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第3章 大賢者の遺産
第16話 襲撃
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ハロルド様とアランさんの話を聞いて、この世界が自分の考えていた以上に殺伐としていると感じるのだった。
ハロルド様に出会って、私は恵まれていたんだなぁ。
エルマイスター家の屋敷で、メイドさんに毎朝起こしてもらうような生活が、どれほど恵まれた環境であり、騎士と言うだけで尊大な態度をしたり、少しの間違いで厳しい処罰されたりする。
油断したら相当に危ない世界なのかも……。
そう言った意味では、比較的良い場所に転生されたかもしれない。
でも、……あの駄女神には感謝したくない!
昼までにまだ時間があるが、少し早めに孤児たちの所に向かうことにする。
角ウサギの在庫も少なくなったし、今日は孤児たちに角ウサギを渡していないと聞いたからだ。
ハロルド様にその事を伝えると、一緒に付いて来ると言い出した。
暇なのかな?
私の表情で考えている事が分かったのか、アランさんが苦笑しながら、
「いつも思い付きで行動されるので我々も大変です」
と小声で話してくれたが、ハロルド様に聞こえてしまい、ハロルド様は言い訳のように行く理由を話す。
「クレアから、商業ギルドの斡旋で働きに出た孤児が、奴隷にされたと聞いたから、直接話が聞きたいのじゃ!」
それならついでに狩りを手伝うと付け加えると、アランさんはまた苦笑していた。
人数も増えてしまい、東門の門番さんたちもハロルド様の姿に驚き、緊張した表情で見送ってくれた。
これって、孤児院の子供たちと昼食を食べに行く一行なんだよね?
傍から見ると物々しい集団になってしまい、子供たちを脅かしてしまうんじゃないかと心配になる。
すぐに遠目でも子供たちの集団が見えてくる。
あれっ、何か揉めているのか!?
比較的幼い子供たちが少し後ろで固まり、タウロやシャルが子供たちを庇うようにして立っている。その少し前にシアが立っていて、数人の冒険者風の男達と言い争っている。
突然、その男たちの一人が剣を抜き、シアを正面から切りつけた。
まるでスローモーションのように一部始終が見えていた。
袈裟斬りの感じで、斜めに肩から胸元まで切られたシアから、血が噴き出るのが見えたのだ。
「お前達、何をやっておるかぁーーー!」
ハロルド様が大声で怒鳴ると、男たちは我々に気が付いて焦って逃げ始める。
アランさん達護衛と、クレアさんとカルアさんは、ハロルド様が怒鳴ると同時に走り出していた。
私も怒りで自分が何をしようとしているのか理解できていないが、走りだしながら手鉄砲を作ると、先頭で逃げようとする、シアを切りつけた男の背中に向かって魔弾を撃った。
撃った魔弾は遠魔弾で、発射まで長めのタイムラグがあったはずだが、自分でも理由は良く分からないけど、タイムラグは1秒ぐらいで発射できた。
魔弾は背中に向けて撃ったのだが、走りながらの射撃で大きく外れて、男の足に当たった。男は足に魔弾が当たると同時に、前に吹き飛ぶように倒れ込むのが見えた。
すでに他の男達も、アランさんや護衛の人、クレアさんやカルアさんに取り押さえられていた。
私はすぐにシアのもとに走って行く。
すでにシャルやフォミ、カティもシアのそばにいて、すぐ後ろにはタウロがおろおろしながら様子を見ている。
シアは死んでしまったと私は思っていたが、私を見ると自分に向かって震える手を伸ばすようなしぐさをする。
「ア、 アタル兄ちゃんと一緒に居たかった」
うん、なんで死ぬ前の遺言のように、この世界の人は話をするんだろう!?
クレアさんの時もそうだった。
確かにポーションが無ければ死ぬほどの怪我であることは間違いない。
私はまだ生きているなら、助けられると思ったのだが、自分が思った以上に冷静に考えていることに驚いた。
ストレージから砂糖ポーション入りの水筒を取り出すと、返事もしないでシアに振りかける。
「も、もったいないよ。最後にアタル兄ちゃんの顔が見られて良かったぁ」
いやいや、最後じゃないから!
