28 / 32
和解してる?変わる関係と将来の夢?
しおりを挟む
それは、
午前中のイベントステージの前の事。
舞斗くんから「あの人」が話しがしたいからと呼び出された。
『お話しって、なんですか?
えっと、「ノボリン」ご主人サマ
…でよろしかったですか?』
『のぼりん? …って、すげ~楽しんでたんだじゃね?「メイド喫茶」?』
『メイド喫茶で楽しまないお客って居るの?』
『しー!皆んな静かに!』
物陰から舞斗、舞華、華、日和、千鶴、マミマミ?その他数名で見守っている!
皆んな、心配なのだ!
だってあの二人、どっちも「拗らせてる」から、色々と!
『話しなら早く終わらせてもらえますか?コレからイベントステージが有るんです!』
私、もう負けない!
副店長が、舞斗君が、そして「ビックフット」が私にチカラをくれたのだから!
本来、この場所はスタッフまでしか入れない仮設の共有休憩室なのだけど、
何故か「あの人」が入って来ている!
しかも、「スタッフ証」を付けて!
確か、出店や屋台、フリマに参加した人にも「スタッフ専用」のトイレや休憩所が使える様に渡されてる様。
『そうか、なら急ごう。』
あの人が一歩一歩近づく!
多分、側で他のスタッフさんもいるし、おそらく舞斗くんが近くににいるはずだから、何かされそうになったら大声を出せばいい!
そして「あの人」があと数歩で手の届く所まで近づくと、
突然、「土下座」した?
『すまない!尾北さん!本当に申し訳ない事をした!』
額を地面に付けて、大声で謝り始めた?
『え?あの、ちょっと…?』
『自分の身勝手で独り善がりの行動が底まで君を追い詰めた結果になるとは、考えもしなかったんだ!許してくれとは言わない!でも「声優の道」は諦めないで欲しい!』
『な、何を言い出すと思えば? 貴方の所為で「あの店」を辞める事になったのに!今更何を!』
あの店は過去に人気声優を何人もデビューさせた、
「パワースポット」的メイド喫茶なのに!
『その通りだ、詫びて許されるとは思っていない。ただ、君が「声優の道」をあきらめていないなら「償い」として「祖父や父」の知人に紹介する事は出来る。
その先は君次第だが?』
『どう言う事ですか?』
『昨年、大ヒットした劇場アニメーション映画「亡国の女神」の総監督は祖父の教え子なんだ。』
『何すか⁉︎ 突然、ビックネーム出ましたよ⁉︎皆さん、知ってたっスか?』
マミマミが驚くのも無理無い、現在最も新作続編を望まれてるアニメ作品で有り、文部なんとか賞とか取ってる名作だ!
その監督と知り合い?
また、凄いカード出したな、野上氏?
『必要ありません!私は自分の「チカラ」で声優に成ります!
この「ビックフット」の衣に恥じない様に!
そして「あの人」に認めてもらえる様に!』
『頑張って!アオイさん!』
『大丈夫よ、舞華。今の彼女ならね。』
『あ、でも「森猫」は辞めちゃうかもな、将来的に?そだろ、華?』
舞斗が華ちゃんに聞くも、
『声優になったらと言う事?
どうかしらね?意外と両立したりして、ね!』
あ~?何か悪巧みしてるな?
この顔は。
『そだ!鈴木さんとトシさんは知ってましたか?
野上氏が「亡女」の監督と知り合いとか?』
『サッパリ知らないよ!』と鈴木さん。
『初耳だね、でもあの作品のラストって「少数民族の生き残りの少女が女神に捧げる舞を躍る」だよな?』とトシさん。
『限り無くクロに近いグレイでは? あの話、異世界転生モノで、
悪政を常とする帝国に蹂躙された少数民族の生き残りたちが、帝国が信仰する女神の御告げで悪の帝王を倒すって内容で、実は女神は別の宇宙からきた「辺境調査員」だったってオチの…色々、符号するで有ります!』って丹沢さん。
『アレ、「アフリカ某所」がモデルなんだ!差し詰め「女神」は先進国の研究者とか?』と千鶴さん。
『野上氏が踊ってたのも、「ラストシーンの舞」なのかな?』とひよりさん。
『ここだけの話しにしません?』と華が「し~。」っと、唇に人差し指を立てる。
全員うなずく!
