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第8章

第3話 色々再び?

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パレードのような状態になってグラスニカ侯爵の屋敷に進んで行く。

私としては堅苦しいあの屋敷に行くより、神殿区画に向かいたかった。

第二のケモミミ天国、早く行きたいなぁ~。

頭の中では様々なケモシッポが浮かんでいた。しかし、触ることは許されない、見ることが唯一できることだと思い出し悲しくなる。

禁断症状が出始めてるなぁ~。

自分でもダメだとは理解しているのだ。それでも目の前でイーナさんの尻尾を見ていると……。

今もイーナさんは壁に映った外の様子を、嬉しそうに眺めている。背中を私に向けているために尻尾が私の目に入る。

ウサシッポがピクピクと嬉しそうに……。

視線を感じてそちらを見ると、クレアがジト目で私を見ていた。

くぅ~、ごめんなさい……。

夜の営み用はまだ完成していないが、特大キツネシッポは作ってある。今晩はクレアさんにそれは付けてもらおうと心に決めるのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


グラスニカ侯爵の屋敷に着くとエドワルド様は玄関の前で出迎えてくれていた。前回はあまり見かけなかった奥様など、一家揃っての出迎えである。

エドワルド様は、まずは王子のジョルジュ様に挨拶している。続いてハロルド様とアリスお嬢様にも挨拶していた。アリスお嬢様は挨拶を終えると、同じ年頃のお嬢様と楽しそうに会話を始めている。

エドワルド様は私に気付いて近づいてくると私の手を強く握った。

「アタル殿、前回はグラスニカの改革に協力してもらい、本当に感謝している!」

驚くほど真剣な表情で感謝を述べてくれた。握りしめる手も身体強化が無ければ痛かっただろうと思うほどだ。

こんなに感謝してくれると、嬉しいなぁ~。

前回は途中から煙たがられる気がしていたが、勘違いだったのだろう。

「頼む! 頼むから明日の出発まで何もせんでくれぇ!」

勘違いじゃなかったぁーーー!

「そ、そんな事しないよぉ~、神殿に顔を出すだけで後はテク魔車にいますぅ~」

動揺しながらも不満そうに口を尖らせて答えた。

「し、神殿に行くのか!」

そんなに驚く事かぁーーー!

私がメチャクチャ係わっているから当然気になるし、アーニャさんとか知り合いにも会いたい。それにイーナさんにも獣人の神像を見てもらいたいのだ。

「もちろん一緒に行く!」

いつの間にかジョルジュ様も近くにいた。子供を授かることのできたジョルジュ様は、生命の女神像に感謝の祈りを捧げるつもりなのだろう。

「私もお会いしたいです!」

アリスお嬢様も神殿に行くつもりだ。

まあ、このグラスニカに来て神殿に行かないという選択肢は無いだろう。

このグラスニカでも、神像のある建物は神殿と呼ぶようになった。そして、神殿のある区画を神殿区画、周辺が神殿町と呼ばれることに正式に決まったと聞いていた。

「アタル、大袈裟になるとダメじゃ。町中用のテク魔車を出してくれ」

ハロルド様に言われて町中用のテク魔車を出す。アリスお嬢様やご婦人方がまずは乗り込んだ。仕方ないのでもう1台出すとジョルジュ様やハロルド様、エドワルド様が乗り込む。

溜息を付いてから、自分達用も出して乗り込んだ。

町中用のテク魔車3台が並んで神殿に向かう。ウマーレムの護衛は減ったがそれでも10騎がついてきた。町中に戻っていくとまたパレードのようになってしまった。

凄く大袈裟になっているじゃん!

なんか私だけが責められるのは間違っていると思うのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


町中用のテク魔車が神殿区画に到着すると私は目が点になった。

神殿区画にはエルマイスターの神殿と同じようにイベント用の舞台が作られていた。そして区画内の色々な場所で、子供たちが踊りの練習をしているのが見えたのである。

町中用のテク魔車が神殿区画に入っていくと、子供たちはすぐに踊りを止めて集まってきた。しかし、間違いなく私の知っているあの踊り《ダンス》だった。

テク魔車から降りると子供たちが私達の所に集まってくる。大人たちも居たが跪いたりしないだけで、私に頭を下げて恭しく挨拶をしてくる。

いやいや、領主様だけでなく王子様もいるから、そっちに先に挨拶してぇ~!