すでに切られた傷がどんどん治っている。他の子供たちも驚いた顔でその状況を見ている。
「飲みなさい」
シアの口元にまだ砂糖ポーションが残っている水筒を差し出す。
「他の子のために、」
「飲め!」
水筒を強引にシアの口に付けると、水筒を斜めにして強引に飲ませる。
「ゴクッ、ゲホゲホ、ひ、ひどいよ~」
シアは悲劇のヒロインでもなったつもりなのか、弱々しくシアが文句を言ってくるが、既に傷は綺麗に無くなり、ポーションを飲んだことで完治しているはずだ。
「ほら、もう傷は治っている、あっ!」
シアに胸元の傷を見せようと、切られた部分の服を開いて見せようとしたのだが、開き過ぎてチッパイが見えてしまった。
シアは胸元を見て傷の無いことを確認して、更に私に胸を見られたことに気が付いて固まった。
「ゴ、ゴメン、でも怪我は、」
バチン!
「エッチ!!!」
シアは涙目になりながら、私の頬をビンタする。そして後ろに下がりながら、胸元を手で隠すようにして言ったのだ。
待て、待て、待ってーーー!
これでは私が子供を襲った変態みたいじゃん!?
周りに違うと言いたくて見回すと、子供たちと護衛の人達が、軽蔑するような目で私を見ている。
「え、いや、傷の確認をしただけで……」
私のほうが泣きたいんですがぁ~!
するといつの間にかタウロが私の後ろに来ていて、肩をポンポンと優しく叩いてきた。タウロを見ると、『やっちゃったね』と言っているような気がした。
ポンポンするんじゃねぇ! 私は悪くないんだぁーーー!
両手を地面について四つん這いの状態で落ち込んでいると、アランさんが声を掛けてきた。
「アタル殿、ポーションがあれば譲ってくれないだろうか?」
良く見ると、アランさんは先程魔弾で撃った男の髪の毛を掴んで引きずっている。
よく見ると男の片足の膝から下が無くなっていて、血の跡で引きずったのが良く分かった。
「このような男を助けるつもりはありませんが、生かして事情を聞きたいので、お願いできませんか?」
無言で通常ポーションの水筒をストレージから出すと、アランさんに渡す。よく見ると他の護衛やクレアさん達も男達を拘束して連れて来ている。
アランさんがポーションを受け取ると、男の足にポーションを振りかけて治療する。
クレアさんが他の護衛に自分が拘束した男を預けて、心配そうに近づいて来る。
「アタル様、大丈夫ですか?」
今はクレアさんの優しい言葉にクラっとしそうだ。
ストレージから自分の予備の上着を取り出すと、クレアさんに手渡してお願いする。
「シアの治療は終わっていますが、服も一緒に切られたから、これを着せてやってください」
そう話すと、クレアさんが笑顔を見せてくれる。
「アタル様は優しいんですね」
心に染み渡ることを言ってくれる。
惚れてまうやろぉ~!
クレアさんが服を受け取ると、シア達の方へ向かって行く。
服を渡すと、他の子たちが何やらクレアさんに話している?
クレアさんの目つきが次第に変わり、話を聞き終えると、なぜか軽蔑するような視線で私を睨んでくる。
わ、悪い事は何もしていないんだーーー!
体育座りになり落ち込んでいると、タウロが今度は背中をポンポンしてきた。
ポンポンするんじゃねぇ! お前が漏らしたことを言っちゃうぞーーー!
私は複雑な気持ちで落ち込んだしまう。
シアを治療して助けたけど、誤解というか手違いで軽蔑されたことも複雑だが、人を傷つけたことも心に重くのしかかってくる。
間違ったことをしたとは思っていない。
だけど、地球でも他人を傷つけたことさえなかった自分が、膝から下を自分の攻撃で吹き飛ばしたのだ。
それに、狙ったのは胴体だった……。
狙い通りに魔弾が当たったとしたら、彼は生きていなかっただろう。魔弾の威力は人が相手だと予想以上に効果があった。
殺したいと思ったつもりは無いが、撃った瞬間は自分でも怒りで我を忘れていたことを理解している。
人を傷つけることや殺していた可能性が高いことに、自分でもどう考えてよいか分からない。
でも、……子供を傷つける奴は許せない!
