上 下
162 / 224
第6章 塩会議

第23話 ついに連行?

しおりを挟む
私はクレアとラナに叱られている。

「旦那様、あれほど幼い子供でも、耳や尻尾は触らないように言いましたよね!?」

ラナが目を三角にして怒っている。

「い、いやぁ、別に触ろうとしたわけではなくて、あれほど数が多いと仕方なく……」

嘘です! 暫く我慢していたので暴走しちゃいました……。

「嘘です! 私は旦那様が狙って触っていたのを見ていました!」

はい、クレアさんの言う通りです……。

ミュウ「浮気はダメぇ~!」
キティ「ダメなのぉ~!」

う、浮気ではありません!

「まあまあ、あれくらいの子供なら気にすることはありませんよ!」

ドッズさん、ナイスフォロー!

「ダメです! この2人のような子供が増えたらどうするのですか!」

おうふ、ミュウとキティが増殖するのは俺も避けたい!

ドッズさんもミュウとキティを見て溜息を付いていた。

「すみません。そのことはまた別な時に話してもらえませんか? 今はこの地に何が起きたのか説明を先にお願いします」

アーニャさんが戸惑いながらもラナとクレアにお願いする。2人も少し私を睨んでから下がってくれた。

助かったぁ~。あれっ、先送りしただけ!?

すぐにまた2人に叱られるだろうと思うと気が重くなる。

「アタル様、なぜ半日でこんな状態になったのですか?」

うん、それは私も自分に問いかけたいくらいだ……。

「え~と、建物撤去は30分ぐらいで終わったんですが、神像が空き地に放置されているのはどうかと思い、雨風を防げるように建物を造ったんです」

ドッズ「30分で全部撤去……」
アーニャ「そ、それは、確かに必要かも……」

何故かドッズさんは変な所に引っかかっているようだ。アーニャさんは納得してくれた。……よね?

「それで建物だけでは寂しいので木を植えたりしたのです」

ドッズ「木を植えた……?」
アーニャ「そ、それは……」

2人は理解できてるかなぁ……。

「木を植えている時に、この地を管理する2人の住まいが必要だと思い出して、この家を建てました。ついでに隣には集会所と言うか、子供が勉強する場所に良いかと思って建物も建てたのです」

んっ、2人が呆然としている?

「「ここが俺(私)達の家!?」」

ああ、そこぉ。

「はい、2人にはこの地と神像を守ってもらうので、近くに住まないと困りますよね? 夜は封鎖したりする必要があると思ったのです」

「私達がこんな立派な家に住んでも良いのですか!?」

アーニャさんが驚いて尋ねてきた。

「はい、ハロルド様にお願いしてグラスニカ侯爵にも許可をもらうつもりです。神罰の問題があるから大丈夫だと思います」

しかし、2人は建物を見える範囲で見回している。ついでなので簡単に説明しよう。

「キッチンには魔道具も設置してあります。他にも灯りの魔道具やトイレの魔道具なんかも設置してあります。家具や生活用品は自分でそろえてくださいね」

「「魔道具……」」

「お子さんを育てるのにも問題ない広さになってますよ」

そう話すとアーニャさんは、驚いた表情から悲しそうな表情に変わり話した。

「私達夫婦に子供はいないのです……」

ドッズさんも悲しそうにアーニャさんの肩に手を置く。アーニャさんはその手の上に手を置いて俯いた。

「えっ、生命の女神の加護を受けたアーニャさんなら、これからボンボン子供ができますよ?」

「「えっ!」」

2人は驚きの表情で私を見つめる。

「あれっ、加護の説明しましたよね。加護を受けたアーニャさんは確実に子供ができますよ。そう私は聞き、ゲフン……、そう私は思いますよ」

あ、危ない! 誰から聞いたか聞かれたら困る所だった。さすがに生命の女神から太鼓判を貰っているとは答えられないだろう。

アーニャ「あなた!」
ドッズ「おまえ!」

うん、2人は自分達の世界に入り込んだようで、その辺は気にしていないようだ。

暫くして2人が落ち着くと、さらに色々この地のことを説明する。
結界の魔道具を設置されていると聞くと驚愕し、それを制御するためのペンダントを2人に渡すと、2人はまるで下賜されるように受け取ってくれた。

さらに周辺の撤去や孤児院の建設も考えているが、それは領主様と相談してからと話した。

まだ完全には理解できていないようだが、後は顔役たちと相談してくれと話した。

説明に疲れたのでラナにお茶を入れてもらい、飲んでいると顔役が尋ねてきた。

「辺境伯様の部下であるサバル殿が、アタル様にお会いしたいと来ていますが?」

ついに恐れていた時が来たようだ!

