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第9章 ホレック公国へ
第1話 新たな旅の始まり
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王都を出発して馬車で移動するのだが、間違いなく変な一行だろう。
俺はピピを膝に乗せ御者をしている。そして左右にはメイド服のジジとアンナが座り、何故か馬車の上で鼻歌を奏でるバルドーさんがいる。馬車の周りを走り回るシルは、無駄に元気で楽しそうだ。
「前回の旅に比べるとのんびりして良いですよねぇ~」
ジジも楽しそうに話す。前回はそれぞれ役割をもって作業しながらの旅だった。それに、まだ王都に近いこともあり魔物もほとんど出ない。
「本当に素晴らしいです! 私はテンマ様が私を苦しめるために出発を延期するのではないかと疑っていました。本当に失礼なことを考えていました。申し訳ありません」
う~ん、その誘惑に負けそうだったけど、さすがあのバルドーさんの様子では……。
「イ、イヤだなぁ~、俺がそんなことするわけないよぉ~」
「そうですよねぇ。そんなことになれば私は危険な考えを実行していましたよぉ。はははは」
はははは……、その危険な考えは絶対に封印してほしい。何か分からないけど……。
「そ、それより、フリージアさんに何か約束してましたよね?」
誤魔化そうと話を変えて質問する。
「はい……、母上への言い訳でもありますが、もしお時間があるなら少しだけ寄れればと思っています」
たしか犠牲とか弔いとか言ってた気がする。
まあ、目的があるわけではないし、暫くは王都に帰るつもりはない。
「まあ、俺は別に構わないよ。急ぐ旅でもないし、寄り道は大歓迎かなぁ」
「ありがとうございます。それでは道案内は私にお任せください。各町でゆっくり過ごすのも良いかもしれませんなぁ」
バルドーさんは嬉しそうに話した。王都を出られて、……フリージアさんから解放されて楽しそうだ。バルドーさんは俺の知らない苦労もしてきたのだろう。
「ふふふっ、我慢した分を次の町で……」
うん、聞かなかったことにしよう!
バルドーさんは聞こえないように呟いたつもりだろうが俺には聞こえてしまった。次の町では夜に「バッチコーイ!」が響き渡る気がする。
「私もこれほど下界、ゲフン……これほど時間を掛けて旅をするのが楽しいとは思いませんでした」
アンナが危険な発言をしそうだったが、何とかリカバリーして誤魔化したようだ。
「ぐふふっ、ライバルは小娘だけ。これなら……」
聞こえないように言っているのかぁ!?
アンナの呟きも聞こえてしまう。頼りになるようになったアンナだが、それに比例して新たな変異株が発生したようで恐い。
「ピピもたびが大好きー! もうべんきょうばかりで疲れたぁ~」
ピピは体を動かすよりも、最近は勉強を優先していた。読み書きは苦手だったようでバルドーさんの知り合いも苦労したそうだ。油断するとピピが逃げ出して、一時王宮が大騒ぎになったと聞いて焦ったこともある。
何気にピピが一番の問題児の可能性があるが、俺には可愛いピピでしかない。
「お兄ちゃんも仕事で疲れたからピピと一緒だねぇ」
「うん、いっしょぉ~」
「でも、勉強は大切だから、今晩からお兄ちゃんと一緒に勉強しよう!」
ピピは笑顔から一転悲し気な表情で俺を見る。
くっ、そんな目でみないでぇ~。
ピピの将来のためにも最低限の勉強は必要だよぉ!
