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第4章 ダンジョン

第4話 驚愕の事実

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クレアに引きずられるようにリビングに到着すると、ラナがソファで横になっているのが目に入る。

それまでの震えなど関係なく、跳び付く様にラナの横に移動する。

ラナは少し具合が悪そうにしながらも、目を開けて私に話しかけてくる。

「旦那様、驚かしてすみません。少し眩暈がしただけで、エマたちが騒いだだけです。もう大丈夫ですから」

そう言って起き上がろうとしたが、また眩暈が起きたようで脱力したように私に倒れて来た。

私はラナを抱きしめると叱りつける。

「む、無理をするんじゃない! ラナにもしもの事が有ったら、私は……」

自分でも驚くほど簡単に涙が溢れてくる。地球に居た時には人に涙を見せたことは一度もなかったはずだ。

「ラナ、旦那様に心配を掛けてはダメだ! 大人しく休んでよぉ……」

クレアもラナに強めに言いながら、最後は涙ぐんでしまう。

私はゆっくりとラナをソファに寝かして、額に手を当てる。

うん、熱は無いようだ!

転子『アタル、鑑定で確認すれば良いのじゃ……』

何となく呆れた感じの転子からの神託だった。

言われてみればその通りだ……。

動揺して鑑定や解析で診断できることを忘れていた。

鑑定すると名前の横に『魔力酔い(微)』と表示される。

えっ、なんで!?

『魔力酔い(微)』と表示されているのを見て、重篤な病気でない事でホッとしたが、理由が全く分からない。

この屋敷の魔力濃度は高くならないように、地下の魔力が溢れないようにしたはずである。実際に魔力感知を使っても、魔力濃度が濃くなっていることはない。

それに他の人間には影響が出ていないのである。

も、もしかして、何処か魔力が溢れて濃くなっている場所があるのか?

「ラナは屋敷のどこで気分が悪くなったんだ?」

エマやメイドに質問すると、エマが答えてくれた。

「台所で昼食の相談をしていましたら、ラナ様が突然ふらついたので、皆でラナ様をここに運んだのです」

そう言えば料理人の二人も心配そうにラナの様子を見ている。

台所に問題があれば、他の者にも症状が出ても不思議ではない。それどころか料理人の二人が先に症状が出ているはずだ。

料理人の二人を鑑定しても特に問題は無かった。

必死に原因を考えていると、神託の音がまた聞こえて来た。

まぁーこ『魔力酔いだから調べてみたら、彼女の魔力量(MP)が異常に増えているわ。数日前の数十倍、それも百倍近くMP最大値が増えているのよ。急激にMP最大値が増えて、魔力が大量に体に浸透し始めた為に、体の順応力を超えたことで魔力酔いになったのね』

魔の女神のまぁーこが、魔力酔いの原因を教えてくれた。

百倍近く!?

アタル『ラナは、だ、大丈夫なのか?』

まぁーこ『徐々に魔力が体に馴染んでくるから、彼女は一晩寝れば問題ないはずよ。それよりも問題は急激にMP最大値が増えたことよぉ。ちょっと信じられない増え方なのよねぇ。アタルさん、何かした?』

一晩寝れば問題無いと言われホッとする。表情に出てしまったのかクレアが声を掛けてくる。

「ラナは大丈夫なんですか?」

「あぁ、ただの魔力酔いだよ。それに軽度の魔力酔いだから心配しなくて大丈夫だよ」

リビングにホッとした雰囲気が広がる。

「まだ、この屋敷は魔力が濃いのかしら?」

レベッカ夫人が心配そうに聞いてくる。その質問を聞いて使用人たちも心配そうな表情になる。

「いやそれは無いですね。確認しても魔力は他と変わらないか、魔道具が多いので薄いぐらいですね」

またホッとした雰囲気に戻る。

「じゃあ、何故ラナが魔力酔いになったのかしら?」

それはMP最大値が増えたせいだけど、その原因が分からないと説明できないかなぁ?

「その事も含めてもう少し調べますね」

そう言ってラナの額に手を置く。
額に手を置く必要などないが、調べてます感が出るだろう。

しかし、なぜMP最大値が増えたのだろう?

魔力に関するラナとの関係を考えてみる。

アタル『ミスリルやオリハルコンが影響を与えることは有りますか?』

まぁーこ『魔法金属にそんな影響力は無いわ。もちろんそれを使った魔道具も関係ないわよ』

それ以外は特に思いつく事は無い。さらに結婚してからのラナの行動を考えても、自分の知る限りそんな事は無いはずだ。

ふとクレアの顔が浮かび、何となくクレアの鑑定もしてみる。特に変な所は……あった!