「わかりました。会いますので中に案内してもらえますか?」

暫くするとサバルさんが笑顔で案内されてきた。

「アタル様、また色々とやっておりますなぁ!」

サバルさんはワクワクするような表情で楽しそうに話した。

もしかして、ハロルド様は悪くない反応!?

「ですがハロルド様達は状況の説明と理由も教えて欲しいそうです。すみませんが一緒にグラスニカ侯爵の屋敷に来てもらえますか?」

あまり楽しい誘いじゃないよね……。

「あのぉ~、ハロルド様は怒ってましたか?」

「う~ん、まあ、いつもと同じ感じですな。お怒り半分、諦め半分と言ったところです。また、いつものお説教で終わりますよ。はははは」

くっ、お説教は間違いないらしい。

いや、いつものお説教で済めば良かったのでは!?

そう考えると重い気持ちが軽くなった気がする。

思わず両手の手首を合わせて、拘束されようとする。冗談のつもりだったが、ドッズさんの顔色が変わる。

「アタル様、私がアタル様を縛ったり拘束したりすることは絶対にありません。それに特に今回そんなことをすれば、暴動が起きそうですよ」

うん、ドッズさん落ち着こうか……。

私はサバルさんの乗ってきたウマーレムの後ろに乗って、子供たちに手を振りながら領主屋敷に連行されていくのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


グラスニカ侯爵の屋敷に着くと、そのまま会議室のような部屋に通された。正面にはグラスニカ侯爵が真ん中に座り、左右にハロルド様とエイブル伯爵が座っていた。

うん、さすが他領でやり過ぎたかもしれないなぁ……。

正面の3人は深刻な表情で私を見ている。

「アタル、何をしたのか詳しく話してくれるかのぉ」

おっ、なんかいつものハロルド様より優しい感じがするぅ!

少しホッとしてストレージから地図を出した。これは自分で作成した地図だ。周辺の老朽化した建物も書かれており、孤児院建設の許可をもらうために作成しておいたのだ。

「まずはこれを見てください」

そう言って何を造ったのか説明していく。ハロルド様以外の2人は、信じられないといった感じで聞いていた。

「ついでに周辺の老朽化した建物も撤去しようと思ったのですが、まだ退去が終わっていない可能性もありましたし、グラスニカ侯爵様の許可をいただいたほうが良いと思いまして自重しました!」

ふふふっ、自重したと言えるのが少し嬉しい!

「ほう、アタルが自重したのか?」

「はい、自重しました!」

「バカモノーーー! どこが自重したじゃ。なぜ建物を建てる前に確認しない! 彼らに頼まれたのは撤去だけじゃろうがぁ!」

うひぃ、いつもより怒ってるぅ!

「待って下さい! 説明を忘れていました。あの神像にはそれぞれの神の加護が宿ってしまったのです。放置すると神罰が起きる危険があったので、安全のためにも建物は必要だったんです!」