『そうか、そうだね。君は誰かの手を借りずとも「夢」を叶えてられる人だ。僕のお節介で廻り道させてしまった。本当にすまなかった。』
再び頭を下げる野中氏
『私、一つだけ貴方に感謝してます。それは「あの人達」に出会えた事、それだけはあの事が無ければ起こらなかった「奇跡の出会い」ですから。
ソレと一つ聞かせて下さい!』
『あぁ何でも聞いてほしい。嘘偽り無く答えよう。』
『メイド喫茶で踊りだしたのは何故ですか?私への嫌がらせって事では無いみたいですけど?
アレって「亡女」のラストダンスですよね?多少カクカクしてましたけど、
何の意味が有ったんですか?』
『?いや、アレは「モブイの激励の踊り」だけど?』
『え?』
『え?』
隠れて見ている全員が笑いを堪えていた?
尾北ちゃんには、アレがあれに見えたんだ⁉︎
『これもナイショね!』今度は日和さんが華の真似をして、人差し指をかざすも、
『さっきのお姉さんの方が色っぽい。』と千鶴さんが指摘する。
うなずく男性陣。
『ほ、ほめても何も有りませんから。ぽっ!』
『お姉さん、紅くなってる。超色っぽい、ひよりちゃんじゃ敵わない。』千鶴さんが畳み掛けるも、
『分かりました!皆さん、「打ち上げ」は期待して下さい!私たちの所だけ、ちょっとだけ「豪華」にします!』
『ぶい!』とVサインを決める千鶴さん?
誰かに似てないか?
『そうですか!なら「あの踊り」は、私を元気付ける為の踊りだったのですね。』
『自分にとって、慣れ親しんだモノだから誰でも知っていると思っていたんだ。
あの日、君がひどく落ち込んでいたから元気になって欲しかったんだ。』
『あ、あの日ですか?私、そんなに変でしたか?』
『いつもと同じ笑顔だったよ。
でも「声」がね、今までに無いくらい「湿って」たんだ。
本当は声を上げて泣きたい様な「声」に聞こえたんだ。
すまない、上手く説明出来ているかな?
こんなだから皆に誤解されるのだね?
コレだから「コミ症」は困るんだ、ハハハ。』
何故、わかったんですか?
誰にも悟られ無かったのに!
そう!彼女にだって気付かれ無かったのに⁉︎
あの日、私が悲しかった事を⁉︎
『だから、どうしても励まさずにはいられなかったんだ。
もっとも、君も含めて周りからは、僕が嫌がらせでもしてる様に、暴れ出したと思われた。
コレも日頃、周りとコミュニケーションを取っていない所為だな。』
そんな人が気付いたの?
あの日、バイトしていた「メイド喫茶」で一番仲の良い子が辞める事になった。
声優デビューが決まったから。
しかも「長編アニメーション」のメインキャストに決まった事が、現状バイトを続ける事が難しいと判断したから。
皆んなで彼女に「おめでとう!」を言って、泣いた。
バイト友達が夢を叶えて嬉し泣きし、別れを悲しんで泣いていた。
私も泣きたかった!
でも、接客する以上悲しい顔はお客様に見せられない!
彼女は皆んなの気持ちが嬉しくて泣き笑いしていて、訳を知ったお客様から「おめでとう!」を言われて又泣いていた。
その時!
よく私を指名する
あの「ご主人様」が必死の形相で「オタ芸」を始めた!
店内は彼女を祝って暖かな雰囲気に浸っていたのに、
一瞬で気まずく、微妙な空気になった。皆んなのお祝い気分は台無しになった。
『止めて下さい!』
私は今までに無いくらい大きな声を出した。
更に店内の空気がこわばった!
もう我慢出来ず、私は泣き出した!
『もう、いい加減にして下さい!』
いつしか、周りにいたお客様が「ノボリン」さんを押さえつけた。
同ビル内の警備員さんが来て、不審者として連れて行った。
私が泣き出した事で彼女が気を使って、私の代わりに周りのお客様に謝っていた。
私にも謝って来た。
違う!違うの!
私が泣いていたのは、
悲しかったのはもちろん、
悔しかったから!
彼女の勝ち取った「モノ」は、
私が欲しかった「モノ」。
声優を目指すキッカケになった作品。
子供の頃から「ファン」だった漫画家さんの新作、学生の頃に読んでいた時に「お気に入りのキャラクター」。
この作品がアニメになるなら、あのキャラクターは私が声を担当するんだ!
