運命の番

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黒焦げの竜

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学校から帰って来たアーシェンは神殿に呼ばれた。黒焦げになった父竜と、レイドの切り傷を見て何が起こったのか説明を受けた。

「お父様が?レイド様を殺そうとした?」

にわかには信じられない。
竜人の父も番の母と相思相愛だから最初は反対しても、きっと認めてくれると信じていたのだ。

「ええ。頭にきて、雷を落としちゃったわ」

正真正銘、本物の雷だ。
竜人は強いので雷に打たれた位では死なないが、鱗が焦げたり、剥がれたりしている。
元々黒竜なので焦げた部分がはっきりしないが、痛そうに丸まっている。

セーカは雷の衝撃で竜になってしまい、そのまま怒ったノアに神殿に封印された。
竜人も獣人と同じく、鬼気迫った状況に陥ると竜化獣化することがわかった。

「イシス国内では殺生は禁止。毒も浄化されちゃうから、バレないようにレイド殿下を結界の外に連れ出したのよ」

毒は浄化されたが、切り傷が完全に治っていない。
セーカが自分の硬い鱗で作った暗殺用の特別ナイフだった。

「お守りを持っててくれてよかったわ。あれは危険を予知して知らせてくれるペンダントなの」

服の下に身に付けるのはセーカに見えないようにするためだった。何かしでかしそうだったが、まさか娘の愛する男性を消そうとするとは思いもよらなかった。

レイドもまさか、アーシェンの父に殺されかけるとは、考えもしなかった。

アーシェンはかなり動揺していたが、頭を深く下げて謝罪した。

「レイド様、謝って済むことではありませんが、父が大変なことをしてしまいました。申し訳ございませんでした」
「アーシェンは何も悪くない。きっと私の評判が悪過ぎて心配で嫁がせたくなかったんだ。考えたんだ。もし自分が父親だったら、私のような男に娘をやりたくないと、自分でもそう思う」


はっ!
わかっているなら、二度とアーシェンに近づくな!
国へ帰れ野獣皇太子!


黒焦げの竜は、ガサガサの声で絞り出すように悪態をついた。雷で喉もやられたらしい。


僕だって、ノアが18才になるまで我慢したんだ。
待っている間、狂わないように必死で仕事をして、ごまかしていたんだ。
イシスに来たらいじめ抜いてやろうと思ったのに、何でアーシェンが狼の国に行くんだ!
それも15才で結婚なんて異常だ!
それも大嫌いな狼なんかと。好色能筋狼なんかと。

攻撃をいちいち避けやがって、田舎狼なら鈍臭く、さっさと殺られればいいものを。狼のくせに、狼のくせに。



半分は狼獣人への悪口である。
狼に個人的な恨みでもあるのだろうか。

娘の結婚にゴネて、大きな口を開けて子供のようなことを叫ぶ竜の姿は、先ほどレイドに襲いかかった怜悧冷徹な殺し屋と到底、同一人物とは思えない。

アーシェンは丸まって拗ねてしまった父竜の元に行き、しばらく父と2人で話しがしたいと言った。


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