それだけは間違いなく本当の気持ちだと思うのだった。
ハロルド様に出会って、私は恵まれていたんだなぁ。
エルマイスター家の屋敷で、メイドさんに毎朝起こしてもらうような生活が、どれほど恵まれた環境であり、騎士と言うだけで尊大な態度をしたり、少しの間違いで厳しい処罰されたりする。
油断したら相当に危ない世界なのかも……。
そう言った意味では、比較的良い場所に転生されたかもしれない。
でも、……あの駄女神には感謝したくない!
昼までにまだ時間があるが、少し早めに孤児たちの所に向かうことにする。
角ウサギの在庫も少なくなったし、今日は孤児たちに角ウサギを渡していないと聞いたからだ。
ハロルド様にその事を伝えると、一緒に付いて来ると言い出した。
暇なのかな?
私の表情で考えている事が分かったのか、アランさんが苦笑しながら、
「いつも思い付きで行動されるので我々も大変です」
と小声で話してくれたが、ハロルド様に聞こえてしまい、ハロルド様は言い訳のように行く理由を話す。
「クレアから、商業ギルドの斡旋で働きに出た孤児が、奴隷にされたと聞いたから、直接話が聞きたいのじゃ!」
それならついでに狩りを手伝うと付け加えると、アランさんはまた苦笑していた。
人数も増えてしまい、東門の門番さんたちもハロルド様の姿に驚き、緊張した表情で見送ってくれた。
これって、孤児院の子供たちと昼食を食べに行く一行なんだよね?
傍から見ると物々しい集団になってしまい、子供たちを脅かしてしまうんじゃないかと心配になる。
すぐに遠目でも子供たちの集団が見えてくる。
あれっ、何か揉めているのか!?
比較的幼い子供たちが少し後ろで固まり、タウロやシャルが子供たちを庇うようにして立っている。その少し前にシアが立っていて、数人の冒険者風の男達と言い争っている。
突然、その男たちの一人が剣を抜き、シアを正面から切りつけた。
まるでスローモーションのように一部始終が見えていた。
袈裟斬りの感じで、斜めに肩から胸元まで切られたシアから、血が噴き出るのが見えたのだ。
「お前達、何をやっておるかぁーーー!」
ハロルド様が大声で怒鳴ると、男たちは我々に気が付いて焦って逃げ始める。
アランさん達護衛と、クレアさんとカルアさんは、ハロルド様が怒鳴ると同時に走り出していた。
私も怒りで自分が何をしようとしているのか理解できていないが、走りだしながら手鉄砲を作ると、先頭で逃げようとする、シアを切りつけた男の背中に向かって魔弾を撃った。
撃った魔弾は遠魔弾で、発射まで長めのタイムラグがあったはずだが、自分でも理由は良く分からないけど、タイムラグは1秒ぐらいで発射できた。
魔弾は背中に向けて撃ったのだが、走りながらの射撃で大きく外れて、男の足に当たった。男は足に魔弾が当たると同時に、前に吹き飛ぶように倒れ込むのが見えた。
すでに他の男達も、アランさんや護衛の人、クレアさんやカルアさんに取り押さえられていた。
私はすぐにシアのもとに走って行く。
すでにシャルやフォミ、カティもシアのそばにいて、すぐ後ろにはタウロがおろおろしながら様子を見ている。
シアは死んでしまったと私は思っていたが、私を見ると自分に向かって震える手を伸ばすようなしぐさをする。
「ア、 アタル兄ちゃんと一緒に居たかった」
うん、なんで死ぬ前の遺言のように、この世界の人は話をするんだろう!?
クレアさんの時もそうだった。
確かにポーションが無ければ死ぬほどの怪我であることは間違いない。
私はまだ生きているなら、助けられると思ったのだが、自分が思った以上に冷静に考えていることに驚いた。
ストレージから砂糖ポーション入りの水筒を取り出すと、返事もしないでシアに振りかける。
「も、もったいないよ。最後にアタル兄ちゃんの顔が見られて良かったぁ」
いやいや、最後じゃないから!
