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chapter※08※※※※
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「お言葉ですが…」
龍の声に私の頭から手を離した朱鷺は
「どうぞ」
と、その手をポケットに入れる。
その珍しい態度に私は思わず遠藤さんを見た。
遠藤さんからは何の反応もなく無意味だった視線を龍に向けると、彼も一瞬私を見て頬を緩めてから朱鷺へ
「蜷川ほどの名前になると誰と何をしようが、良くも悪くもある程度雑言の対象にはなると思いますが?」
「おっしゃることは分かりますが…ですから最悪のタイミングだと申し上げたんです。ある程度の雑言で済まないことが耳に入ってくるでしょう…今の状況は…もしもオークワイナリーさんの担当者が女性ならば無いようなことも耳に入るのは想像に難かたくない」
二人ともこの調子ではどうにもこの場が収まらない。
「わかりました。二人の言ったこと…どちらもわかりましたから…私が何を優先してどう行動するかをきちんと考えます」
「それは一つを選択するような口ぶりだけど…美鳥、違うよ?」
龍が‘美鳥’と呼んだことに朱鷺が反応した気配を感じる。
「…違う?」
「うん、違う。元々、公私混同していないんだから仕事は仕事で考えて、俺の美鳥への告白へは仕事を別に答えてくれないとダメだ。その上で美鳥を攻撃してくる雑音には俺が応えるし守るよ。だからまずこのフェアはきちんと結果を出そう。何も二人でやるわけじゃない。川崎さんや北海道の担当者、うちからもソムリエも出すし皆でやる仕事だから前を向いてやればいい。プライベートはまた…何度でもゆっくり気持ちを伝えるよ。今日は黒スーツにヒールで理想身長の美鳥じゃない美鳥に会いに来ただけだから…またね」
龍は私に言い聞かせるように言うと
「蜷川社長、失礼します。遠藤さん、長々と申し訳ありません。失礼します」
二人に礼をして車に乗り込み、ゆっくりと走り去った。
龍の声に私の頭から手を離した朱鷺は
「どうぞ」
と、その手をポケットに入れる。
その珍しい態度に私は思わず遠藤さんを見た。
遠藤さんからは何の反応もなく無意味だった視線を龍に向けると、彼も一瞬私を見て頬を緩めてから朱鷺へ
「蜷川ほどの名前になると誰と何をしようが、良くも悪くもある程度雑言の対象にはなると思いますが?」
「おっしゃることは分かりますが…ですから最悪のタイミングだと申し上げたんです。ある程度の雑言で済まないことが耳に入ってくるでしょう…今の状況は…もしもオークワイナリーさんの担当者が女性ならば無いようなことも耳に入るのは想像に難かたくない」
二人ともこの調子ではどうにもこの場が収まらない。
「わかりました。二人の言ったこと…どちらもわかりましたから…私が何を優先してどう行動するかをきちんと考えます」
「それは一つを選択するような口ぶりだけど…美鳥、違うよ?」
龍が‘美鳥’と呼んだことに朱鷺が反応した気配を感じる。
「…違う?」
「うん、違う。元々、公私混同していないんだから仕事は仕事で考えて、俺の美鳥への告白へは仕事を別に答えてくれないとダメだ。その上で美鳥を攻撃してくる雑音には俺が応えるし守るよ。だからまずこのフェアはきちんと結果を出そう。何も二人でやるわけじゃない。川崎さんや北海道の担当者、うちからもソムリエも出すし皆でやる仕事だから前を向いてやればいい。プライベートはまた…何度でもゆっくり気持ちを伝えるよ。今日は黒スーツにヒールで理想身長の美鳥じゃない美鳥に会いに来ただけだから…またね」
龍は私に言い聞かせるように言うと
「蜷川社長、失礼します。遠藤さん、長々と申し訳ありません。失礼します」
二人に礼をして車に乗り込み、ゆっくりと走り去った。
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