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第5章 公的ギルド
閑話7 レベッカの不満
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アタルさんがラナとクレアと結婚して数日後に、ラナが私の所に尋ねてきた。
応接室でお茶を飲みながら話をする。
「ラナ、アタルさんとの結婚生活はどうかしら?」
「は、はい、こんなに幸せで大丈夫なのか不安になるぐらいです」
ラナは落ち着かない様子で話をする。
エルマイスター家のメイドをしていたラナは、客として応接室でお茶を飲むのに緊張しているのね。
アタルさんと結婚したから、すでに私との主従関係は無くなっているのだが、すぐには慣れないのかしら。ふふふっ、慣れてもらわないと困るわね。
「それで今日はどうしたのかしら?」
「………」
ラナは話し辛そうにしている。
「ラナ、もうメイドではないのだから遠慮する必要はないのよ。アタルさんの奥さんなのだから堂々としていなさい。私としては姉妹のように仲良くして欲しいわ」
そんなに簡単な事ではないと私も理解している。
でも、アタルさんと良好な関係を続けたいエルマイスター家としては、ラナとの関係は非常に重要だ。それこそ、娘のアリスを嫁に出しても繋がりを強化したいと思っていたぐらいである。
「あ、ありがとうございます。私は結婚など諦めていたので、結婚生活など考えていなかったので、結婚前にレベッカ様に助言を頂いて本当に助かりました」
助言をしたといっても大半が夜の生活の事だったわね。貴族の妻になるのとは違うから、私が助言できることはそれぐらいしかなかったのよ。
貴族の妻にとって大事なのは子供を作ることで、幼いころから貴族家に伝わる独自の房中術を教育されている。その房中術の一部を基本的な知識と一緒にラナやクレアにも教えたのである。
「ふふふっ、私が教えられることは夜の生活に関することが多かったから、役に立ったのなら良かったわ」
「………」
えっ、役に立たなかったの!?
「な、何か問題があったのかしら?」
質問すると、ラナは頬を赤くしている。すぐにメイドに部屋を出るように指示して、ふたりっきりになると質問する。
「さあ、話してちょうだい」
ラナは恥ずかしそうに話し始めた。
えっ、聞いた話と違う!?
えっ、一晩に何回も!?
えっ、体が溶け合うような感覚!?
えっ、途中でポーションを!?
えっ、気を失ってしまったぁ!?
えっ、その翌朝にも!?
えっ、それを毎晩交代で!?
えっ、毎回それなの!?
話しを聞いて混乱してしまう。
確かにラナとクレアは初めてだから、感覚的なことは何とも言えないが、同じような感想だとすると少し信憑性はある。
それに初めては感覚的には気持ち良かったけど、肉体的には痛みが後を引いた記憶がある。人により多少の痛みは違うし、翌日にもその痛みがあると聞いていた。
でも、ポーションを使ったから……。
最中にポーションを飲ませるのもアタルさんらしいが、結果的に痛みがそれで治まったと理由は考えられる。
一晩に何回のするのは聞いたこともあるし、主人も最初の頃は複数回していたが、ラナの話す数を考えると驚きでしかない。
それも毎晩となると……。
アタルさんは夜も規格外なのね!
最後にアリスを産んでからは、お情け程度しか主人は相手をしてくれなかった。
10年前にお義父様が国の将軍職を辞めて領地に戻って来てから、代わりに主人は王都に行き、宰相であるモーシャスティン公爵の右腕として働いている。
アリスが生まれた時には、既に側室が1人と妾が数人いた。その後も側室や妾は増やしていたが、私は領地でお義父様と領地の運営と子供たちの教育をしていた。
それでも年末年始は王都で過ごすことになり、最後に王都に行ったのは2年近く前になる。アリスが今年の年末から、王都の学園に行くから去年は王都に来なくて良いと言われたのだ。
2年前に王都に行った時は1ヶ月以上も滞在したのに、主人と閨を共にしたのは行った日と領地に戻る前日だけであった。
暫く女として満足していない私には、ラナの話は刺激が強すぎる。
う、羨ましいわぁ。
でも、今年の年末は私もアリスと王都に行き、王都で生活することになる。
そなれば今よりは女としての生活はできるだろう。
「アタルさんも最初だけかもしれないわ。少しずつ落ち着いてくると思うから、あなたも女性として楽しみなさい!」
自分のことは関係ないので忘れて、ラナにアドバイスした。
◇ ◇ ◇ ◇
その翌日にラナが倒れたと聞いたときは驚いたが、すぐに回復したので安心する。
まさか、夜が激しすぎて倒れたのではないわよね?