すでに切られた傷がどんどん治っている。他の子供たちも驚いた顔でその状況を見ている。
「飲みなさい」
シアの口元にまだ砂糖ポーションが残っている水筒を差し出す。
「他の子のために、」
「飲め!」
水筒を強引にシアの口に付けると、水筒を斜めにして強引に飲ませる。
「ゴクッ、ゲホゲホ、ひ、ひどいよ~」
シアは悲劇のヒロインでもなったつもりなのか、弱々しくシアが文句を言ってくるが、既に傷は綺麗に無くなり、ポーションを飲んだことで完治しているはずだ。
「ほら、もう傷は治っている、あっ!」
シアに胸元の傷を見せようと、切られた部分の服を開いて見せようとしたのだが、開き過ぎてチッパイが見えてしまった。
シアは胸元を見て傷の無いことを確認して、更に私に胸を見られたことに気が付いて固まった。
「ゴ、ゴメン、でも怪我は、」
バチン!
「エッチ!!!」
シアは涙目になりながら、私の頬をビンタする。そして後ろに下がりながら、胸元を手で隠すようにして言ったのだ。
待て、待て、待ってーーー!
これでは私が子供を襲った変態みたいじゃん!?
周りに違うと言いたくて見回すと、子供たちと護衛の人達が、軽蔑するような目で私を見ている。
「え、いや、傷の確認をしただけで……」
私のほうが泣きたいんですがぁ~!
するといつの間にかタウロが私の後ろに来ていて、肩をポンポンと優しく叩いてきた。タウロを見ると、『やっちゃったね』と言っているような気がした。
ポンポンするんじゃねぇ! 私は悪くないんだぁーーー!
両手を地面について四つん這いの状態で落ち込んでいると、アランさんが声を掛けてきた。
「アタル殿、ポーションがあれば譲ってくれないだろうか?」
良く見ると、アランさんは先程魔弾で撃った男の髪の毛を掴んで引きずっている。
よく見ると男の片足の膝から下が無くなっていて、血の跡で引きずったのが良く分かった。
「このような男を助けるつもりはありませんが、生かして事情を聞きたいので、お願いできませんか?」
無言で通常ポーションの水筒をストレージから出すと、アランさんに渡す。よく見ると他の護衛やクレアさん達も男達を拘束して連れて来ている。
アランさんがポーションを受け取ると、男の足にポーションを振りかけて治療する。
クレアさんが他の護衛に自分が拘束した男を預けて、心配そうに近づいて来る。
「アタル様、大丈夫ですか?」
今はクレアさんの優しい言葉にクラっとしそうだ。
ストレージから自分の予備の上着を取り出すと、クレアさんに手渡してお願いする。
「シアの治療は終わっていますが、服も一緒に切られたから、これを着せてやってください」
そう話すと、クレアさんが笑顔を見せてくれる。
「アタル様は優しいんですね」
心に染み渡ることを言ってくれる。
惚れてまうやろぉ~!
クレアさんが服を受け取ると、シア達の方へ向かって行く。
服を渡すと、他の子たちが何やらクレアさんに話している?
クレアさんの目つきが次第に変わり、話を聞き終えると、なぜか軽蔑するような視線で私を睨んでくる。
わ、悪い事は何もしていないんだーーー!
体育座りになり落ち込んでいると、タウロが今度は背中をポンポンしてきた。
ポンポンするんじゃねぇ! お前が漏らしたことを言っちゃうぞーーー!
私は複雑な気持ちで落ち込んだしまう。
シアを治療して助けたけど、誤解というか手違いで軽蔑されたことも複雑だが、人を傷つけたことも心に重くのしかかってくる。
間違ったことをしたとは思っていない。
だけど、地球でも他人を傷つけたことさえなかった自分が、膝から下を自分の攻撃で吹き飛ばしたのだ。
それに、狙ったのは胴体だった……。
狙い通りに魔弾が当たったとしたら、彼は生きていなかっただろう。魔弾の威力は人が相手だと予想以上に効果があった。
殺したいと思ったつもりは無いが、撃った瞬間は自分でも怒りで我を忘れていたことを理解している。
人を傷つけることや殺していた可能性が高いことに、自分でもどう考えてよいか分からない。
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