上 下
217 / 224
第8章

第6話 影響与えすぎ?

しおりを挟む
反省した私はハロルド様から夕食の誘いがきたが断った。旅で疲れたことにしたのだ。

テク魔車内でクレアと一緒に食事を食べたが、元気のない私をクレアは心配そうにしてくれた。給仕してくれたイーナさんも、先ほどの事があり最初は顔を赤らめていたが、途中からは私を心配してくれていた。

食事が終わると早めに寝ると伝えて自分の部屋に行く。クレアは明日の打ち合わせに行くと言って護衛の所に向かった。

私は部屋に入るとベッドの隅に座りうな垂れる。

クレアがすぐに部屋に戻ってきた。

「旦那様、大丈夫ですか?」

クレアが心配そうに尋ねてくる。

「ああ、大丈夫だよ。それより随分と早く戻ってきたね。明日の移動の打ち合わせは大丈夫なの?」

私は元気なく顔を上げて、クレアの事を心配する。

「移動の事は問題ありません。それより妻として旦那様の事が心配なのです!」

クレアは真剣な顔をして私の事を心配してくれている。私は嬉しかったが、申し訳なさで俯いてしまう。

「旦那様!」

クレアが心配そうに近づいてきた。私は思わずクレアの腰に抱き着く。

「旦那様?」

クレアが心配そうに声を掛けてきた。

「私は色々やり過ぎてみんなに迷惑を掛けているよね?」

クレアのお腹の辺りに顔を埋めながら呟いた。

「そんなことありません。旦那様のお陰でみんな幸せになっていますよ」

クレアは優しく私の頭を撫でながら答えてくれた。

「本当?」

腰に抱き着きながら不安そうにクレアに聞き返す。

「本当です。みんな旦那様に幸せにしてもらってますよ。さあ、今日は早めに休みましょう。私は旦那様の好きな服に着替えます」

クレアは顔を赤らめて答えてくれた。

「本当に!?」

もう一度嬉しそうに尋ねると、恥ずかしそうに頷いてくれた。

はやる気持ちをおさえ、収納から部屋着と一緒にちょい大ケモミミと特大ケモシッポを取り出してお願いする。

「だ、だったら、これを着てほしい!?」

あれ、作戦通り上手くいったはずなのに……。

クレアがジト目で私を睨んでいた。

私は動揺して目を逸らしてしまう。
クレアにどうやってこのスペシャルケモセットを付けてもらおうかと、神様と話した後からずっと考えていた。それが上手くいったと、焦り過ぎたかもしれない。

「これは?」

ちょっと冷たいクレアの問いかけに答える。

「ま、前から、試そうと、つ、作っていたんだ……」

くっ、さらにクレアの視線が冷たくなった気がするぅ!

何とか誤魔化そうと自信作の特大ケモシッポをクレアに押し付ける。

「あっ!」

クレアは驚いたように声を出した。

そうだろう、そうだろう!

特大ケモシッポの芯の部分はスライムシリコンを使い、毛の部分は選りすぐった角ウサギの毛を丁寧に、丁寧にスライム溶液を浸透させ、なめらかでありながらモフモフ感を楽しめるようにしたのだ。

クレアも特大ケモシッポの魅力から逃れられないのか、無意識に特大ケモシッポをモフっている。

チャンスだぁー!

「エ、エッチはしなくていいんだ! それを付けたクレアを抱きしめながら添い寝するだけで、元気が出ると思う。頼む!」

ベッドの上で土下座して頼み込む。

クレアはまだジト目で私を睨んでいるが、特大ケモシッポをモフるのは止めていない。

「こ、今晩だけですよ……」

きたぁーーーーーーーー!