「ピピ、テンマ様に勉強を見てもらえるのよ。感謝しなさい!」
ジジがピピを叱りつける。
「は~い……」
ピピはジジに言われて少し頬を膨らませながら返事した。
「ピピ、お兄ちゃんの勉強は遊びながらだから楽しいぞぉ」
「ほ、ほんとぉ?」
「本当さ! 例えば……」
ピピにしりとりを教える。言葉や名称を言いながらたまに文字を書いて教える。ピピはそれほど嫌がらずに続けるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
更に進むと後ろから馬車が3台ほど連なって、凄い速度で近付いてくるのに気が付く。
隣町までの道は、元王宮魔術師達が訓練代わりに整備を終えたことで、非常にスムーズに馬車で進むことができるようになった。それでも早すぎではと感じる。
我々の馬車は特別製で馬には定期的にスタミナ回復の魔法を使っているのだ。それに追いつけるのは相当急いでいるのであろう。
馬車をできるだけ端に避けて進む。すぐに追いつかれ追い抜かれてしまった。追い越した馬車の馬が苦しそうにして可哀そうだった。
追い越していく馬車の御者が、勝ち誇った顔を見せたのが不思議に思った。するとバルドーさんが説明してくれた。
「最近は道が良くなり、どれだけ早く荷が運べるか競争になっているそうです」
まあ、何となくわかる気がする。そういうことは前世の世界でもあった。ボージョレーなんかはその最たるものだろう。
まあ、気にしても仕方がないと思っていると、次々に馬車に追い抜かれて行く。
しかし、すぐに休憩所のような場所に到着すると、追い抜いていった馬車が馬を休ませていた。我々はまだ休憩が必要ないので通り過ぎる。
そして、また追い抜かれた。数回それを繰り返すと隣町まで着いてしまった。
バルドーさんの話では、途中にあった村に1泊するのが普通だったが、道が良くなり泊まらないでこの町まで来るのが増えたらしい。
しかし、町の中に入るのに並んでいると、我々の後ろに最初に抜いた馬車が並んでいた。
最初は徐々に向こうが先行していったが、途中から馬の疲れで速度がでず、休憩も長くなったので結果的には我々が先に着いたである。
御者が悔しそうにこちらを睨んでいるのが少し気持ちいい。しかし、よく考えてみると我々はドーピングしているのだ。喜んでも仕方ない。
それに何か忘れている気がする。必死に考えるがそれが全く思いつかない。
町中に入ると少し良い宿に広めの部屋を1部屋取る。実際に寝起きするのは『どこでも自宅』にするつもりだが、従魔付きでメイドと一緒となるとそうしないと不自然だから。
夕食には時間があるので部屋に行き『どこでも自宅』で休憩する。
シルはD研に入るとどこかに走り去ってしまった。あれほど馬車の周りを行ったり来たりしていたのに元気である。
ジジとピピ、アンナは風呂に入りに向かった。
俺はリビングで休憩しようとソファに座る。目の前にはピョン吉が俺を見つめながら冷や汗を垂らしている。
ピョン子はピピの従魔だから一緒についてくるのは当然だ。だがピョン吉はドロテアさんの従魔だった。しかし、ドロテアさんは一切面倒を見ないから、この機会にピョン吉はアンナの従魔になったのである。
ピョン吉もドロテアさんに一切愛着がないようで、問題なくアンナとの従魔契約ができたのである。
シルも居ないし、たまにはピョン吉のプニプニもアリだなぁ。
そう考えるとピョン吉を手招きする。不思議とピョン吉がイヤそうな顔をした気がするが、普段からそんな顔なのでよくわからない。
たまに見せる俊敏な動きは皆無で、重い体を引きずってますアピールしながら、ドタドタと近づいてくる。
手の届く範囲になると無理やり抱き寄せ、ソファに寝かせると上から覆いかぶさりプニプニを堪能する。
おお、久しぶりの肉質! 油がのって美味しそうな感じがするぅ。
そう考えると、ピョン吉がビクッと波打つ。それがまた気持ちいい!
ピョン吉のプニモニを堪能していると3人が風呂から上がってくる。3人は綺麗な服装に着替えていた。
俺が驚いて3人を見ていると、ジジが頬を赤くしながら話した。
「こんな良い宿の食堂にメイド服ではダメだとアンナさんが……」
うん、確かにそれは言える。
しかし、ジジは可憐さとちょいエロが混ぜってドストライクである。ピピも可愛くて最高だ。しかし……。
「アンナはメイド服に拘りがあったと思うけど……。でも、それ以上にそのドレスは過激すぎない?」
アンナさんは胸を強調したドレスで、背中がお尻まで見えそうなほど開いている。
いや、嫌いじゃない。嫌いじゃないけど……。
「これは私が前の場所《せかい》に居たときの習慣です。夕食の時は正式にこのような服装になります!」
それなら仕方ないけど……。なんか嘘の匂いが漂っている気がする。
疑いの眼差しでアンナを見つめると、露骨に目が泳いだ。
「は、早く食事に行きましょう!」
誤魔化したなぁ~!