確認の必要があるわ!
しかし、忙しさの中で確認がする余裕がなかった。それにラナやクレアは結婚してから、前より健康的で綺麗になった気がする。
お義父様の依頼でアタルさんがダンジョン調査に行くことなった。そんな時に王都の主人から手紙が届いたのだ。
私はその手紙を読むと落胆してしまう。
貴族家の正室なら仕方ないと自分に言い聞かせるが、それでも悲しい事は悲しいのよ。
昼間は何とかいつもと同じ感じでやり過ごすが、さすがに夜ひとりになると涙を抑えられない。
翌日にお義父様に呼び出されて応接室で話すことになった。同席するのはセバスだけだった。
「レベッカ、大丈夫か? 儂の手紙にもあいつから報告を受けているぞ」
お義父様にそう言われて私は我慢できなくなり、お義父様に不満をぶつける。
「今になって新しく側室を迎えるのは納得できません! いえ、理解はできているんです。政治的な思惑があることは、モーシャスティン公爵が紹介したということで理解はできています。
でも、感情としては納得などできません!」
ハロルドもさすがに今回の件はレベッカに申し訳ないという気持ちもある。
自分と違い息子は女にはだらしないという思いもあり、本当に政治的な思惑だけで側室を新たに増やすのか、ハロルドにも疑う気持ちもある。
「それだけなら、まだ許せます! でも、グスッ、アリスと一緒に王都に来る必要はないというのは、絶対に納得できません!」
ハロルドは息子からの手紙に、レベッカを領地に残す事も書かれていたので知っていたし、その理由も手紙には書いてあり、納得するところもあった。
「じゃが、領地の事を考えると、儂が王都に行っている間の事を考えると、レベッカが残るのは仕方ないとも思うがのぅ……」
「だったら誰か王都から領地に送り込めば良いじゃないですか! これでは私を邪魔な……」
レベッカは最後には泣き出して言葉にならなくなった。
レベッカもそれが最良の案であることは理解している。王都に居る側室3人は領地を任せられるタイプじゃないし、エルマイスター家の人間が誰も居なくなるのを避けるのも理解できる。
でも、納得できない!
クレアやラナの幸せそうな姿を見ると、余計にそう考えてしまう。
「レベッカ、息子《あやつ》ばかり好き勝手させないで、王都の夫人達と同じように誰か囲ったらどうだ?」
ハロルドとしては、すでに子供を産んでアリスも手が離れるし、貴族家ではよくあることだと考えて提案する。息子の行いに対する償いでもあるし、レベッカの事は娘のように大切に思っている。
だからこそ、レベッカには幸せになって欲しいとハロルドは思ったのだ。
レベッカはハロルドの提案を聞いても、主人以外の男と関係を持つことに抵抗があった。
男として魅力がある相手となると、それなりに優秀な人材になってしまうし、立場的に囲う事になれば、その人物を優遇することは出来ないし、逆に閑職に移動させることも必要になる。
そこまでして……、考えられない……。
「少し考えさせてください……」
男を囲うつもりはないが、今は結論を出したくなかった。
「うむ、レベッカの判断に儂は協力を惜しまんぞ!」
レベッカは、ハロルドの優しい申し出は嬉しかったが、それすらも逆に悲しかった……。
◇ ◇ ◇ ◇
レベッカが落ち込みながらも領政の仕事をしていると、ラナが訪ねて来た。
アタルさんはダンジョン調査に行っているはずだけど、何かあったのかしら?
いつものように応接室にラナを招き入れ、お茶を飲みながら話をすることにした。ラナの姿を見ると、非常に悩んでいることに気付いてメイドを下がらせる。
「何かあったの?」
ラナは恥ずかしそうにしながらも、真剣な表情で話し始める。
「この前話したことですが、旦那様はおさまる気配がありません。それどころか益々激しくなってきて、このままでは私とクレアは仕事ができません」
ちょっとぉ、今の私には酷な話なんだけどぉ。
しかし、ラナの真剣な表情を見ると、たぶん尋常じゃないのだろう。
アタルさんは本当に色々な意味で常識外れなんだろう。
「もし、どちらかが妊娠して、旦那様の相手をひとりですることになったら……。だから、メアベルが出産したら、旦那様の妾にしようと思っています」
えっ、そこまでの話なの!?
まだ1ヶ月も経っていないのに、さすがに信じられない話だ。
「べ、別にメアベルじゃなくても、妾を適当に見付ければ大丈夫でしょ。それなら、すぐにでも見つけられるだろうし、アタルさんの収入を考えれば妾が何人いても大丈夫よね」
「ダメなんです!」
私の提案にラナは予想以上に強く反応してきた。
嫉妬? でもメアベルを?