期待と喜びで目をキラキラさせて顔を上げると、クレアが少し頬を赤く染めていた。

「だ、旦那様、後ろを向いていてください!」

「はい!」

すぐに言われた通り、後ろを向く。
テク魔車内だから部屋に余裕はない。だから同じ部屋で着替えるしかないのだ。

背後から着替える音が聞こえる。収納も使っているからそれほど音はしないが、想像をかき立てるぐらいは聞こえていた。

「あっ、……これは」

クレアが呟くのも聞こえ、気分は益々盛り上がる。

「ど、どうですか?」

クレアの尋ねる声に振り向くと、そこには理想のケモミミ女神が降臨していた。

「す、素晴らしい!」

思わず声が漏れてしまう。太腿が丸見えのショートパンツに、おへそが出るくらいのシャツ。恥ずかしいのか特大ケモシッポを、お尻側から手前に持ってきて体を隠すように持つ姿も素晴らしい。

この姿で実物大フィギュアを作りたい!

いや、秘かに1人で愛でる為に1/12スケールで内緒にして作ろう!

「ば、ばかぁ……」

可愛い「ばかぁ」いただきましたぁーーーーー!

クレアは恥ずかしそうにベッドの方に歩いてきた。暴走する欲望をねじ伏せ、優しくクレアを抱きしめ寝かせる。

「そ、添い寝するだけだから」

「ばかぁ……」

暴走は止まりませんでしたけど……、何か?


   ◇   ◇   ◇   ◇


翌朝テク魔車内で朝食を食べていると、ルーナさんがオロオロとしながら謝ってきた。

「き、昨日は余計なことを言ってしまい申し訳ありません!」

ルーナさんの横ではイーナさんが頬を膨らませて怒っている。その表情も可愛いが、今日の私は落ち着いている。

「気にすることはない。旦那様は別の事を考えていただけだ」

そう言いながらクレアがジト目で私を睨んでくるが、私は声を大にして言いたい!

クレアも楽しんだじゃないかぁーーーーー!

特大ケモシッポを間に挟んで添い寝していたが、先にキスしてきたのは、ゲフン。

その後も口ではダメと言いながら、ゲフン。

「ごめんね。色々と考えることもあって、心配させたようだね。もう大丈夫だから」

2人に笑顔で答える。

私の返事を聞いてルーナさんはイーナさんの顔色を確認している。たぶん姉妹で色々と揉めたのだろう。姉妹ではイーナさんのほうが主導権を握っているのだろうか?

「本当にすみませんでした。だからイーナのことを嫌いにならないで下さい!」

うん、ルーナさんは無意識で余計なことを言ってしまうようだね……。

ルーナさんはもう一度謝罪を述べたのだが、余計な事まで言ってしまった。また、イーナさんは顔が真っ赤になり、涙目でルーナさんを睨んでいる。ルーナさんは、なぜ睨まれたのか分かっていないようで、キョトンとイーナさんの顔を見ている。

昨日までの私なら動揺していただろう。昨晩のクレアとの、ゲフン……、今なら冷静に大人の対応ができるはず。

「大丈夫ですよ。イーナさんのことは大好きですから」

大人の余裕のある笑顔で答える。

あれっ、なんか全員が驚いた顔をしている。

んっ、あれれ、やっちまったーーー!

ルーナさんはホッとした表情をしているが、その横でイーナさんは頭から煙を出すほど真っ赤になって俯いている。

私も真っ赤になって俯くのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


テク魔車内には微妙な空気が流れているが、カービン伯爵領に向かって出発した。
出発前にエドワルド様は、何も起きなかったと喜んで私の手を握ってきたが、逆に複雑な気持ちになった。

大通りには朝早くだというのに見送りの人達で溢れていた。獣人族も堂々と大通りに出てきて手を振っている。

本当にいい町になったとホロリとくる。

しかし、歌や踊りを披露するのは止めて欲しい。

門付近で普通に手を振っていた子供たちが、シャニが歌い出すと、まるでフラッシュモブみたいに踊りを始めた。まだ完成度は低いが、それを見た住民たちは大きな声援を掛けている。

ウマーレムとテク魔車は速度を落としゆっくりと進んで行く。門を超えても暫くは踊りながらついてきていた。

凄いけど、やめてくれぇーーー!

教えていないことを次々と披露され、この世界に影響を与えすぎたと、本気で反省しようと思うのだった。
しおりを挟む
感想 154

あなたにおすすめの小説

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...