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バイトさん、いらっしゃる?〜面接は大変かも?

〜ショートコーナー〜 松下くん、大いにスベる。 後編〜

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 此処は何処だ!

 『ん?ここは「秘境」だ。東北の山間部、一応個人の所有地なので「許可」は貰っている。』


 『個人の所有地って、誰の⁉︎
あの「おじさん」ですか?』

 『其れをお前が知る必要はこの先無い。ただ此処で一週間生き延びてみろ!お前の人生変わるかもよ?』

 『出来るかー!』

 俺は目の前の少女を怒鳴り付けた、いや見た目だけ少女の「暴力女」に苦情を言った。

 『そうか、ならいい。』

 『へ?』

 『本人が本気で嫌なら無理強いするなと言われている。悪かったな、東京まで送るぞ。それで「おしまい」だ。』


 何だよ!それ?

 何かの冗談だったのか。

 まぁこんな所に連れて来て驚いた俺が気持ちを入れ替えると思ったのか?

 とにかく、周りは密林!日本だとしても「秘境」と呼ばれる様な所に違いない。





 俺はある番組の凸撃取材で流行りの「猫カフェ」で体を張った「鉄板ネタ」を披露するも、大スベリした。

 後日、自主的にリベンジしに行くと、「非常識だ!」と関係者らしい幼女にフルボッコにされ、よく分からないウチにこんな山奥に拉致られた!


 気がつくと既にもう日が暮れ始めていた。

 『今、ヘリを呼ぶ。まだ日が有るから何とかなるだろう。』

 『ちょ、ちょっと待ってくれ!そんなにあっさりやめちまうのかい? 此処まで連れて来て?』

 『ん?ああ、何かマズイか?』

 さすがの俺でもこの連中が普通じゃない事は理解出来た。

 だから、この状況を諦め受け入れて、出来れば上手く利用していけないかと考えていたのに⁉︎

 上手くいけば、俺は「勝ち組」になれるかも知れない!

 敢えて「嫌々ヤラされている」体でいたのが裏目に出た。

 上手く誤魔化さなければ!

 『あ、でも折角の機会なので一泊くらいはしていこうかな~って?』


 いや、さすがに無理が有るか?

 『ん、そうか?まぁお前も何か「思い出」の一つ位作って行っても良いだろう。』

 あれ?チョロいな。

 『この山道の奥に、関係者が良く使う「山小屋」が有る。そこで一泊出来るから案内してやろう。行くぞ!』

 
 三十分ほど山道を歩かされた先に割としっかりした「ログハウス」が有った!

 ボロい掘立て小屋を想像していたので驚いたのに、しかも何と自家発電機で「電気」が使える!

 『一応、近くの発電所から「電力」は供給されているが、よく落雷などで送電が止まってしまうそうだ。なので発電機は最後の手段だな!
 どれ、「冷蔵庫」の中身を確認した方が良いぞ、前の使用者の「置き土産」が有るなら感謝だな。』

 何だ、何だ?割と余裕あるかもよ?この試練って!恐らくこのロリババァがサポートに付くはずだし!

 『あ、あの~灯火さん、俺、よく考えてみたんですが……この挑戦やってみようと思います、いやヤラせて下さい!』

 『何だ、そうか!お前中々見所有るじゃないか!』


 そして、俺は後悔する。

 地獄とは割と身近に有るのだと。


 冷蔵庫には、味噌や醤油、マヨネーズやチューブのワサビや辛子、調味料などが有った。

 『直ぐそこに湧水が有るから、ソコの空のペットボトルに汲んで冷蔵庫で保存しておけば、夜中暗い「外」に出なくて済むぞ。ソレ急げ!』

 夜は夜行性の動物に遭遇するかもと、用心の為らしい。

 『ほれ、お前は「寝袋」を使えば良い。私は「段ボールと新聞紙」に包まって寝よう、明日は日の出と同時に食材探しだからな!』


 ん?