そこまで妾を否定する理由が思いつかない。
「どういうことなの? 妾をダメと言いながら、メアベルを妾にすると言うし、まるで隠さないとダメな事でもあるみたいじゃない」
「そ、それは……」
言い淀むラナをそれでは相談に乗れないと説明して、絶対に秘密を守るからと説得すると、ラナは少しずつ話してくれた。
えっ、魔エッチって何よぉ!?
えっ、溶け合うようなエッチが魔エッチなの!?
えっ、魔エッチすると魔力量が増える!?
えっ、先日倒れたのは魔力量が増えすぎたから!?
えっ、気を失うのは魔エッチのせい!?
えっ、気を失う事が無くなると魔エッチが複数回になる!?
えっ、魔エッチを複数回すると翌日は碌に頭が働かない!?
魔エッチと言うのはアタルさんがそう言っているらしい。お互いの魔力を混ぜ合うようにしながらエッチするというのだ。
確かにこれは秘密にしないと危険だわ!
エッチするだけで魔力量が増えると噂が広まれば、貴族家のだけじゃなく、王家ですら何かしら話をしてくる可能性が高い。
秘密を守れるような妾として考えると、確かにメアベルは悪くない選択だと思う。
「その話は間違いないのね?」
「はい!」
そうなると魔力量を増やしたい女性を、アタルさんに紹介するしかないのかぁ。
そうなると女性兵士は全員望む気がするし、私だって魔力量は増やしたい。
あれ、私……。
女性を紹介するとしても、もう少し確認が必要じゃないかな……。
私も魔力は増やしたい……。
アタルさんならお互いに都合は良いかしら……?
地下通路を使えば目立たないし……。
ラナに何度も話を聞いて興味があるし……。
ハッキリ言って、アタルさんを食べてみたい!
それからラナに検証がもっと必要な事や、私なら秘密を守れること、さらに私の今の状況を話すと、ラナも乗り気になってくれた。
もちろんクレアの同意も必要なので、ダンジョンからアタルさん達が戻ったら、先にクレアに話すことにした。
すぐさま、お義父様とセバスにも話をすると、アタルさんの非常識なエッチに呆れながらも、私への同情や都合が良いことも多かったので順調に話は進んだ。
あとはダンジョンから戻ったアタルさんを説得するだけである。
応接室でお茶を飲みながら話をする。
「ラナ、アタルさんとの結婚生活はどうかしら?」
「は、はい、こんなに幸せで大丈夫なのか不安になるぐらいです」
ラナは落ち着かない様子で話をする。
エルマイスター家のメイドをしていたラナは、客として応接室でお茶を飲むのに緊張しているのね。
アタルさんと結婚したから、すでに私との主従関係は無くなっているのだが、すぐには慣れないのかしら。ふふふっ、慣れてもらわないと困るわね。
「それで今日はどうしたのかしら?」
「………」
ラナは話し辛そうにしている。
「ラナ、もうメイドではないのだから遠慮する必要はないのよ。アタルさんの奥さんなのだから堂々としていなさい。私としては姉妹のように仲良くして欲しいわ」
そんなに簡単な事ではないと私も理解している。
でも、アタルさんと良好な関係を続けたいエルマイスター家としては、ラナとの関係は非常に重要だ。それこそ、娘のアリスを嫁に出しても繋がりを強化したいと思っていたぐらいである。
「あ、ありがとうございます。私は結婚など諦めていたので、結婚生活など考えていなかったので、結婚前にレベッカ様に助言を頂いて本当に助かりました」
助言をしたといっても大半が夜の生活の事だったわね。貴族の妻になるのとは違うから、私が助言できることはそれぐらいしかなかったのよ。
貴族の妻にとって大事なのは子供を作ることで、幼いころから貴族家に伝わる独自の房中術を教育されている。その房中術の一部を基本的な知識と一緒にラナやクレアにも教えたのである。
「ふふふっ、私が教えられることは夜の生活に関することが多かったから、役に立ったのなら良かったわ」
「………」
えっ、役に立たなかったの!?
「な、何か問題があったのかしら?」
質問すると、ラナは頬を赤くしている。すぐにメイドに部屋を出るように指示して、ふたりっきりになると質問する。
「さあ、話してちょうだい」
ラナは恥ずかしそうに話し始めた。
えっ、聞いた話と違う!?
えっ、一晩に何回も!?
えっ、体が溶け合うような感覚!?
えっ、途中でポーションを!?
えっ、気を失ってしまったぁ!?
えっ、その翌朝にも!?
