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いらっしゃいませ!ようこそ『森の猫さま』へ。

ある日の騒動〜店長は私だから

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 ココは従業員の休憩室、

 猫カフェ以外にもこのビル内で営業しているお店の従業員共有のスペースだ。 

 お弁当食べたりする場所で、ソファに身体を投げ出し、脱力している女子高生店長がにいた。 

 いたんだ、お前。


 『よ、良かった~。出番有ったよ~。』 


 あ、心の声が出てしまった。

 だっていきなりオジサン主導で始まるから、店長の私「北代きたしろ 舞華まいか」の出番どころか存在必要なくない?

 折角、猫カフェ『森の猫』をオープンして女子高生店長と女子高生スタッフのキャッキャ、ムフフなバイトライフな感じで始まるはずだったのに~ 。

 もう~お父さんのバカ~‼︎

 なんかすでに怪しい展開なんですけど、

 お店の名前もお父さんの勘違いで「森の猫さま」で登録されてるし?

 本当に大丈夫?

 これからの展開、私受け止められるの?

 ね~、もうお父さんなんか、なんかもう~知らないから~



 ごめんなさい、嘘です。

 お父さん、本当に有り難うございます。

 貴方の娘である事に感謝してます。

 私の我儘で始めた猫カフェ、お父さんが許してくれたからオープンできたのに。
 
 副店長兼スポンサーの華ちゃんだって、今は積極的に参加してくれてるけど、最初は私の為に仕方なく協力する感じだったし、お父さんの許しがなかったらどうだったろう? 

 『舞華、いま猫カフェの経営はかなり厳しいと思って。

 何処のカフェも独自の手法で顧客を集めているの。』 

 根っから真面目な華ちゃんが諭すように話し出した時は、こりゃダメかなって、あきらめてしまいそうだった。 

 『豆柴にハリネズミ、フクロウや木兎、私はお勧めしないけどトカゲなど爬虫類なんてカフェも有るの、舞華のやりたい保護猫カフェも有るみたい、テンプレ的なモノなら直ぐに準備出来るけど。

 舞華、お父さんは何か言ってなかったかしら?』 

 私よりお父さんの娘みたいな華ちゃん、お姉ちゃんって呼んであげたら喜ぶかな? 

 また猫カフェをやっていく場所を提供してくれた叔母、綺麗で優しくて大好きな新名ニイナ叔母さま。

 叔母夫婦が一、二階で喫茶店を経営しているビルの三階を借りられた。

 ビルのオーナーは叔母の旦那さま、蒼介ソウスケ叔父様。

 二人にとっては子供の頃からお父さんはヒーローだったらしい?

 ちなみに叔母夫婦は幼馴染で、叔父は私のお父さんを実の兄の様に慕っている、

 実兄いるのに? 
 実兄さんごめんなさい。

 お父さんが猫カフェに難色を示せば、ここでの出店は無かったと思う。

 保護猫ボランティアの方々もお父さんの猫友だったり、高校生スタッフ以外の従業員は華ちゃんの手配してくれた派遣さんで、
 最初は距離感と言うか、カタい感じだったのが今では気軽に話しかられるお兄さんお姉さんで、ここでの仕事ですっかり猫好きになり、
 正式に従業員になりたいとか、華ちゃんの会社の人でガチで猫好きな人がここに転属を希望しているとか、
 このご時世で恵まれた環境なのは私でもわかる。

 私個人の力ではカフェオープンは無理だった事も、 
 華ちゃんや友達を巻き込んでもっとドタバタした猫カフェを始めたかったのに、 

 『どうしてこうなったの?』 

 経営不振な会社や施設を買い取って、その手腕で立て直しに成功している「山王院サンオウイン  ハナ」の影響に他ならない。

 すごくない?私の親友!

 よし私、華ちゃんのお嫁さんになる!

 あ、ダメ?! 華ちゃんってば、お兄ちゃんのお嫁さんになりたいから重婚になっちゃう。

 いや、それは置いといて⁈

 (コレ、お兄ちゃんにはまだナイショね!)

 と、とにかくこのままだと華ちゃんが店長って事で経済誌から取材が来ちゃうよ。 

 (この際、ソレでも良いかな?)

 『猫カフェ事業に革命を!
 女子高生店長、山王院 華!』
みたいな、 それもいいかなぁ~。 

 『何がいいの?』 

 へ?

 『ぷぷ、変な顔して、何かあったの?』

 華ちゃん、華ちゃんだ!
 
 『あっ、えっと、色々考えてたら堂々巡りに成りそうで?』 

 『あの件かしら?
 里親募集でメイちゃんや特定の猫に問い合わせが集中してる事、それとも…』 

 私の苦しい誤魔化しを真面目に考えて答えてくれる華ちゃん。

 え、メイはあげないよ、そんな事になったらお父さんに、メイの代わりに私が里子に出される?

 この間ね、お父さんが抱っこしてるメイに

 『メイはお嫁にやらないからなぁ~。』

 って言ってた、同感だよお父さん、キモいとか思ってないよ、本当に。 

 『そんな事になってたとは!
 