 『ちょっと、まっ下さいよ!仮にも男の俺が「寝袋」で灯火さんが「段ボール」って、逆でしょう、普通?』

 『ん?そうか? 偶に任務中に「野宿」するが、段ボールとか良く使うから慣れてる方を選んだだけだが。』

 『女性に気配り出来ない男じゃ有りませんよ!俺は!』

 『アホ、気配り出来んから、「今」ココにいるのを忘れたか!この芸人崩れが!そもそもお前を「フルボッコ」にした奴をよく「女扱い」出来るな?』

 『あ!そうですね、 そうだった、…スンマセン、今なら分かります。 あのバイトのお嬢さんは「男性恐怖症」とかになってしまわれたのでしょうか?』

 一応、下手に出る。
 ここで揉めたら命取りかもしれないからだ!

 『さぁな?単に「免疫」が無かったんだろ?私にはよくわからん? ただ、帰ったら謝るんだな、 
ほら、もう面倒いから寝袋はお前が使え。おやすみ。』


 一応、俺「男」なんだけど。

隣りに寝て、「襲われる」とか考えないのか?…まぁ、不可能だけどな。

 寝顔、何げに、「めっちゃ美少女」なんですけど、灯火さん!
 いや、昼間の言動とかで寝てる時ヨダレとかイビキとか凄そうだとか想像していたのに?

 寝息がスゥスゥ静かでヤバい!
 昼間の暴力幼女とは思えないくらいに可愛い⁉︎
 ギャップ萌えか?
 俺はロリコンじゃないのに!

 
 まぁ、普通なら緊張して眠れないとかのパターンなんだと思う。

 しかし、山道での徒歩が思った以上に疲れていたらしい、または、寝袋が快眠を誘ったか? 
 熟睡してしまった。


 朝、目が覚めると隣りに彼女は居なかった。

 
 まさか!

 置き去りにされた⁉︎

 そうか、だから悟られない様に優しい対応して油断させていたのか!

 チキショウー!

 寝顔に騙されて素直に寝てしまった自分が馬鹿だった!

 寝込みに襲えば、ワンチャン有ったかも  …無いな。

 


 いや、まだそうとはわからない。

 『お、起きたか?顔洗ってこい、湧水で洗うと冷たくて気持ちいいぞ!』

 …やべ、マジ天使かも。

 ドアを開け、山小屋に入って来た彼女は朝日に照らされ、神々しくも美しかった。

 とても俺をド突き回した狂犬幼女とは思えない。
 いや今一瞬だけ、大人の姿の彼女が見えた様な…?

 『あ、おはようございます。灯火さん、何方へ?』

 『ん、この少し下った先に沢が有ってな、沢伝いに降ると小川があるのさ。そこに昨晩の内に「仕掛け」て置いたのだ。』

 そう言う彼女の手にはピチピチ動くコンビニ袋が?

 『今日の「朝メシ」だ!』






 『ねぇ、お父さん?』

 『Zzzz…メイ、鼻噛んじゃダメ…久美、優斗が弟か妹が欲しいってっさ…zzzzz。』

 

 『舞ちゃん、お父さんって「天然」or「演技派」?』

 『さぁ?わからないよ。ゆたか君はどう思う?』

 『どっちでもいいかな?面白ければ。ソレはそうと、「あの芸人」はどうしたの?まさか「樹海」に埋めたの⁉︎  まぁ世の中の為にはそれもアリかも。』

 『まさか⁉︎
 多分「狗神さま」と「猫神さま」の御社だと思う。そんな時期だし。』

 『イヌガミさまとネコガミさま? 何々、その「ジぶ●臭」プンプンのワードは?』


 私、「北代 舞華」はウチの新しい「家族」の「ゆたか君」とリビングのソファで「寝落ち」している父の様子を観察している。

 以前に比べて体調を崩しやすい父がココで「寝落ち」するのは最近では「当たり前」に成り始めた。

 『僕、パパさんって、もっと「隙」が無い人だと思っていたから、こんな無防備なトコ、見せるなんて驚きかも?』

 『えっ、そう?大体こんな感じだよ。ウチのお父さんは。もっとも私たちが「知らない顔」も有るかもだけどね?』

 『ナニナニ?その「厨二設定」は?』

 「厨二」って、ゆたか君はそうゆうの知ってる人なの?意外かも?