そんな目標が有った。
でも、ソレを手に出来たのは彼女、ソレが悔しかった。
だから泣いてしまった。
もう、彼女とは以前と同じ様には話せない。
顔も見れない。
翌日、「辞めます」とお店に連絡すると、彼女や他の子からメールが何通も届いていたけど…。
そして、
『う、うわあぁ~ん!』
『えっ!き、君?ど、どうしたんだい?』慌てるノボリ…じゃない野中氏。
『私、行ってくるわ。』
『華ちゃん、よろ。』
『お姉さん、「神」!』
千鶴さん、華ちゃんを尊敬の眼差しで見ている。
う~ん、こりは尾北ちゃんにも言える事だけども?
『千鶴さん、あの~?』
『「千鶴さん」違う。「千鶴ちゃん」or「ちぃちゃん」、要希望。れっつ りぴ~と あふた~ みぃ!』
『めんどい!んじゃ、「ちぃちゃん」で!』
『おーらいと! では、質問ぷりーず。』
『ちぃちゃん、華ちゃんの事を「何歳」だと思ってるの?』
『?お姉さんの歳?…にじゅ…』
『ハイ、駄目! 次、日和さん!』
『あん!私もヒヨちゃんって呼んで!』
『ひよりさん、お兄ちゃんと「デート」の約束してるそうですね?』
『マジっスか?命知らずな?華お姉様に虐められますよ!』とマミマミ、え?そうなの?そうだね。
『えっ、あのおねいさんと舞斗くんって、そんな関係なの?
あ!「若い子」好きなのか!』
『もういいです!ハイ、トシさん、お願いします!』
『フフ、答えよう!
先程千鶴くんが「二十」と言いかけて、不正確を指摘された!「二十歳」とは余り言わないし、それ以上の二十数歳も指摘事項に該当することから「二十歳」の可能性も有るが、あえて!』
『長い!次、丹沢さん!』
『では「十九歳」かな?』
『わ、私が言おうとしたのに~!』
『全員不正確です!正解は私と同じ「十七歳」です!』
四人が固まった。
『これはアレっスね!昭和の名作テニス漫画で高校生なのに「ナントカ貴婦人」って呼ばれるのと同じ理由っスね! すし詰め、自分は鬼コーチにシゴかれて、憧れの先輩との恋とテニスの板挟みのヒロインのポジションっスね?』
『何気に自分ヨイショしたな? !(マミマミ、ちょっと、一緒にね!)
では皆さん、この事は華ちゃんが気にやむので、「ご内密に!」』
っと言おうと、舞華とマミマミは華ちゃんの真似して唇の前に人差し指を当ててWinkする!
硬直の解けたちぃちゃんが、
『あ!可愛い!ちょっと照れてる所が更にいい!』
『へへへ、どうもどうも!』
『酷くない?私の時と反応違い過ぎ!』日和さんが抗議すると、
『ヒヨちゃんは「アザとあざとい」。ぎゅって、したい衝動にならない。』
『なんだよー、「アザとい」だけでいいじゃない?増やすなよー!』
『皆さま、お楽しみの所、恐縮ですがご準備の時間が足らなくなりますのでお知らせに参りまさた。』
『あ、メイドさんだ。清楚可愛い!』
『畏れ入ります、ちぃちゃん様。』
『んじゃ、参りましょうか!
オーイ、華ちゃ~ん、アオイさーん、時間、時間!』
泣いている蒼李さんを華ちゃんが宥めてる。
ひとまず、落ち着いてステージの準備をしよう!
『…って、事が有りましてね。大変だったんだよ、雅にゃん!』
実装解除して、今は「ネコ耳モード」なメイドさんな私はグダグダに「友達」になったばかりの「ペガサス娘」コスの雅ちゃんに今日の騒動の一部を説明してたの。
『私との「勝負」以外にも大変な事が起きてましたのね?』
一応、コス衣装は舞台演出用の重いヤツで無く、広報活動用の動き易い衣装を着てる。
わるぷる製だお!
打ち上げの席で「ケーブルTV鶴亀」の取材が来てしまったので無し崩し的にお着替えさせられた。
んで、先程解放されたのだけど、雅ちゃんが
『貴女、ステージが始まる前にも、何やら騒いでましたわよね?何をしてましたの?』
って聞いて来るから、「ミルクで乾杯!」プチ女子会を打ち上げ会場の隅で始めてた。
『大変でしたのね?
一つ聞いてもよろしいかしら?』
『どうぞ!私のスリーサイズは上から…』
『それはその内で、今は他の事に疑問が有りまして。』
『私の事はどうでもいいのね!』
『今度は私が打ちますわよ!