クレアのMP最大値も異様に増えているのだ。魔力酔いにはなっていないし、ラナよりMP最大値は元々多かったのだが、それでも数十倍にはなっているのである。

嫌な予感がしてまぁーこに聞いてみる。

アタル『わ、私と、そのぉ、……関係を結ぶと、MP最大値が増えるとかありますか?』

まぁーこ『それはあり得ないわね。転生者と言ってもこの世界の人間と同じだし、神々の寵愛や祝福があったとしても、そのような事はあり得ないわ』

恥ずかしかったが聞いて良かった。そんな事になれば、今後の夫婦生活に支障が出る危険もあったのだ。

んっ、神々の寵愛? 祝福?

なんか不穏なキーワードだが今は関係ないので放置しよう。

でも、夫婦の営みに影響がなくてよかったぁ。あっ!

『夫婦の営み』×『魔力』このキーワードで嫌な予感がする。頭の中で昨晩の最後の営みがフラッシュバックする。

『………』

なんで無言の神託ぅ~! 昨晩の営みを頭の中から覗いたなぁーーー!

まぁーこ・みこと♪・転子『『『それね(じゃ)』』』

No《ノオ》ォォォォォーーー!

あれがもう出来ないのぉぉぉぉぉ!

「旦那様どうしました! もしかしてラナは危険な状況なのですか!?」

私が絶望の表情をしたので、クレアが心配して声を掛けて来た。

目を開けてラナを見ると不安そうな表情をしている。部屋の雰囲気も緊迫感に包まれていた。

「だ、大丈夫だよ。ラナに問題はないから」

ラナに問題は無いが、夜の営みに問題はあるぅ~。

「旦那様、本当ですか?」

ラナが不安そうに聞いてきた。

ダメだ! ダメだ! ラナやクレアを不安にさせてしまった!

それに二人にも係わる話だから、正直に説明しないとダメだよなぁ?

ここでは説明は出来ない。

「すみません。特に大きな問題はありませんが、少し夫婦だけで話をしたいと思います。ラナ、悪いけど部屋に抱き上げて運ぶよ?」

まだ、不安そうなラナをお姫様抱っこすると、クレアと一緒に2階に向かう。

リビングを出る時にエマにお願いする。

「話はそんなに時間は掛からないから、ハロルド様達に昼食を出して下さい。ハロルド様、レベッカ夫人、セバスさん、少しお時間を頂きます」

ハロルド様達に挨拶をしたが、驚いた様子で反応がなかった。気にしている余裕がないので、そのままリビングを後にするのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


2階に移動しながら神託アプリで質問する。

アタル『今後は止めた方が良いですよね』

転子『何を止めるのじゃ? ニヤァ』

みこと♪『そうですねぇ、具体的言って頂かないとぉ。ニヤァ』

具体的に説明など出来るかぁ!

最後のニヤァを神託に付けるんじゃない!

まぁーこ『二人ともふざけないでよぉ。少し調べてみるわね。ニヤァ』

なんで最後にニヤァを付けるんだぁーーー!

夫婦の寝室にラナを下ろすと、ラナが真剣な様子で質問してくる。

「旦那様、本当の事をハッキリと言って下さい!」

「夫婦で隠し事はダメです!」

クレアは怒っている感じである。

で、でも、説明が難いよねぇ。

ラナが目に涙まで溜めている。

これはダメだ! 説明しないと許されないだろう!

まぁーこ『ごめんねぇ。込み入った所で申し訳ないけど、大体わかったわ。今後は問題になる事は無いわね。アタルさんと魔力量が近づいたし、そこそこ魔力量が多いクレアさんには問題なかったでしょ。安心して励んでも問題ないわよ。ニヤァ』

最後のニヤァはムカつくが、朗報には間違いない。

私の表情が明るくなったので、ラナとクレアも不思議そうな顔をしている。

二人に原因について説明して、今後も続けても大丈夫だと伝えると、ジト目で睨まれてしまった。

しかし、結果的にはMP最大値が増えたこと自体は嬉しかったようで、二人の機嫌は良くなる。

「しかし、この事をハロルド様達に説明するのですか?」

ラナに訊かれて、大いに動揺するのだった。
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