 さすがメイ。

 で、他にも集中している猫は?』

 って、このまま誤魔化そう⁈

 『『美雪!』ちゃん!』

 あっ、華ちゃんのドヤ顔、久々に見たかも。 
 
 今、華ちゃん、素に戻ってる。 

 学校やお仕事の時の「クールビューティー」の華ちゃんじゃない、ウチでお母さんと一緒にお料理したり、弟たちとゲームしてる時の「良いお姉ちゃん」の華ちゃんだね。

 『さすが華ちゃんの「運命の猫」ちゃん!』 

 『ん、でも変な話しよね?
 だってメイちゃんや美雪、他の子もペットショップの売れ残りだったなんて信じられないわ?

 こんなに素敵な猫ちゃんなのに?』 

 『お父さんが言ってた。
 猫とかのペットは美術品と同じ、その人にとってはどれだけお金を出しても手に入れたい、でも別の人には価値のない物みたいな扱い方をされる、景気や流行にも左右される。

 人の価値観なんてあやふやなモンだって。』 

 今、TV番組で注目されているから保護猫を引き取りたいと思う人もいる…って事かな?

 『嘘!あのお父さんがそんな事言うなんて、猫の為なら世界を敵に戦いそうな人が!』

 『流石に世界は無理じゃない?
 町のチンピラさんぐらいなら偶に見かけるけど?』

 その後ウチに黒い高そうな車に乗って来たオジサン達が高いケーキとか持ってきて「この度はウチの若いのがー!」って平謝りして帰って行くけど…?

 その頂いた高級ケーキは私達食べた事あるかもしれない、「手のかかる後輩からの頂き物だから」ってお母さんが言ってたけど?

 『あ、お母さんの場合も有るよ、4対6で。』

 『その件はまた後日詳しく聞くけど、猫が美術品と同じって経営的には分からなくは無いけど、今の私にはつらい現実ね…。』 

 多分、美雪ちゃんの事を思い出してるな? 

 『猫好きも居れば嫌いな人もいるって事なのかな?
 猫好きでも猫アレルギーとか事情があって飼えない人も居るもんね?』

 今の私たちにはまだ明確な正解は出せない問題だけど、猫カフェを頑張って行けばいずれ正解を見つけられる…かもしれない。 

 私たちは互いにお店で気づいた事を話していた。

 ガールズトークと呼ぶには程遠く、猫達の健康管理、お客様からの要望など休憩時間が足りないくらいに夢中になってしまった。 

 『いけない、舞華に言わなきゃいけないと思っていた事が有るの。』 

 華ちゃんがちょっと険しい表情をしてる、まさかここの経営が厳しいとか? 

 『お店作りの参考に猫カフェ巡りしたでしょ、何故かメイドカフェも数軒行ったけど。』 

 うん、私の強い要望でね!

 『ん、楽しかったね、ウチにいないタイプの猫がいたから、ちょっと浮気してる感じかして。』

 にいないタイプのもね。

 『その内の何軒かで起こっていた事なんだけど、最近お店の前に猫が捨てられていたらしいの、中には発見が遅くなって危ない状態の子もいたらしいけど。』

 えっと、何で? 何してくれてるの? えっと同じ人がやったの?

 『隣り駅の猫カフェにも子猫が捨てられていて、店長さんから連絡頂いたの、そちらも気をつけて下さいねって。』 

 よし、隠れて見張りをしよう!

 『アレかな?猫カフェなら猫必要だから差し上げます的な?

 いいよ、いいわよ、そんな酷いことするくらいなら直接渡しなさいよ!時間の無駄デショ!』 

 ツッコむ所、そこでいい?

 夕方のニュース番組とかで見た気がする、こんな事が私達の身近で起こっていた、捨てた人にも何か事情があってなんて言わせない。 

 『その中で生体チップが確認出来た子がいるの、舞華、この意味分かる?』 

 わからないよ、いじわるしないで教えて下さい、お姉たま。 

 『ペットショップでお迎えした子って事だよね、もしくは獣医さんで処置…ん?
 
 わざわざ病院でお金払って?
 ●万円くらいするよね?』  

 生体チップとは、ペットの動物に入れるとっても小さい記録媒体で、猫だと首の後ろ辺りに埋め込まれ、その子の個体情報や飼い主の連絡先など確認できる。

 血統書の有る子などは父母祖父母までの血統が解るなど、迷子や盗難などから守る為の物でペットショップで販売されてるほとんどの子には購入前から、この生体チップが埋め込み済み、地域によっては義務化されてるらしく有料だ。

 『チップから飼い主や購入店舗がわかるのにわざわざ生体チップの事を知ってそうな猫カフェに捨てにくる意味って何だと思う?』

 華ちゃん、目が怖い。

 それから私コナン君じゃないから教えて下さい、そろそろ。 

 『購入したけど育てられないから捨てたのなら余りにも非常識と言うか愚か者よね、チップを調べたら直ぐバレるし、登録に偽名を使った可能性も有るけど、後日確認の通知書が郵送されるから受取人がいなければ返送されてペットショップにも連絡が入る…、』
 

 もしかして? 