私が聞きたいのは
そのメイド喫茶でバイトすると声優になれる」って本当ですの?只の「声優志望の方」が集まっただけのお店では?』
『雅ちゃん、「真実はいつも一つ とは、限らない」んだよ。』
『はぁ~?』
わかった様な、わからない様な?
当人たちがソレでいいなら、
いいんじゃない。
『そうだ、ねぇ舞華、私も文化祭での「貴女たちのグループ」に入れなさい!』
『え、良いけど。割と地味だよ?辛抱出来る?』
『また、揶揄ってるでしょ!』
『本当に地味なのよ、赤ちゃんの「オムツ」とか変えた事有る?雅ちゃんは?』
『そんな事までするの? 経験無いから、やってみたいのだけど!』
『本当⁉︎ ウチ来る?腕前見て上げる!なんなら赤ちゃんと一緒にお風呂とか入って見る?』
『舞華の家って、小さい御兄弟がいるの?』
『ん~。訳あってさ、赤ちゃんを保護してるの、家族皆んなでお世話してるの。』
『ご、ごめんなさい?何か聞いていけない事だったかしら。』
もぅ~スッカリ塩らしくなって♡
コレが「素」の雅ちゃんなのかな?
『あー、私、割とそういうの無いから。』
『割と?』
何故に疑問形?
うん、そうでもないかも。
それでこそ「痛痛お嬢様」よね!
『そ、それに、と、友達になったばかりでお家にお邪魔するなんて、は、はしたないですし…』
『無理に誘わないけど、猫とか犬とかロボとか沢山いるよ?
あと、さっきMCやってた二葉ちゃん達可愛い妹とかも。』
『なら、無理矢理お誘い下さいな⁉︎ 舞華はやっぱり「意地悪」ですわ!』
なんか反応が新鮮。
暫し私たちはイチャイチャしてたの。
その頃、お兄ちゃん達は
『約束だぞ!舞斗君!きっと、きっと「我が大学」に合格して
「現代芸能視覚解析部」に入部してくれたまえ!』
何故か烏龍茶で酔った?のか、トシさんがヤケに絡む。
『舞斗氏、あの「天使たち」は氏の「妹君」とは誠か? 是非、是非是非、お近づきになりたいのだが!』
このセリフが丹沢さんや野中さんならチョンぎってますが…?
『千鶴さん、落ち着いてくれ。良い子は「おウチ」に帰る時間だから。』
『おウチじゃ、「コスプレ」着ないでしょう?』
『いや、割と着てるよ。新作が出来ると「ミニ撮影会」が始まるし。』
何故か偶に、足立くんの姉上が行商籠に新作子供服を詰めてやって来る。
『ソレ!それに呼んで欲しかった!』
『自分、姉さんの助手で同行するっスから、「ちぃちゃん」さんに連絡するっスよ? 連絡先交換しませう?』
『私たちの間で「さん」はいらない。
! 名案!足立ちゃんとも遊びたい!
足立ちゃんも私たちの
「現代芸能視覚解析部」に入部するの!』
『あ、あの皆さん、「W大」とお聞きしてますが、 偏差値的に、ム、無理ゲーっす。』
『君も、「特別勉強会」に参加しなさい。無料だから!』
『何かしら。楽しそうね、皆さん?』
『あ、お姉さん!お姉さんも「W大」に来て!ソレで「遊ぶ」の!』
『大学で遊ぶ?学祭か何かですか?』
何か新たな「お騒がせ集団」が誕生しそうだ!
『何だと!もぅ一回言ってみろ!』
打ち上げ会場の和やかな空気をぶち壊し、声を荒げる男性?
『アレ?あの人は、』
舞華がその人物に見覚えが有った。
華はどの人物でも構わないので、この場をかき混ぜて欲しかった。
それがまさか、
あの人とは!
『実里ちゃんのお父さん⁉︎』
花屋のご主人と
『シモおじ様、サイコーですわ!』
お父さんの幼稚園からの知り合いで金物屋の頑固親父!
その二人が席を立ち、声を荒げて睨み付けている相手は?
駅前商店街振興組合の御一堂と今回の「イベント」の成功を肴に盛り上がる知人の方々。
良く見ると、
『あ、順也おじ様? …潰れてる?』
絶対、火種はあの人よね!
『み、皆さん、落ち着いて!夏川さんも座って下さい。』
羽柴叔父様が騒ぎを収めようと努めていたが、
『狙い通り過ぎて、怖くなるわね。って、アレ、お父さん?』
次の瞬間、華が見たのは組合長の頭にビールをかける北代の父だった。
午前中のイベントステージの前の事。
舞斗くんから「あの人」が話しがしたいからと呼び出された。
『お話しって、なんですか?
