運命の番

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長い別れ

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レイドが帰国する。
次に会えるのは、アーシェンがグラーツに嫁ぐ1年半以上先だ。

長い期間会えないことに番がほろほろと涙を流した。その姿にいたたまらず、両手で頬を撫で、涙を拭い、何度も口づけを落とす。

「アーシェン、沢山手紙を書く」
拭っても拭っても止まらない涙に、狼は胸が痛む。
自分にこんなにも離れがたい、愛しい存在ができるとは。

「アーシェンが安心して快適に過ごせるように、グラーツ城内を整備する。完全な体制にして、我が愛しい番を迎えたい。長い別れになるが、アーシェン、愛している。来年には必ず、私の元に嫁いで来てほしい」

番の少女は泣きながら頷くと、レイドにキスをした。

「私もレイド様が大好き。あ、愛しています・・・いい伴侶になれるように、頑張りますので、どうかお嫁さんにしてください」

2人はしばし抱き合った後、お元気でと。名残惜しむように離れた。レイドは一度振り返り手をふり、アーシェンはレイドの姿が見えなくなるまで、その方角を眺め立ち尽くしていた。

イシス王家の家族一同は、邪魔をしないように王宮内に留まり、様子を窺っていた。

「いい男じゃないか」
「噂よりも真っ当な男性ですよ。番に出会ってから変わったのかもしれませんが。どこかの竜人男性のように」
セトとウルシュは聞こえよがしに言う。

セーカはノア女王と仲むつまじく腕を組んでいる。
レイドの見送りの際にノアに「2人きりにしてあげましょうね」と言われ、普段は甘えてこない愛妻にすり寄られてつい了承した。
番を前にすると、竜人も獣人も判断が鈍る。

竜人からは幸せオーラが出ており、ウルシュが何か言っていたが聞こえていない。
ノアは娘と婚約者の別れに水を差されないように、夫を捕まえていただけだった。

「一夫一妻制にしたんだろ?文官の女性登用二割を原則にしたとか。あの歴代皇帝しょーもない男連中が威張っていた国にしては、ようやくか、と言ったところだが、言い出したのが女帝じゃなく、あの皇太子らしいじゃないか」

「反対意見もなく法案が通ったところから、帝国の上層部に良い人材が揃っていると推測できますね」

「少し前までは、前皇帝と前皇子5人が揃って阿呆、上流を牛耳る連中が、汚職まみれで真っ黒だった国だ。下流に行くにつれ濁るからな。上が腐っていれば、下だってロクなやつしか残らない。今の皇帝一家は、辺境地にいた優秀な人材を、身分問わず引き抜き、短期間で人事を総入れ換えしたそうだな」

「その反動で、一家全員が暗殺者に相当な回数、狙われたそうです。今では依頼をした腐敗貴族ごと根絶やしにし、落ち着いたようで何よりです」

「動乱の時代が終わって、何より何より。グラーツもだが、リュウ国も安定してきたしな。どちらの隣国にも旅行がしやすくなる」

セトは2国の地図を広げ、どういう道筋でグラーツまで行くか、ついでにリュウにも寄り道するか、と考える。
やはり地図を見るのが好きな、アレンとウルシュも加わり、旅程を組む話で盛り上がっていた。

イングリッドとノアは、まだ佇んでいるアーシェンを王宮に連れ戻し、優しく励まながら部屋まで送った。

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