そう思ったが、追及しても証拠がないからはぐらかされそうだと思い諦めるのだった。
俺はピピを膝に乗せ御者をしている。そして左右にはメイド服のジジとアンナが座り、何故か馬車の上で鼻歌を奏でるバルドーさんがいる。馬車の周りを走り回るシルは、無駄に元気で楽しそうだ。
「前回の旅に比べるとのんびりして良いですよねぇ~」
ジジも楽しそうに話す。前回はそれぞれ役割をもって作業しながらの旅だった。それに、まだ王都に近いこともあり魔物もほとんど出ない。
「本当に素晴らしいです! 私はテンマ様が私を苦しめるために出発を延期するのではないかと疑っていました。本当に失礼なことを考えていました。申し訳ありません」
う~ん、その誘惑に負けそうだったけど、さすがあのバルドーさんの様子では……。
「イ、イヤだなぁ~、俺がそんなことするわけないよぉ~」
「そうですよねぇ。そんなことになれば私は危険な考えを実行していましたよぉ。はははは」
はははは……、その危険な考えは絶対に封印してほしい。何か分からないけど……。
「そ、それより、フリージアさんに何か約束してましたよね?」
誤魔化そうと話を変えて質問する。
「はい……、母上への言い訳でもありますが、もしお時間があるなら少しだけ寄れればと思っています」
たしか犠牲とか弔いとか言ってた気がする。
まあ、目的があるわけではないし、暫くは王都に帰るつもりはない。
「まあ、俺は別に構わないよ。急ぐ旅でもないし、寄り道は大歓迎かなぁ」
「ありがとうございます。それでは道案内は私にお任せください。各町でゆっくり過ごすのも良いかもしれませんなぁ」
バルドーさんは嬉しそうに話した。王都を出られて、……フリージアさんから解放されて楽しそうだ。バルドーさんは俺の知らない苦労もしてきたのだろう。
「ふふふっ、我慢した分を次の町で……」
うん、聞かなかったことにしよう!
バルドーさんは聞こえないように呟いたつもりだろうが俺には聞こえてしまった。次の町では夜に「バッチコーイ!」が響き渡る気がする。
「私もこれほど下界、ゲフン……これほど時間を掛けて旅をするのが楽しいとは思いませんでした」
アンナが危険な発言をしそうだったが、何とかリカバリーして誤魔化したようだ。
「ぐふふっ、ライバルは小娘だけ。これなら……」
聞こえないように言っているのかぁ!?
アンナの呟きも聞こえてしまう。頼りになるようになったアンナだが、それに比例して新たな変異株が発生したようで恐い。
「ピピもたびが大好きー! もうべんきょうばかりで疲れたぁ~」
ピピは体を動かすよりも、最近は勉強を優先していた。読み書きは苦手だったようでバルドーさんの知り合いも苦労したそうだ。油断するとピピが逃げ出して、一時王宮が大騒ぎになったと聞いて焦ったこともある。
何気にピピが一番の問題児の可能性があるが、俺には可愛いピピでしかない。
「お兄ちゃんも仕事で疲れたからピピと一緒だねぇ」
「うん、いっしょぉ~」
「でも、勉強は大切だから、今晩からお兄ちゃんと一緒に勉強しよう!」
ピピは笑顔から一転悲し気な表情で俺を見る。
くっ、そんな目でみないでぇ~。
ピピの将来のためにも最低限の勉強は必要だよぉ!