えっと、「ノボリン」ご主人サマ
…でよろしかったですか?』
『のぼりん? …って、すげ~楽しんでたんだじゃね?「メイド喫茶」?』
『メイド喫茶で楽しまないお客って居るの?』
『しー!皆んな静かに!』
物陰から舞斗、舞華、華、日和、千鶴、マミマミ?その他数名で見守っている!
皆んな、心配なのだ!
だってあの二人、どっちも「拗らせてる」から、色々と!
『話しなら早く終わらせてもらえますか?コレからイベントステージが有るんです!』
私、もう負けない!
副店長が、舞斗君が、そして「ビックフット」が私にチカラをくれたのだから!
本来、この場所はスタッフまでしか入れない仮設の共有休憩室なのだけど、
何故か「あの人」が入って来ている!
しかも、「スタッフ証」を付けて!
確か、出店や屋台、フリマに参加した人にも「スタッフ専用」のトイレや休憩所が使える様に渡されてる様。
『そうか、なら急ごう。』
あの人が一歩一歩近づく!
多分、側で他のスタッフさんもいるし、おそらく舞斗くんが近くににいるはずだから、何かされそうになったら大声を出せばいい!
そして「あの人」があと数歩で手の届く所まで近づくと、
突然、「土下座」した?
『すまない!尾北さん!本当に申し訳ない事をした!』
額を地面に付けて、大声で謝り始めた?
『え?あの、ちょっと…?』
『自分の身勝手で独り善がりの行動が底まで君を追い詰めた結果になるとは、考えもしなかったんだ!許してくれとは言わない!でも「声優の道」は諦めないで欲しい!』
『な、何を言い出すと思えば? 貴方の所為で「あの店」を辞める事になったのに!今更何を!』
あの店は過去に人気声優を何人もデビューさせた、
「パワースポット」的メイド喫茶なのに!
『その通りだ、詫びて許されるとは思っていない。ただ、君が「声優の道」をあきらめていないなら「償い」として「祖父や父」の知人に紹介する事は出来る。
その先は君次第だが?』
『どう言う事ですか?』
『昨年、大ヒットした劇場アニメーション映画「亡国の女神」の総監督は祖父の教え子なんだ。』
『何すか⁉︎ 突然、ビックネーム出ましたよ⁉︎皆さん、知ってたっスか?』
マミマミが驚くのも無理無い、現在最も新作続編を望まれてるアニメ作品で有り、文部なんとか賞とか取ってる名作だ!
その監督と知り合い?
また、凄いカード出したな、野上氏?
『必要ありません!私は自分の「チカラ」で声優に成ります!
この「ビックフット」の衣に恥じない様に!
そして「あの人」に認めてもらえる様に!』
『頑張って!アオイさん!』
『大丈夫よ、舞華。今の彼女ならね。』
『あ、でも「森猫」は辞めちゃうかもな、将来的に?そだろ、華?』
舞斗が華ちゃんに聞くも、
『声優になったらと言う事?
どうかしらね?意外と両立したりして、ね!』
あ~?何か悪巧みしてるな?
この顔は。
『そだ!鈴木さんとトシさんは知ってましたか?
野上氏が「亡女」の監督と知り合いとか?』
『サッパリ知らないよ!』と鈴木さん。
『初耳だね、でもあの作品のラストって「少数民族の生き残りの少女が女神に捧げる舞を躍る」だよな?』とトシさん。
『限り無くクロに近いグレイでは? あの話、異世界転生モノで、
悪政を常とする帝国に蹂躙された少数民族の生き残りたちが、帝国が信仰する女神の御告げで悪の帝王を倒すって内容で、実は女神は別の宇宙からきた「辺境調査員」だったってオチの…色々、符号するで有ります!』って丹沢さん。
『アレ、「アフリカ某所」がモデルなんだ!差し詰め「女神」は先進国の研究者とか?』と千鶴さん。
『野上氏が踊ってたのも、「ラストシーンの舞」なのかな?』とひよりさん。
『ここだけの話しにしません?』と華が「し~。」っと、唇に人差し指を立てる。
全員うなずく!
『そうか、そうだね。君は誰かの手を借りずとも「夢」を叶えてられる人だ。僕のお節介で廻り道させてしまった。本当にすまなかった。』
再び頭を下げる野中氏
『私、一つだけ貴方に感謝してます。それは「あの人達」に出会えた事、それだけはあの事が無ければ起こらなかった「奇跡の出会い」ですから。
ソレと一つ聞かせて下さい!』
『あぁ何でも聞いてほしい。嘘偽り無く答えよう。』
『メイド喫茶で踊りだしたのは何故ですか?私への嫌がらせって事では無いみたいですけど?