 『こらこら、お父さんが起きちゃうデショ! 疲れてるみたいだから夕食まで寝かしてあげてね。』って、お母さんが様子を見に来た。

 『あ、ママさん!パパさんが寝言で「優くんに弟か妹を!」だって言ってた!』ってゆたか君、バラした⁉︎

 『もう~!じゃあ何か「滋養」に良いモノも用意しないと!
 あ!そうだわ!丁度良いから灯火ちゃんに「自然薯」頼んでおかなきゃ!』ぶれない母、素敵。

 嬉しいけどね、両親が仲良くしてるのは?でも年頃の娘が聞いてもすのよ?

 ゆたか!君もだ!

 ん?ゆたかの表情が暗い?
 てっきりドヤ顔でもしてるかと思ったのに?

 『どした?「男の娘」?親の恥ずかしい所を見せられた「娘」より難しい顔して?』

 『あのさ、舞華ちゃん?』
 
 『ナニナニ、おねいさんに相談事かい?』

 『もしかして、あの芸人もこの後「家族」にしちゃうのかな?』
 
 『無い!それだけは絶対無い‼︎  アレは多分「生贄」とか「見せしめ」のカテゴリーだよ。根性叩いて砕いて再構築しても、ウチのお父さんは許さないと思うよ。だからさー、ゆたか君は「合格」なんだよ。』

 『そっか?てっきり「来るもの拒まず」なのかと、僕みたいに?』

 『だ~か~ら!ゆたか君は「合格」なんだって!あの「マットマット」は「不合格」どころか「受験拒否」なんだよ!』

 例えが分かり辛いけど分かった気がする。何となく二人顔を合わせて「ヘヘヘッ!」と笑っていた。

 んー?起きてるけど、起きれない。寝たフリしているお父さんなのでした。

 (御二方、あの芸人で遊んでくれたら今年は「お役目」行かなくて済むかな?)

 なんて考えていたのはナイショ。
 


 


 清流で取れた川魚(ヤマメか鮎か、俺には分からん。)はマジ半端なく美味い‼︎ 

 『こんなに美味い魚、初めてっス!』また、醤油が合う!無敵だ!

 『何だ、大袈裟だぞ?もっとも今日取れたから明日も取れるとは限らない。もっと味わって食え、松戸。』

 小屋の前にコンクリートブロックで作った「竈門場」が有って、そこで川魚を焼いた。
 内臓などは取り除いた方が良いとかで彼女が下処理をしてくれた。コレも「手料理」と言えないだろうか?

 『この後は「食材探し」だ。自然薯とか山菜を探す、覚悟しておけ!』
 TVでタレントが農業とか無人島で生活する番組が時どき放送されるが、まさか俺達の様子を何処からか撮影しているとか?

 『灯火さんって、もしかして「声優」とか「ご当地アイドル」とかタレント業の人ですか?』

 『ん?友達がそう言うのやってるモンもいるが私は違うぞ。主に「ボディーガード」や「武術指導」が収入源だ。他にも「探偵助手」なんてのも有る。』

 『成る程、成る程。分かります、分かります。
 灯火さん、お強いですから!』

 不思議だ、会った時は乱暴な合法ロリッ子だったのに、こうやって打ち解けて話しているとロリも良いかもと思えてくる?

 いや、落ち着いて改めて見るとかなりの美少女、実年齢通り育っていたらと思うと美人なのは間違い無い!

