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番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?

第26話 ついてこられるかなぁ

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ようやく訓練を始められると思ったけど、もう一つ確認するのを忘れていた。

「研修にはいくつか種類があって、それにより成長の度合いが変わります。大まかには3種類あって、大まかに説明するのでどの研修を選択するのか決めてください」

王女様達は黙って頷いている。

「一つ目はテックスの理論を利用するだけの研修です。これをするだけでも成長しますし、その後も自分で研修を続けられるようになります。ただ成長速度はそれほど早くはありません」

成長速度が速くないと聞いて王女様達の反応は良くない。

「二つ目はポーション類を使ったドーピング研修です。これは一つ目の研修にポーションを使って効率よく進める方法です。成長速度は速くなりますけど、ポーション類がそれなりに必要になりますので費用が掛かります」

王女様以外は戸惑ったような表情をしている。王女様は決意したような表情で言った。

「今日の分は私のお小遣いで払いますわ。まずはどれほど必要か確認させてください」

王女様のお小遣いはどれほどなんだろう?

思わず関係ないことを考えてしまった。

「今日はお試しということでロンダ家の負担ということで構わないと思います。研修を続けることになったらお父様と相談してからになると思いますわ」

訓練用ポーション類はロンダでも作っていて、ロンダの兵士には無償で使わせている。王女様の分だけならロンダ家で負担しても構わないと思うけど、従者の二人や護衛までになると相談は必要だと思う。

費用対効果を考えれば使うべきだと思うけど、それぞれの懐事情もあるだろう。

とりあえず今日はテンマ先生から渡された分だけで十分足りる。

「わかりましたわ。でも今日の分も必要なら請求してください」

王女様は戸惑いながらも提案してきた。私は軽く頷いて話を続ける。

「最後の一つはあらゆる成長を目指す研修になります。二つ目より費用も必要になりますし訓練は過酷になります。でも成長も手に入るスキルも多くなります。これは『知識の部屋』に登録されていないような理論も使っての研修となります」

ロンダの研修施設でも厳選した相手にしかこの研修方法は使っていない。厳しすぎるという理由もあるけど、信用できる相手だけに限定しているのもある。

王女様は期待を込めた表情になったけど、従者は戸惑い護衛は王女を気遣うように視線を向けている。

「それでお願いしますわ!」

王女様は躊躇することもなく答えた。

う~ん、ついてこられるかなぁ?

それと王女様相手にあの研修をして問題にならないか、それが一番心配……。

「え~と、まずは説明しながら最後の研修を試してみましょう。問題があるようでしたらその時に言ってください……」

下級貴族のロンダ家が罰せられたら困るので、今日はどこまで大丈夫か確認しながら研修を進めることにする。

王女様は自分の決意を軽く見られたと思ったのか不満そうな表情をしていた。

まあ、とりあえず研修を始めてみましょう!

王女様の顔色は気にせずに研修を始めることにした。

早速収納から最初の試練を取り出した。

「これは1/10に薄めた毒薬と麻痺薬です。研修を始める前に飲んでもらいますね」

「本当に王女様に毒薬を飲ませるのか!?」

うん、うん、予想通りの反応でちょっと嬉しいかもぉ~。

ソフィア様は王女様を気遣って発言した。

「はい、研修の効率を上げるのに最高の方法です。同じ訓練をするとしても過酷な状況で訓練すれば効率よく成長します。それに辛い状況だと訓練に集中することが難しくなるのでより集中力が必要になり、結果的に集中スキルを取得することができます。集中スキルを取得するとさらに研修の効率が良くなるのです」

王女様は納得したみたいだけど、護衛でもあるソフィア様は納得していないようだ。

当然よねぇ~!

私はさらに説明を続ける。

「毒薬や麻痺薬は薄めてあるのでそれほど命の危険はありません。それに王族である王女様こそ私はこの訓練をして欲しいと思っていますわ」

「なぜだ!」

ソフィアさんは険しい表情で聞いてきた。

「この訓練をすると毒耐性や麻痺耐性などの耐性系スキルが取得できるからです。王族だと暗殺などの危険がありますよね。毒耐性があれば安心できるのではありませんか? ちなみに私はバルドーさんが作れる最高の猛毒でも、すでに効かなくなっています」

バルドーさんが作れる猛毒に耐えられるということは、毒殺される心配がほぼないということだ。毒を持つ魔物でも、毒に警戒することなく普通に戦闘できることになるのだ。

みんなさすがに驚いた表情で固まってしまった。

「とりあえず試してみませんか? それぞれの回復薬もありますし、辛いけど効果は抜群ですよ」

思わずニンマリと笑顔で提案すると、少し嫌そうな顔をされた。

「た、試してみましょう!」

「いえ、今日は護衛の私達だけ試します。王女様は問題ないか確認してからにしてください!」

「あら、自分だけ先行してスキルを手に入れるつもり?」

「えっ、いや、そういうわけでは……」

王女様は少し躊躇していたけど、ソフィア様とのやり取りで逆に決意が固まったみたい。

結局ソフィア様が先に飲むことは決まったけど、命に別条がなければすぐに王女様達も飲むことになった。

ソフィア様は渡された毒薬と麻痺薬を渋い顔で見つめていたけど、すぐに意を決したように一気に両方を飲んだ。

すぐに表情が少し辛そうになったけど、探るように手足を動かして最後にステータスを確認している。

「い、命の危険はなさそうです。確かに体が重くなりますが、これで訓練すれば効率は良いかも……」

ああ、ソフィア様も訓練好きみたいねぇ~。

ソフィア様の反応を見て、研修嵌まりそうだと思った。

「それなら私も試してみるわ!」

「あっ、いや、王女様が毒薬を飲むのは……」

うん、見ていて面白いわ!

ソフィア様なりに護衛の任務として王女様に毒薬を飲ませたくないのだろう。でもそれほど危険がないと分かって、思わず本音が出てしまい、今さら説得しようとしても手遅れだ。

う~ん、でも体を鍛えているソフィア様だからそれほど辛くないのかも……。

そのことを話そうとしたけど、すでに王女様は毒薬を飲み始めてしまった。飲み終わってすぐに状態異常になったのか、ソフィア様より辛そうな表情になる。

「おい、私のより強力な毒薬を王女様に飲ませたのか!」

「いえ、王女様はソフィア様より体力がないのでしょう。だからソフィア様より辛く感じているのですわ。王女様、命に危険がないかステータスを確認してくださいませ!」

王女様は辛そうに石板の上に手を乗せてステータスを確認して口を開く。

「確かに命の危険はなさそうね。でもこれで訓練するのは大変そうですわ……」

王女様も最初の元気はなくなっている。でも……。

「それで魔力枯渇させると、もっと辛いですよぉ。半年前の私は体力もなくて王女様より辛かったと思いますわ。でも、あのころが一番成長したのよねぇ~」

当時のことを懐かしむように本音が出てしまい、ソフィア様からジト目で睨まれてしまったのである。


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