アレって「亡女」のラストダンスですよね?多少カクカクしてましたけど、
何の意味が有ったんですか?』
『?いや、アレは「モブイの激励の踊り」だけど?』
『え?』
『え?』
隠れて見ている全員が笑いを堪えていた?
尾北ちゃんには、アレがあれに見えたんだ⁉︎
『これもナイショね!』今度は日和さんが華の真似をして、人差し指をかざすも、
『さっきのお姉さんの方が色っぽい。』と千鶴さんが指摘する。
うなずく男性陣。
『ほ、ほめても何も有りませんから。ぽっ!』
『お姉さん、紅くなってる。超色っぽい、ひよりちゃんじゃ敵わない。』千鶴さんが畳み掛けるも、
『分かりました!皆さん、「打ち上げ」は期待して下さい!私たちの所だけ、ちょっとだけ「豪華」にします!』
『ぶい!』とVサインを決める千鶴さん?
誰かに似てないか?
『そうですか!なら「あの踊り」は、私を元気付ける為の踊りだったのですね。』
『自分にとって、慣れ親しんだモノだから誰でも知っていると思っていたんだ。
あの日、君がひどく落ち込んでいたから元気になって欲しかったんだ。』
『あ、あの日ですか?私、そんなに変でしたか?』
『いつもと同じ笑顔だったよ。
でも「声」がね、今までに無いくらい「湿って」たんだ。
本当は声を上げて泣きたい様な「声」に聞こえたんだ。
すまない、上手く説明出来ているかな?
こんなだから皆に誤解されるのだね?
コレだから「コミ症」は困るんだ、ハハハ。』
何故、わかったんですか?
誰にも悟られ無かったのに!
そう!彼女にだって気付かれ無かったのに⁉︎
あの日、私が悲しかった事を⁉︎
『だから、どうしても励まさずにはいられなかったんだ。
もっとも、君も含めて周りからは、僕が嫌がらせでもしてる様に、暴れ出したと思われた。
コレも日頃、周りとコミュニケーションを取っていない所為だな。』
そんな人が気付いたの?
あの日、バイトしていた「メイド喫茶」で一番仲の良い子が辞める事になった。
声優デビューが決まったから。
しかも「長編アニメーション」のメインキャストに決まった事が、現状バイトを続ける事が難しいと判断したから。
皆んなで彼女に「おめでとう!」を言って、泣いた。
バイト友達が夢を叶えて嬉し泣きし、別れを悲しんで泣いていた。
私も泣きたかった!
でも、接客する以上悲しい顔はお客様に見せられない!
彼女は皆んなの気持ちが嬉しくて泣き笑いしていて、訳を知ったお客様から「おめでとう!」を言われて又泣いていた。
その時!
よく私を指名する
あの「ご主人様」が必死の形相で「オタ芸」を始めた!
店内は彼女を祝って暖かな雰囲気に浸っていたのに、
一瞬で気まずく、微妙な空気になった。皆んなのお祝い気分は台無しになった。
『止めて下さい!』
私は今までに無いくらい大きな声を出した。
更に店内の空気がこわばった!
もう我慢出来ず、私は泣き出した!
『もう、いい加減にして下さい!』
いつしか、周りにいたお客様が「ノボリン」さんを押さえつけた。
同ビル内の警備員さんが来て、不審者として連れて行った。
私が泣き出した事で彼女が気を使って、私の代わりに周りのお客様に謝っていた。
私にも謝って来た。
違う!違うの!
私が泣いていたのは、
悲しかったのはもちろん、
悔しかったから!
彼女の勝ち取った「モノ」は、
私が欲しかった「モノ」。
声優を目指すキッカケになった作品。
子供の頃から「ファン」だった漫画家さんの新作、学生の頃に読んでいた時に「お気に入りのキャラクター」。
この作品がアニメになるなら、あのキャラクターは私が声を担当するんだ!
そんな目標が有った。
でも、ソレを手に出来たのは彼女、ソレが悔しかった。
だから泣いてしまった。
もう、彼女とは以前と同じ様には話せない。
顔も見れない。
翌日、「辞めます」とお店に連絡すると、彼女や他の子からメールが何通も届いていたけど…。
そして、
『う、うわあぁ~ん!』
『えっ!き、君?ど、どうしたんだい?』慌てるノボリ…じゃない野中氏。
『私、行ってくるわ。』
『華ちゃん、よろ。』
『お姉さん、「神」!』
千鶴さん、華ちゃんを尊敬の眼差しで見ている。
う~ん、こりは尾北ちゃんにも言える事だけども?
