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キツネちゃん、お兄ちゃんに甘えていたヨ。

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 そこは小さなお社。

 祀られているのは、この地を衛る白い狐。


 そして【お留守番】しているのは、その娘の白子狐。


 それほど頻繁にお供え物は無いけど、最近は駄菓子をお供えしてくれる耳の長い女の子と、遊びに来てくれる子猫と、子猫みたいな幼女が昼寝に来る。


 そして更に最近では異界から来た【大狗神】がこの地に留まってくれている。


 「お兄ちゃん、お友達見つかった?」

 「う~ん、まだかなぁ?」

 フェンリルのオウガは少し困っていた。

 実はこの子狐っ子が怖がるので、試しにこの人間の姿になったのは良かったが、その所為で【神力】の一部が使えない状態なのだ。

 お陰でコチラの世界に着いた時に逸れた聖女を見つけられない⁈

 いや、多分近くにはいる、いると思う、いる様な気がする、いると良いな。


 まぁココは彼女の故郷だ、左程心配しなくても大丈夫だろう?

 もしかしたら、長いこと会いたいと言っていた母親に会えたかもしれない。


 それにしても思っていたより、人間の姿と言うのは都合が良いと分かった!

 まぁ戦闘力は少し上がっているんだよ、剣とか持てるし。

 しかも身体が小さくなった分、小回りが効くし、身軽になった事で今まで入らなかった場所にも入れる様になった。

 例えば人間の商店や遊技場に入る事が出来るのだ!


 うん、この世界は面白い!

 まず食べ物が美味い!

 あの娘に【オサイセン】と言う貨幣を預かって食べ物を買ってみたのだが、色んな味があって楽しい!

 近場でいいなら、あの小さな【駄菓子屋】と言う商店でもこの子狐っ子は喜ぶと思う。

 …でも、この子はこの場所に結界の様なモノで閉じ込められている。

 

 この結界ぐらいなら、自分なら簡単に破壊出来そうだし、自分や他の者は素通りしている様だ?

 あくまであの子だけをこの地に閉じ込めているだけの様?

 ソレはこの子を護っていると言う事かも知れない?

 実際、あの子に害意を持つ者で無ければこの場所は出入り自由の様だ。


 たまに【豹人族】の幼児が境内に昼寝しに来たり、小型のダークサーバルタイガーが起こしに来たりしている。

 あの子の事には気がついていない様だが、コイツらが来る事をあの子は楽しみにしている様。
 

 なので、俺はあまりこの場所から離れない様にしている。


 しかし、先ほど知った気配を感じる様になった。



 「コレ、アイツの気配かなぁ?

 なら、コッチに気が付いてココに来てくれないかなぁ?」





 
 俺たちはアルフレッドの後を追って、【五つ塚のお社】に向かっている。

 家から歩いても20分ぐらいの場所だ。


 「あのね、最近新しいお友達が出来たの。」


 妹のメイヤが言うには、【駄菓子屋】の側の林の中にある【小さなお城】。

 そこに住んでいる子と友達になったそうだ?


 「お城?

 あっ! お社の事か!」


 俺は大人しくなったサリーに抱きつくのをやめる様に頼んで、メイヤの【新しい友達】の事をたずねた。

 するとフランさんが、


 「…あの場所、…多分【パワースポット】…だと思う、し…かもワタシたち…みたいな人種には、【聖域】の可能…性が有る…?」


 「何ですか、その【聖域】って?」


 「…進化を促す…場所…かも知れない?

 …何か…大きな存在を…感じる?」


 「何ですか、そのファンタジーなお告げの様な、フラグの様なは?」


 「ミャー!」

 「あ~、ハイハイ、急ぐんだな?」


 先頭を歩くアルフレッドに急かされたよ⁈


 子猫の後ろについていくのは、俺とメイヤ、フランさんとマイヤ、そして…


 「なぁなぁ、さっきの商店で酒とか帰るのか?」


 「ライガさん、アナタおいくつですか?」


 「ん、たしか百年は生きてるぞ?」


 …ソレは飲酒してもいいって事かな?

 後で父さんに確認だな?



 「ミャ!」


 「ん、どうしたの、アルくん?」


 子猫が突然歩みを止めた、そしてある一点を見つめると、再び走り出して…

 「ミャミャーン!」


 「あ、ダメだよ、ネコちゃん⁈」


 一本の木の後ろに隠れていた【巫女服の少女】の紅い袴の裾に噛み付いて引っ張っているアルフレッド⁈

 ってかそんなところに隠れていたの?


 「…お姉ちゃんが【城キツネさん】?」


 「…うん、そうだよ。

 いつもお菓子をお供えしてくれる子だよね。」


 …袴姿のケモ耳少女とキッズブルゾン姿のエルフ少女…

 うん、尊い。

 「メイヤ、この子が新しいお友達かい?」


 「ううん、違うよ?」

 「あれ、メイヤ嬢ちゃんじゃないか?」


 「…お兄さん誰?」


 「俺だよ!

 って、この姿じゃわからないか?」


 「姉さん、離れて!

 …この人、相当強いです!」

 「あんちゃん、お嬢を頼む!」

 盾になるかの如く、ライガとマイヤが俺たちの前に立つ!

 「その声、もしかしてお兄さんはオウガ君なのかな?」

 「おう、当たりだぜ!」


 「なんだ、兄貴かよ?」


 「…味方ですか?

 探し人はこの方なのですね?」



 ひとまず目的は果たされた様だ、

 しかし?


 「ねぇはいないの?」
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