えっ、それを毎晩交代で!?
えっ、毎回それなの!?
話しを聞いて混乱してしまう。
確かにラナとクレアは初めてだから、感覚的なことは何とも言えないが、同じような感想だとすると少し信憑性はある。
それに初めては感覚的には気持ち良かったけど、肉体的には痛みが後を引いた記憶がある。人により多少の痛みは違うし、翌日にもその痛みがあると聞いていた。
でも、ポーションを使ったから……。
最中にポーションを飲ませるのもアタルさんらしいが、結果的に痛みがそれで治まったと理由は考えられる。
一晩に何回のするのは聞いたこともあるし、主人も最初の頃は複数回していたが、ラナの話す数を考えると驚きでしかない。
それも毎晩となると……。
アタルさんは夜も規格外なのね!
最後にアリスを産んでからは、お情け程度しか主人は相手をしてくれなかった。
10年前にお義父様が国の将軍職を辞めて領地に戻って来てから、代わりに主人は王都に行き、宰相であるモーシャスティン公爵の右腕として働いている。
アリスが生まれた時には、既に側室が1人と妾が数人いた。その後も側室や妾は増やしていたが、私は領地でお義父様と領地の運営と子供たちの教育をしていた。
それでも年末年始は王都で過ごすことになり、最後に王都に行ったのは2年近く前になる。アリスが今年の年末から、王都の学園に行くから去年は王都に来なくて良いと言われたのだ。
2年前に王都に行った時は1ヶ月以上も滞在したのに、主人と閨を共にしたのは行った日と領地に戻る前日だけであった。
暫く女として満足していない私には、ラナの話は刺激が強すぎる。
う、羨ましいわぁ。
でも、今年の年末は私もアリスと王都に行き、王都で生活することになる。
そなれば今よりは女としての生活はできるだろう。
「アタルさんも最初だけかもしれないわ。少しずつ落ち着いてくると思うから、あなたも女性として楽しみなさい!」
自分のことは関係ないので忘れて、ラナにアドバイスした。
◇ ◇ ◇ ◇
その翌日にラナが倒れたと聞いたときは驚いたが、すぐに回復したので安心する。
まさか、夜が激しすぎて倒れたのではないわよね?
確認の必要があるわ!
しかし、忙しさの中で確認がする余裕がなかった。それにラナやクレアは結婚してから、前より健康的で綺麗になった気がする。
お義父様の依頼でアタルさんがダンジョン調査に行くことなった。そんな時に王都の主人から手紙が届いたのだ。
私はその手紙を読むと落胆してしまう。
貴族家の正室なら仕方ないと自分に言い聞かせるが、それでも悲しい事は悲しいのよ。
昼間は何とかいつもと同じ感じでやり過ごすが、さすがに夜ひとりになると涙を抑えられない。
翌日にお義父様に呼び出されて応接室で話すことになった。同席するのはセバスだけだった。
「レベッカ、大丈夫か? 儂の手紙にもあいつから報告を受けているぞ」
お義父様にそう言われて私は我慢できなくなり、お義父様に不満をぶつける。
「今になって新しく側室を迎えるのは納得できません! いえ、理解はできているんです。政治的な思惑があることは、モーシャスティン公爵が紹介したということで理解はできています。
でも、感情としては納得などできません!」
ハロルドもさすがに今回の件はレベッカに申し訳ないという気持ちもある。
自分と違い息子は女にはだらしないという思いもあり、本当に政治的な思惑だけで側室を新たに増やすのか、ハロルドにも疑う気持ちもある。
「それだけなら、まだ許せます! でも、グスッ、アリスと一緒に王都に来る必要はないというのは、絶対に納得できません!」
ハロルドは息子からの手紙に、レベッカを領地に残す事も書かれていたので知っていたし、その理由も手紙には書いてあり、納得するところもあった。
「じゃが、領地の事を考えると、儂が王都に行っている間の事を考えると、レベッカが残るのは仕方ないとも思うがのぅ……」
「だったら誰か王都から領地に送り込めば良いじゃないですか! これでは私を邪魔な……」
レベッカは最後には泣き出して言葉にならなくなった。
レベッカもそれが最良の案であることは理解している。王都に居る側室3人は領地を任せられるタイプじゃないし、エルマイスター家の人間が誰も居なくなるのを避けるのも理解できる。
でも、納得できない!