「神罰……」

グラスニカ侯爵が呆然と呟いた。

「加護! し、神罰とはどういうことじゃ!?」

興奮するハロルド様を宥めながら、加護の効果や神罰について説明した。

説明が終わると3人は呆然としている。

「加護の効果はともかく、神罰のことを何とかしようと建物を用意しただけです。もしグラスニカ侯爵の方で何とかするというのならば、建物はすぐに撤去はしますよ」

ちょっと意地悪な感じで聞いてみた。

「待て、持ってくれ、……建物はそのままで問題ない。いや、そのままにして欲しい。……しかし、そんなことが……」

グラスニカ侯爵は焦りながら了承してくれたようだ。まだ呆然としているが……。

「アタル、お主は神像を創れるのか?」

「いえ、故郷の像を参考に造っただけです。先程も説明しましたが、それを信じてたくさんの人があの像に祈りを捧げた結果だと、私は思ってます!」

はい嘘です……。

「あの地は聖地のようになりそうですね……」

エイブル伯爵が呟くと、それを聞いたグラスニカ侯爵は顔色を変えて聞いてくる。

「わ、私は何をすれば良い! いや、それ以上に何をしてはダメなんだ!」

え~と、それは私にもわかりかねますが……。

取り敢えずそれらしい説明を必死に考えるのであった。
しおりを挟む
感想 154

あなたにおすすめの小説

ある化学者転生 記憶を駆使した錬成品は、規格外の良品です

黄舞
ファンタジー
祝書籍化ヾ(●´∇`●)ノ 3月25日発売日です!! 「嫌なら辞めろ。ただし、お前みたいな無能を使ってくれるところなんて他にない」  何回聞いたか分からないその言葉を聞いた俺の心は、ある日ポッキリ折れてしまった。 「分かりました。辞めます」  そう言って文字通り育ててもらった最大手ギルドを辞めた俺に、突然前世の記憶が襲う。  前世の俺は異世界で化学者《ケミスト》と呼ばれていた。 「なるほど。俺の独自の錬成方法は、無意識に前世の記憶を使っていたのか」  通常とは異なる手法で、普通の錬金術師《アルケミスト》では到底及ばぬ技能を身に付けていた俺。  さらに鮮明となった知識を駆使して様々な規格外の良品を作り上げていく。  ついでに『ホワイト』なギルドの経営者となり、これまで虐げられた鬱憤を晴らすことを決めた。  これはある化学者が錬金術師に転生して、前世の知識を使い絶品を作り出し、その高待遇から様々な優秀なメンバーが集うギルドを成り上がらせるお話。 お気に入り5000です!! ありがとうございますヾ(●´∇`●)ノ よろしければお気に入り登録お願いします!! 他のサイトでも掲載しています ※2月末にアルファポリスオンリーになります 2章まで完結済みです 3章からは不定期更新になります。 引き続きよろしくお願いします。

人類最強は農家だ。異世界へ行って嫁さんを見つけよう。

久遠 れんり
ファンタジー
気がつけば10万ポイント。ありがとうございます。 ゴブリン?そんなもの草と一緒に刈っちまえ。 世の中では、ダンジョンができたと騒いでいる。 見つけたら警察に通報? やってもいいなら、草刈りついでだ。 狩っておくよ。 そして、ダンジョンの奥へと潜り異世界へ。 強力無比な力をもつ、俺たちを見て村人は望む。 魔王を倒してください? そんな事、知らん。 俺は、いや俺達は嫁さんを見つける。それが至上の目的だ。 そう。この物語は、何の因果か繋がった異世界で、嫁さんをゲットする物語。

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

転封貴族と9人の嫁〜辺境に封じられた伯爵子息は、辺境から王都を狙う〜

HY
ファンタジー
主人公は伯爵子息[レインズ・ウィンパルト]。 国内外で容姿端麗、文武両道と評判の好青年。 戦場での活躍、領地経営の手腕、その功績と容姿で伯爵位ながら王女と婚約し、未来を約束されていた。 しかし、そんな伯爵家を快く思わない政敵に陥れられる。 政敵の謀った事故で、両親は意識不明の重体、彼自身は片腕と片目を失う大ケガを負ってしまう。 その傷が元で王女とは婚約破棄、しかも魔族が統治する森林『大魔森林』と接する辺境の地への転封を命じられる。 自身の境遇に絶望するレインズ。 だが、ある事件をきっかけに再起を図り、世界を旅しながら、領地経営にも精を出すレインズ。 その旅の途中、他国の王女やエルフの王女達もレインズに興味を持ち出し…。 魔族や他部族の力と、自分の魔力で辺境領地を豊かにしていくレインズ。 そしてついに、レインズは王国へ宣戦布告、王都へ攻め登る! 転封伯爵子息の国盗り物語、ここに開幕っ!

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

処理中です...