 『よそのおウチの猫さんを盗んで、育てられないから捨てた?
 懐かないとか?
 当たり前だー!』 

 『断言出来ないけど可能性は有る、それでも捨てた人は相当な自己中ね、そろそろ警察も介入するだろうし。』

 『捨てた人は何が目的なの?
 私には訳が分からないよ。』って 

 生まれる前から猫とか犬とかいる家で育ちましたからね、口の悪い叔父からはム●ゴロウのジェネリックだとか言われた。
 そうなの?きっと褒めてないぞ。 

 『七神さんに防犯カメラの増設を頼んだけど、あくまで防犯の為に。』


 七神さん、
 「七神ナナガミ  悠佳里ユカリ」さんは華ちゃんの美人秘書さんなのだ!

 何故かウチのお父さんを『師匠!』と呼び、ウチのお母さんを『お姉様!』と呼ぶ、仕事は出来るが少し残念なお姉さんだ。

 美人だけど古流武術の使い手で怖がって男の人が近づかない、だから恋も出来ないのデスって言ってたんだけど最近イイ感じの人がいるみたい。
 
 誰? 

 『転売に失敗してバレる前に捨てた?
 ん~何か違うな~、華ちゃんどこまで掴んでるの?』 

 おそらく今頃、仕事の出来る秘書さんが報告書とか作成しているに違いない。

 『十六夜ちゃんが獣医さんの所に行ってくれたの。
 それでわかった事が有るの。』 

 十六夜ちゃんこと「十六夜イザヨイ  灯火トウカ」さん、
 七神さんの同僚で七神さんより年上なのに見た目小学生な最強幼女姐さん?

 で、お父さんが言うには「近接戦闘」では敵無し、本気でボコった場合、相手は暫く病院通いらしい…、
 えっと私ってば、十六夜ちゃん可愛いから見かけると後ろからハグしてますけど、マズイかな? 

 『十六夜ちゃん、保護した猫たちの健康状態を調べてきてくれたの。
 お腹を壊していたり、栄養失調だったり、もしかして捨てた人は私たちが当たり前に知っている事を知らないわ、きっと。』 

 華ちゃんはご実家の仕事を手伝って、幾つかの会社の代表取締役だったりする。

 そんな華ちゃんをサポート兼ボディーガードとしてウチのお父さんが集めてきたのが、七神さんや十六夜ちゃん達でみんな苗字に数字が入っている。

 何でも元々は華ちゃんの一族に昔から代々仕えていた家臣の子孫さんで、

 執事の九院さんはリアル黒執事みたいなお兄さんで、黒猫好きだけど、ちょっと変態さんだ!

 私の予想だと数年後、山王院グループは華ちゃんが仕切っていると思う。

 世界取れると思うよ、ハナお姉ちゃん。

 『あと学ばない人かも、ペットショップに行けば子猫用のペットフードが有る、何故子猫用のフードが有るのか考えないの?

 普通の牛乳や大人の猫用のフードではナゼいけないのか?

 ちょっとは疑問に思って店員さんに聞かないのかしら?』
 
 あぁ~名探偵ハナ、爆誕。

 私は眠らされてアテレコされる役だわね? 

 だって私に聞いているんじゃなくて、自問自答して謎解きする探偵さんモードだもん。

 『でも割と知らない人多いよ、里親募集のサイトとか、まるでそれが良い事のようにアピールする人いるけどね、

 「固形物に興味を持って、カジカジしてます、これならすぐ離乳食チャレンジ出来ます。」とかさ?

 我が家では、お父さん達が子供の頃から教わって猫たちの世話してるから当たり前だったんだよ。』 

 子猫って生後半年でも、まだまだ消化器官は充分に成長していないから、消化し易くて栄養価の高い用フードを与えてあげないと、大事な成長期に栄養不足に成りかねないのだ!


 ♪~♪~ってスマホのアラーム音が休憩時間が終わりに近い事を教えてくれた。  

 『さぁ、この話しの続きはウチで、今日はウチで晩御飯食べるでしょ、気持ち切り替えて頑張ろー!』 

 『ハイハイ、店長。』 

 私より気持ちの切り替えが上手い 華ちゃんは颯爽と仕事場に向かう。

 この話しはあくまで同業者に起こったトラブルであって自分たちに起こった事では無い。

 だとしても同じ猫カフェ同業者として何か力になりたい、不幸な猫を助けたいと思っていた。

 確かに自分たちにも起こりうる事だ、今はまだ自分たちの猫カフェの事を頑張ろう。

 こんな酷いこと何度も続いて欲しくないし、起きないだろう。 

 そう思っていた。

 実は既に事件は私たちのそばで起こっていた。




 具体的に言って、このビルの一階で。
 
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