けは何かを知っているらしかった。オディロンは背中から足をおろし、脇腹を蹴り上げてごろりとレイノルドの身体を反転させた。
「何を知っておる、申せ」
「い、いやあの、でも、あの……無理……」
「申せ。手間を掛けさすな」
 真っ青になっているレイノルドの顎に、オディロンは小さなつま先を引っ掛けた。
 レイノルドは涙をぼろぼろこぼしながら、小さな声で答える。
「ま、まだ、女体化禁呪が完成してな……。……を……ないと……陛下は……」
「聞こえん!」
「申し訳ありませんっ! ぼ、僕の、術者の精を胎内に取り込まないと、女体になった陛下のお体は、あと数時間ほどで崩れて消滅するんですぅぅ!」
 ――今この阿呆は何と申した……?
 眉根を寄せるオディロンの前で、這いつくばったレイノルドが「ごめんなさいいぃぃぃ」と絶叫した。
「精を取り込む?」
「うっ、うっ、申し訳、申し訳……」
「お前とまぐわいをせねば、私は死ぬということか」
 腰を抜かしたレイノルドが、泣きながらこくこくと頷いた。
 ――なるほど、品のない術だな……
 オディロンは顎をそびやかし、床で膝を抱えて泣いているレイノルドを見下ろした。何にせよ、身体が消え始めているのは真実なのだ。この危機的な状態から脱することが出来るのであれば、どんなことでもしてみせる。
「では脱げ」
「え、あ、あの、陛下……?」
「脱げと申しておる」
 言いながらオディロンは、侍女たちが着せてくれた女物の衣装をきっぱりと脱ぎ捨てた。呆然としているレイノルドの前で、絹の繊細な下着に指をかけ、それもするりと己の身体から剥ぎ取った。
 もとより肉体の処女性になど何の興味もない。何事も挑戦である。それに夜なので異性を……男を貪りたいという気持ちも正直ある。性交なしの人生など送るつもりはない。
「へ、陛下……お許し……を……」
 蒼白なレイノルドを全裸で見下ろしたまま、オディロンは薄い笑いを浮かべて命じた。
「手間を掛けさせるな……その服をいちいち切り裂いてやらねば、女も抱けぬのか? 脱げ」
 オディロンはレイノルドの襟首を掴んで引きずり起こすと、寝台に彼の痩せた身体を突き飛ばした。
「お待ちくださ……お待ち下さい!」
「待たぬわ」
 オディロンは寝台に転がったレイノルドにのしかかり、無理矢理彼の着込んでいるローブを脱がせた。痩せてはいるものの、それなりに引き締まった美しい若い身体があらわになる。
 ――ふん、なかなかきれいな肌をしておるな。
 軽い満足を覚え、今度はオディロンは、レイノルドのズボンに手を掛けた。
「や、やめっ!」
「誰のせいでこのようなことになったと思っておる」
「あ……あ……で、でも……男同士でこのような……っ……」
 レイノルドの下半身をむき出しにしながら、オディロンは彼の秀麗な顔に唇を寄せ、頬を伝う涙をぺろりと舐め取った。
「……なあに、生まれは男とはいえ、今はおなごよ」
 赤くなった耳に歯を立てた瞬間、レイノルドのいかにも初心な身体がぴくりと震えた。
 反応の愛らしさに、オディロンの中の何かが満足の声を上げる。
 ――まさか、こやつはおなごを知らぬのか? だとしたら楽しいな……
 己の見事に盛り上がった大きな乳房をレイノルドの薄い胸板に押し付け、オディロンは痩せた腰の上にふっくらした尻を乗せた。
 だが、肝心のお道具はまだしなびたままだ。
 ――手で大きくして、その後口でかわいがってやろうか。搾り取るのは最後でよかろう。
 自分が今まで、さんざんに美姫たちに味わわせてもらった絶技を、この男の体で再現してみよう。
 そこまで考えて、オディロンはふと笑った。
 男の裸体に反応し、己の体が疼いていたからだ。
 ――ふむ、不思議なものよ。まこと己が、骨の髄までおなごになったように思えるわ……
 細い指をくったりした肉茎に添えた瞬間、レイノルドの身体がびくんと跳ね上がった。
「あ、ああっ! 陛下……ッ!」
 オディロンはゆっくりと身体をずらし、膝の上に尻を移動させて、掌に収めた茎をゆっくりと扱いた。
「や、やめ……」
「止めるわけなかろう。思い切り勃てて、私の中に出すがいい。私とてまだ死にたくはないのだ」
 その言葉に、レイノルドが目を見開く。
 先程までは、あまりの事態に泣いて喚いて錯乱していたが、己の魔法の失敗で国王に大変な被害を与えてしまったことをようやく思い出したのだろう。
「……っ、わかり……ました……」
 ふるふると震えながらレイノルドが健気に返事をする。オディロンは喉を鳴らして、刺激にほんのりと膨らみ始めた茎に唇を寄せた。
 浮き上がるレイノルドの両脚を身体で押さえ込み、みるみる硬度を増すそれに、舌先をそっと這わせる。
 血管の浮いた表面を焦らすように舐め、音を立ててくびれに吸い付く。先端にはあえて触れずにすするような音を立てると、耐えかねたようにレイノルドが身体を揺らした。
「あ、へ、陛下……駄目……」
 すでに掌に余るほどに起ち上がったそれは、先端に薄い雫をにじませている。
 ――ふふ、若いのぉ。
 粘着くような熱を放ち始めた茎に再びしゃぶりつき、オディロンは根本からくびれまでを唇で愛撫した。指で愛しげに握りしめてやるたびに、茎はオディロンの小さな手のひらの中で、ひくひくと脈を打って快楽を訴えた。
「童貞……動くなよ」
 そう言ってオディロンは、ゆっくりと腰を上げた。横たわったまま美しい顔を歪めるレイノルドが、ぎゅっと唇を噛むのが見えた。
 ――嫌がっていて、可愛らしいことだ。本気で泣かせてやろう。
 舌なめずりせんばかりの気持ちで、オディロンは屹立の先端に己の濡れ始めた秘部をあてがう。
「……っ……あ……」
 思わずといった体で、レイノルドがかすかな声を漏らす。その声がまた、たまらない快感をオディロンの下腹に湧き上がらせるのだった。
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