クレアやラナの幸せそうな姿を見ると、余計にそう考えてしまう。
「レベッカ、息子《あやつ》ばかり好き勝手させないで、王都の夫人達と同じように誰か囲ったらどうだ?」
ハロルドとしては、すでに子供を産んでアリスも手が離れるし、貴族家ではよくあることだと考えて提案する。息子の行いに対する償いでもあるし、レベッカの事は娘のように大切に思っている。
だからこそ、レベッカには幸せになって欲しいとハロルドは思ったのだ。
レベッカはハロルドの提案を聞いても、主人以外の男と関係を持つことに抵抗があった。
男として魅力がある相手となると、それなりに優秀な人材になってしまうし、立場的に囲う事になれば、その人物を優遇することは出来ないし、逆に閑職に移動させることも必要になる。
そこまでして……、考えられない……。
「少し考えさせてください……」
男を囲うつもりはないが、今は結論を出したくなかった。
「うむ、レベッカの判断に儂は協力を惜しまんぞ!」
レベッカは、ハロルドの優しい申し出は嬉しかったが、それすらも逆に悲しかった……。
◇ ◇ ◇ ◇
レベッカが落ち込みながらも領政の仕事をしていると、ラナが訪ねて来た。
アタルさんはダンジョン調査に行っているはずだけど、何かあったのかしら?
いつものように応接室にラナを招き入れ、お茶を飲みながら話をすることにした。ラナの姿を見ると、非常に悩んでいることに気付いてメイドを下がらせる。
「何かあったの?」
ラナは恥ずかしそうにしながらも、真剣な表情で話し始める。
「この前話したことですが、旦那様はおさまる気配がありません。それどころか益々激しくなってきて、このままでは私とクレアは仕事ができません」
ちょっとぉ、今の私には酷な話なんだけどぉ。
しかし、ラナの真剣な表情を見ると、たぶん尋常じゃないのだろう。
アタルさんは本当に色々な意味で常識外れなんだろう。
「もし、どちらかが妊娠して、旦那様の相手をひとりですることになったら……。だから、メアベルが出産したら、旦那様の妾にしようと思っています」
えっ、そこまでの話なの!?
まだ1ヶ月も経っていないのに、さすがに信じられない話だ。
「べ、別にメアベルじゃなくても、妾を適当に見付ければ大丈夫でしょ。それなら、すぐにでも見つけられるだろうし、アタルさんの収入を考えれば妾が何人いても大丈夫よね」
「ダメなんです!」
私の提案にラナは予想以上に強く反応してきた。
嫉妬? でもメアベルを?
そこまで妾を否定する理由が思いつかない。
「どういうことなの? 妾をダメと言いながら、メアベルを妾にすると言うし、まるで隠さないとダメな事でもあるみたいじゃない」
「そ、それは……」
言い淀むラナをそれでは相談に乗れないと説明して、絶対に秘密を守るからと説得すると、ラナは少しずつ話してくれた。
えっ、魔エッチって何よぉ!?
えっ、溶け合うようなエッチが魔エッチなの!?
えっ、魔エッチすると魔力量が増える!?
えっ、先日倒れたのは魔力量が増えすぎたから!?
えっ、気を失うのは魔エッチのせい!?
えっ、気を失う事が無くなると魔エッチが複数回になる!?
えっ、魔エッチを複数回すると翌日は碌に頭が働かない!?
魔エッチと言うのはアタルさんがそう言っているらしい。お互いの魔力を混ぜ合うようにしながらエッチするというのだ。
確かにこれは秘密にしないと危険だわ!
エッチするだけで魔力量が増えると噂が広まれば、貴族家のだけじゃなく、王家ですら何かしら話をしてくる可能性が高い。
秘密を守れるような妾として考えると、確かにメアベルは悪くない選択だと思う。
「その話は間違いないのね?」
「はい!」
そうなると魔力量を増やしたい女性を、アタルさんに紹介するしかないのかぁ。
そうなると女性兵士は全員望む気がするし、私だって魔力量は増やしたい。
あれ、私……。
女性を紹介するとしても、もう少し確認が必要じゃないかな……。
私も魔力は増やしたい……。
アタルさんならお互いに都合は良いかしら……?
地下通路を使えば目立たないし……。
ラナに何度も話を聞いて興味があるし……。
ハッキリ言って、アタルさんを食べてみたい!
それからラナに検証がもっと必要な事や、私なら秘密を守れること、さらに私の今の状況を話すと、ラナも乗り気になってくれた。
もちろんクレアの同意も必要なので、ダンジョンからアタルさん達が戻ったら、先にクレアに話すことにした。
すぐさま、お義父様とセバスにも話をすると、アタルさんの非常識なエッチに呆れながらも、私への同情や都合が良いことも多かったので順調に話は進んだ。
あとはダンジョンから戻ったアタルさんを説得するだけである。
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