ケモシッポに視線が行きそうになるのを必死に堪えながら、そんなことを考えていた。

そしてアーニャさんとドッズさんが早歩きで私に近づいてきた。

「「アタル様、お久しぶりでございます」」

おうふ、私よりも王子が先でしょ!

心の中でそう叫びながらも、普通に挨拶を返す。

「2人もお久しぶりです。今日はこちらのイーナさんをグラスニカの神殿に連れてきました」

他にも2人に会いたかったとかいろいろあるが、獣人族であるイーナさんに獣人の神像を見せたかったのが一番の目的なのだ。

「あなたがイーナさんなのね。ありがとう」

えっ、ありがとう? 知っているの?

「いえ、アーニャ様、私こそ色々と教えて頂いてありがとうございます!」

ええっ、イーナさんも知っているの!?

「止めてちょうだいな、アーニャと呼び捨てで構わないよ!」

アーニャさんらしくない丁寧な話し方と思っていたが、すぐにいつもの感じで話し始めた。

それより2人は初めて会ったのは間違いないようだが、何故お互いを知っている感じで話をしているのだろう。

「アタル様に聞いていた通り、アーニャさんはメリーお母さんと同じ匂いがします。優しくて包み込むような感じで、思わずアーニャお母さんと呼びたくなります」

「そうかい。ならアーニャおばさんとでも呼んでくれて構わないよ」

「はい、アーニャおばさんと呼ばせてください。そしてドッズおじさんと呼んでいいですか?」

「ああ、好きに呼んでくれ」

ドッズさんは短く答えたが、優しい目をして答えていた。

「はい、なんかまた家族が増えたようで嬉しいです!」

イーナさんは本当に嬉しそうに話した。

「ああ、私も可愛い姪っ子ができたようで嬉しいよ」

アーニャさんはそう言いながらイーナさんを優しく抱きしめた。イーナさんもアーニャさんをしっかり抱きしめている。

周りの大人は2人に温かい視線を向け、子供たちは羨ましそうに見ている。

どうなっているのぉーーー!

私だけ状況が分からず混乱する。
もちろんイーナさんがアーニャ夫妻と仲良くすることは大歓迎である。しかし、お互いをなぜ知っているのか分からない。それが気になって落ち着かない。

暫くすると2人は抱き合うのを止め、アーニャさんが一人の少女に声を掛けた。

「シャニ、こちらに来なさい」

アーニャさんが手招きすると、何となく見覚えのある少女が前に出てきた。

あっ、ここに住んでいた少女だ!

その獣人の少女に見覚えがあるのは当然だった。この場所にあった廃屋に住んでいた少女だったのだ。私に健康ドリンクを欲しいと頼み込み、この場所に案内してくれた少女だ。

随分と健康になったのかケモミミとケモシッポがフワフワで、少しの間に顔色も身体つきもだいぶ健康になっていた。

「お久しぶりです、アタル様」

丁寧な話し方で、あの時の雰囲気とは違っている。そして彼女の着ている服を見てまた驚く。

神殿職員見習いの制服!?

でも、神殿職員の見習いは成人しないとなれないはずじゃ……。

私は彼女を10歳から良くて12歳だと思っていたのだ。

「シャニも少し前に成人したから神殿職員の見習いになったのよ」

アーニャさんが説明してくれたのだが、私が彼女に会ったのが成人間際だったことに驚いた。やはり苦しい環境で生きてきたせいで成長が遅れていたのかもしれない。

でも、今は健康そうである。まだそれほど日数は過ぎていないが、彼女が成長したような気になった。

そんな彼女を見ると、自分のしてきたことに間違いはなかったと思える。

「福祉ギルドの神殿職員の見習いになりました。エルマイスターのミルファちゃんに負けないよう、今は歌と踊りを頑張っています!」

なんでそうなるのぉーーー!

よく状況は分からないが、権能の神様の策略に嵌められている気がするぅ~。

神殿アイドルプロジェクトが着々と進行している気配を感じて、私は自分のしてきたことが間違いだったのではと不安になるのであった。
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