 『聞いていいか?お前は何で芸人をやっているんだ?とても売れている様には思えないのだが?』
 
 彼女の表情が優しく、最初会った時の「殺気」の様なモノが無い。惚れてまうかも‼︎
 

 俺のことを馬鹿にしているとか、非難中傷する訳でも無くて、
 真剣に聞いている、心配してくれているのだ。

 『俺、学校に通ってた頃は勉強やスポーツもそこその成績で特別得意なモノが無かったんですよ。』

 何となく始めたバイト先で知り合った元相方、意気投合した俺達が「お笑い芸人」になったのはやはり、バイト先の先輩が「お笑い芸人」だったから。

 『今度、ライブに出るから友達連れて見に来てくれ!』

 小さなステージだけど、割と客が集まっていて、それなりに面白かった。もっともお客の半分以上が芸人の身内、友達の友達みたいな繋がりで集められた「サクラ」みたいなモンだ。

 それでも面白かった!

 その後、相方とコンビを組んで
俺達もライブに出演させてもらった。散々だったけど…。


 なにかなれる気がした。



 ソレから今まで前だけ見て突っ走ってきた。


 『まぁ、相方は途中辞めましたけどね。』
 
 バイト先で知り合った女の子、俺達がライブに出ると必ず見に来たので「お笑い好き」かと思っていたら、相方と付き合っていた。

 しかも、実は彼女はバイト先の居酒屋の店長の娘で、
 いつしか俺達もバイトリーダーから社員に成らないかと言って貰えるくらいの年月が経っていた。
 最初にライブに誘ってくれた先輩は御両親が高齢だからと実家に帰って農家を継ぐと辞めてしまった。
 つまりは「お笑い」では先が無いと自ら諦めたのだ。





 『俺、特に「家を継ぐ」とか無いんで何とか「お笑い芸人」で売れたかったんです!』



 ん、あれ?俺何でこんな事話しているんだ?

 今まで誰にも話した事無いのに?

 

 『なら、諦めず励めばいい。正直、私には「お笑い」はサッパリだが諦めず芸を磨けば壁も貫ける筈だ。私もそうだからな!』

 すげー笑顔で俺を見てる!

 『と、灯火さんも?一体何をですか?』思わず言って、後悔する。

 『十六夜家最終奥義の伝授だ!』
 
 色気無いなー。


   イザヨイケ サイシュウ オウギ?

 何ソレ?オイシーワケナイヨナ!


 『へ、へ~⁉︎  すんごいんですよね? 俺、格闘技とか武道とかは、さっぱり分からなくって。』


 やっぱり、普通じゃないお嬢さんなんだな?


 『まぁ、普通の「武道」とは別格だからな。
 いわゆる「古流武術」、戦国時代の「人を殺す技」なので学校の部活動やスポーツとは比べられない。』

 厨二設定では?
 言おうとして辞めた、彼女の表情が寂しそうに見えたから。


 『腹が膨れている内に食糧調達だ、小屋の中に山芋掘り専用のスコップが有るから、それ持って探しに行くぞー!目印は「ハート型の葉の蔓」だ!』

 『は、はい!』

 彼女も色々有るんだな、そんな事を考えている俺、

 やっぱり惚れちゃった?




 それからは、
 山中で食材探しの他に、「害獣」として捕獲、駆除がこの地域で認められている「猪」「鹿」を捕まえる事もした。

 部位によっては「高値」で売れるらしい?(漢方の材料とか?)
 意外なところで現金収入が有った。あと肉も美味い!

 ソレも彼女が居たからで、俺はただついて回るだけ。

 なのに、体調はすこぶる良い!

 代謝が良いのか?汗が凄い量出た、大小は量もだが匂いが凄かった?体内の汚いモノが追い出される感じだ?
 
 身体が軽い!痩せたか?

 あと、……温泉が有るんだ。

 小屋を使っている時だけ、源泉から湯を引いて、沢の水で良い感じの水温にして手作り露天風呂に溜める。



 幼女と混浴…ラノベかよっ!

 


 何も無かったよ。
 湯気で見えないとか、「見たら殺すぞ」とかは一応有ったけどさ、

 猿とか熊も混浴してたから。

 『モン吉とベア子さんだ、酒と蜂蜜を分けてくれるご近所さんだから挨拶しろ。』

 そして、一週間なんて直ぐに過ぎてしまった。

 『さぁ、次のステージだ!』
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