「ピピ、テンマ様に勉強を見てもらえるのよ。感謝しなさい!」
ジジがピピを叱りつける。
「は~い……」
ピピはジジに言われて少し頬を膨らませながら返事した。
「ピピ、お兄ちゃんの勉強は遊びながらだから楽しいぞぉ」
「ほ、ほんとぉ?」
「本当さ! 例えば……」
ピピにしりとりを教える。言葉や名称を言いながらたまに文字を書いて教える。ピピはそれほど嫌がらずに続けるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
更に進むと後ろから馬車が3台ほど連なって、凄い速度で近付いてくるのに気が付く。
隣町までの道は、元王宮魔術師達が訓練代わりに整備を終えたことで、非常にスムーズに馬車で進むことができるようになった。それでも早すぎではと感じる。
我々の馬車は特別製で馬には定期的にスタミナ回復の魔法を使っているのだ。それに追いつけるのは相当急いでいるのであろう。
馬車をできるだけ端に避けて進む。すぐに追いつかれ追い抜かれてしまった。追い越した馬車の馬が苦しそうにして可哀そうだった。
追い越していく馬車の御者が、勝ち誇った顔を見せたのが不思議に思った。するとバルドーさんが説明してくれた。
「最近は道が良くなり、どれだけ早く荷が運べるか競争になっているそうです」
まあ、何となくわかる気がする。そういうことは前世の世界でもあった。ボージョレーなんかはその最たるものだろう。
まあ、気にしても仕方がないと思っていると、次々に馬車に追い抜かれて行く。
しかし、すぐに休憩所のような場所に到着すると、追い抜いていった馬車が馬を休ませていた。我々はまだ休憩が必要ないので通り過ぎる。
そして、また追い抜かれた。数回それを繰り返すと隣町まで着いてしまった。
バルドーさんの話では、途中にあった村に1泊するのが普通だったが、道が良くなり泊まらないでこの町まで来るのが増えたらしい。
しかし、町の中に入るのに並んでいると、我々の後ろに最初に抜いた馬車が並んでいた。
最初は徐々に向こうが先行していったが、途中から馬の疲れで速度がでず、休憩も長くなったので結果的には我々が先に着いたである。
御者が悔しそうにこちらを睨んでいるのが少し気持ちいい。しかし、よく考えてみると我々はドーピングしているのだ。喜んでも仕方ない。
それに何か忘れている気がする。必死に考えるがそれが全く思いつかない。
町中に入ると少し良い宿に広めの部屋を1部屋取る。実際に寝起きするのは『どこでも自宅』にするつもりだが、従魔付きでメイドと一緒となるとそうしないと不自然だから。
夕食には時間があるので部屋に行き『どこでも自宅』で休憩する。
シルはD研に入るとどこかに走り去ってしまった。あれほど馬車の周りを行ったり来たりしていたのに元気である。
ジジとピピ、アンナは風呂に入りに向かった。
俺はリビングで休憩しようとソファに座る。目の前にはピョン吉が俺を見つめながら冷や汗を垂らしている。
ピョン子はピピの従魔だから一緒についてくるのは当然だ。だがピョン吉はドロテアさんの従魔だった。しかし、ドロテアさんは一切面倒を見ないから、この機会にピョン吉はアンナの従魔になったのである。
ピョン吉もドロテアさんに一切愛着がないようで、問題なくアンナとの従魔契約ができたのである。
シルも居ないし、たまにはピョン吉のプニプニもアリだなぁ。
そう考えるとピョン吉を手招きする。不思議とピョン吉がイヤそうな顔をした気がするが、普段からそんな顔なのでよくわからない。
たまに見せる俊敏な動きは皆無で、重い体を引きずってますアピールしながら、ドタドタと近づいてくる。
手の届く範囲になると無理やり抱き寄せ、ソファに寝かせると上から覆いかぶさりプニプニを堪能する。
おお、久しぶりの肉質! 油がのって美味しそうな感じがするぅ。
そう考えると、ピョン吉がビクッと波打つ。それがまた気持ちいい!
ピョン吉のプニモニを堪能していると3人が風呂から上がってくる。3人は綺麗な服装に着替えていた。
俺が驚いて3人を見ていると、ジジが頬を赤くしながら話した。
「こんな良い宿の食堂にメイド服ではダメだとアンナさんが……」
うん、確かにそれは言える。
しかし、ジジは可憐さとちょいエロが混ぜってドストライクである。ピピも可愛くて最高だ。しかし……。
「アンナはメイド服に拘りがあったと思うけど……。でも、それ以上にそのドレスは過激すぎない?」
アンナさんは胸を強調したドレスで、背中がお尻まで見えそうなほど開いている。
いや、嫌いじゃない。嫌いじゃないけど……。
「これは私が前の場所《せかい》に居たときの習慣です。夕食の時は正式にこのような服装になります!」
それなら仕方ないけど……。なんか嘘の匂いが漂っている気がする。
疑いの眼差しでアンナを見つめると、露骨に目が泳いだ。
「は、早く食事に行きましょう!」
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