運命の番

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性教育

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アーシェンは眠り続けており夕食の席には来なかった。泣きながら嫌がる少女に対して、あんなことをしてしまったと今になり反省する。
後で様子を見に行かせてもらおう。

何日か食事を共にしているが、イシス王家の食卓は軍事国家グラーツの重々しい報告の飛び交う食卓とは正反対だった。

学校や町の平和な話題ばかりで、笑い声に満ち、気楽に食事ができる。今は双子の父竜もいないので緊張感もない。食後の果物とワインで国王達の冗談めいた話を聞き寛いでいたら、ノア女王がサラッと言った。

「レイド様、イシスでは結婚する人にのみ、成人の18才以降に閨教育があるの。アーシェンはまだ13才だし、子供もまだ産めないから、婚前教訓はしなくても大丈夫よ」

ぶっ

ウルシュ国王がワインを噴き出した。
アレン王子は「ああ僕、勉強の続きをしないと」と不自然な言い訳をして退席していった。

「・・・はい。子作りは結婚してから、行いたいと思います」

ぐほっぐほっ

食卓を自ら拭いていたウルシュ国王がまたむせた。
マズい。この返答は間違っていたか。
ノア女王にどこまでバレているのか。

「この国は野生動物も身近にいないでしょ?子供がどうやって生まれるか、成人前は動物生態学の本を読むしかないの」

ウルシュ国王は「そうだ、食後のピアノ演奏をしよう」と優雅な足どりで音楽堂へ去って行った。

「アレンは動物に詳しいけど、アーシェンは疎いの。去年、あなたとキスをして、子供ができたかもしれないと喜んでいたから、初潮が来ないと子供ができないと教えたらガッカリしていたわ」

キスで子供?
イシスの教育水準は高いはずだが、単体繁殖のせいで性教育は重要視されていないのか?

ん?ちょっと待て、アーシェンはまだ初潮が来ていないと言ったか?そうすると、俺は初潮の来ていない子供に欲情して、あんなことをしていたのか?

今までの行為、特に今日やらかしたことを悶々と思い起こしているレイドを見て、ノアは私もセーカに会うまで全く知らなかったの。とどこか楽しそうに伝える。

「月のモノが来たら、肌を合わせてキスをすると子供ができると思っているから。それ以外のあなたの行為は誤解されるはずよ。番だから気持ちを抑えるのは難しいと思うけど、結婚まで嫌われないように慎重にね」

話を総括すると、俺はアーシェンに無理やり変態行為をする最低男だと嫌われた可能性が高い。
確かに今日のはやり過ぎた。あれはまずかった。

だが番がまだ成長途中の少女とはいえ、せめてもう少し知っててもらわないと困る。今後の変態行為を正当化するためにも。
発情期の狼は必死で考える。

「結婚前に母君から教わるのが自然ではないでしょうか?」

「そんな恥ずかしいこと娘に言えないわ。でも大丈夫よ。それらしき本がきっと書庫にあるはずだから、アレンに見つけてもらうわ」

そんなことを兄のアレン王子にやらせるな。
ノア女王は上品だがズレている。これはダメだ。

「私が見つけて、アーシェンに渡します。書庫の出入り許可をください」


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