『千鶴さん、あの~?』
『「千鶴さん」違う。「千鶴ちゃん」or「ちぃちゃん」、要希望。れっつ りぴ~と あふた~ みぃ!』
『めんどい!んじゃ、「ちぃちゃん」で!』
『おーらいと! では、質問ぷりーず。』
『ちぃちゃん、華ちゃんの事を「何歳」だと思ってるの?』
『?お姉さんの歳?…にじゅ…』
『ハイ、駄目! 次、日和さん!』
『あん!私もヒヨちゃんって呼んで!』
『ひよりさん、お兄ちゃんと「デート」の約束してるそうですね?』
『マジっスか?命知らずな?華お姉様に虐められますよ!』とマミマミ、え?そうなの?そうだね。
『えっ、あのおねいさんと舞斗くんって、そんな関係なの?
あ!「若い子」好きなのか!』
『もういいです!ハイ、トシさん、お願いします!』
『フフ、答えよう!
先程千鶴くんが「二十」と言いかけて、不正確を指摘された!「二十歳」とは余り言わないし、それ以上の二十数歳も指摘事項に該当することから「二十歳」の可能性も有るが、あえて!』
『長い!次、丹沢さん!』
『では「十九歳」かな?』
『わ、私が言おうとしたのに~!』
『全員不正確です!正解は私と同じ「十七歳」です!』
四人が固まった。
『これはアレっスね!昭和の名作テニス漫画で高校生なのに「ナントカ貴婦人」って呼ばれるのと同じ理由っスね! すし詰め、自分は鬼コーチにシゴかれて、憧れの先輩との恋とテニスの板挟みのヒロインのポジションっスね?』
『何気に自分ヨイショしたな? !(マミマミ、ちょっと、一緒にね!)
では皆さん、この事は華ちゃんが気にやむので、「ご内密に!」』
っと言おうと、舞華とマミマミは華ちゃんの真似して唇の前に人差し指を当ててWinkする!
硬直の解けたちぃちゃんが、
『あ!可愛い!ちょっと照れてる所が更にいい!』
『へへへ、どうもどうも!』
『酷くない?私の時と反応違い過ぎ!』日和さんが抗議すると、
『ヒヨちゃんは「アザとあざとい」。ぎゅって、したい衝動にならない。』
『なんだよー、「アザとい」だけでいいじゃない?増やすなよー!』
『皆さま、お楽しみの所、恐縮ですがご準備の時間が足らなくなりますのでお知らせに参りまさた。』
『あ、メイドさんだ。清楚可愛い!』
『畏れ入ります、ちぃちゃん様。』
『んじゃ、参りましょうか!
オーイ、華ちゃ~ん、アオイさーん、時間、時間!』
泣いている蒼李さんを華ちゃんが宥めてる。
ひとまず、落ち着いてステージの準備をしよう!
『…って、事が有りましてね。大変だったんだよ、雅にゃん!』
実装解除して、今は「ネコ耳モード」なメイドさんな私はグダグダに「友達」になったばかりの「ペガサス娘」コスの雅ちゃんに今日の騒動の一部を説明してたの。
『私との「勝負」以外にも大変な事が起きてましたのね?』
一応、コス衣装は舞台演出用の重いヤツで無く、広報活動用の動き易い衣装を着てる。
わるぷる製だお!
打ち上げの席で「ケーブルTV鶴亀」の取材が来てしまったので無し崩し的にお着替えさせられた。
んで、先程解放されたのだけど、雅ちゃんが
『貴女、ステージが始まる前にも、何やら騒いでましたわよね?何をしてましたの?』
って聞いて来るから、「ミルクで乾杯!」プチ女子会を打ち上げ会場の隅で始めてた。
『大変でしたのね?
一つ聞いてもよろしいかしら?』
『どうぞ!私のスリーサイズは上から…』
『それはその内で、今は他の事に疑問が有りまして。』
『私の事はどうでもいいのね!』
『今度は私が打ちますわよ!
私が聞きたいのは
そのメイド喫茶でバイトすると声優になれる」って本当ですの?只の「声優志望の方」が集まっただけのお店では?』
『雅ちゃん、「真実はいつも一つ とは、限らない」んだよ。』
『はぁ~?』
わかった様な、わからない様な?
当人たちがソレでいいなら、
いいんじゃない。
『そうだ、ねぇ舞華、私も文化祭での「貴女たちのグループ」に入れなさい!』
『え、良いけど。割と地味だよ?辛抱出来る?』
『また、揶揄ってるでしょ!』
『本当に地味なのよ、赤ちゃんの「オムツ」とか変えた事有る?雅ちゃんは?』
『そんな事までするの? 経験無いから、やってみたいのだけど!』
『本当⁉︎ ウチ来る?腕前見て上げる!なんなら赤ちゃんと一緒にお風呂とか入って見る?』
『舞華の家って、小さい御兄弟がいるの?』
『ん~。訳あってさ、赤ちゃんを保護してるの、家族皆んなでお世話してるの。』
『ご、ごめんなさい?何か聞いていけない事だったかしら。』
もぅ~スッカリ塩らしくなって♡
コレが「素」の雅ちゃんなのかな?
『あー、私、割とそういうの無いから。』
『割と?』
何故に疑問形?
うん、そうでもないかも。
それでこそ「痛痛お嬢様」よね!
『そ、それに、と、友達になったばかりでお家にお邪魔するなんて、は、はしたないですし…』
『無理に誘わないけど、猫とか犬とかロボとか沢山いるよ?
あと、さっきMCやってた二葉ちゃん達可愛い妹とかも。』
『なら、無理矢理お誘い下さいな⁉︎ 舞華はやっぱり「意地悪」ですわ!』
なんか反応が新鮮。
暫し私たちはイチャイチャしてたの。
その頃、お兄ちゃん達は
『約束だぞ!舞斗君!きっと、きっと「我が大学」に合格して
「現代芸能視覚解析部」に入部してくれたまえ!』
何故か烏龍茶で酔った?のか、トシさんがヤケに絡む。
『舞斗氏、あの「天使たち」は氏の「妹君」とは誠か? 是非、是非是非、お近づきになりたいのだが!』
このセリフが丹沢さんや野中さんならチョンぎってますが…?
『千鶴さん、落ち着いてくれ。良い子は「おウチ」に帰る時間だから。』
『おウチじゃ、「コスプレ」着ないでしょう?』
『いや、割と着てるよ。新作が出来ると「ミニ撮影会」が始まるし。』
何故か偶に、足立くんの姉上が行商籠に新作子供服を詰めてやって来る。
『ソレ!それに呼んで欲しかった!』
『自分、姉さんの助手で同行するっスから、「ちぃちゃん」さんに連絡するっスよ? 連絡先交換しませう?』
『私たちの間で「さん」はいらない。
! 名案!足立ちゃんとも遊びたい!
足立ちゃんも私たちの
「現代芸能視覚解析部」に入部するの!』
『あ、あの皆さん、「W大」とお聞きしてますが、 偏差値的に、ム、無理ゲーっす。』
『君も、「特別勉強会」に参加しなさい。無料だから!』
『何かしら。楽しそうね、皆さん?』
『あ、お姉さん!お姉さんも「W大」に来て!ソレで「遊ぶ」の!』
『大学で遊ぶ?学祭か何かですか?』
何か新たな「お騒がせ集団」が誕生しそうだ!
『何だと!もぅ一回言ってみろ!』
打ち上げ会場の和やかな空気をぶち壊し、声を荒げる男性?
『アレ?あの人は、』
舞華がその人物に見覚えが有った。
華はどの人物でも構わないので、この場をかき混ぜて欲しかった。
それがまさか、
あの人とは!
『実里ちゃんのお父さん⁉︎』
花屋のご主人と
『シモおじ様、サイコーですわ!』
お父さんの幼稚園からの知り合いで金物屋の頑固親父!
その二人が席を立ち、声を荒げて睨み付けている相手は?
駅前商店街振興組合の御一堂と今回の「イベント」の成功を肴に盛り上がる知人の方々。
良く見ると、
『あ、順也おじ様? …潰れてる?』
絶対、火種はあの人よね!
『み、皆さん、落ち着いて!夏川さんも座って下さい。』
羽柴叔父様が騒ぎを収めようと努めていたが、
『狙い通り過ぎて、怖くなるわね。って、アレ、お父さん?』
次の瞬間、華が見たのは組合長の頭にビールをかける北代の父だった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
スカートの中、…見たいの?
サドラ
大衆娯楽
どうしてこうなったのかは、説明を省かせていただきます。文脈とかも適当です。官能の表現に身を委ねました。
「僕」と「彼女」が二人っきりでいる。僕の指は彼女をなぞり始め…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる