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chapter※04※※※※※※※

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「っ…知り合いとは…申し上げられないかも…」
「えっ…友理奈さん…それなら蜷川社長に失礼なことを申し上げたんじゃない?パパ?」
「いえいえ、失礼などということはありません。私のような若輩者に頭取からお言葉を頂いただけでありがたいです。こちらの佐井様も悪気があった訳ではなく、ただ‘蜷川’の名前がどうしても先行するものですから見かけただけで覚えておられたのだとお察しします。向こうの高校課程を終了した大学生と短期留学生は同じ講義を履修することはほぼありませんので接点がないんですよ」

娘は話がわかるようだ。
畳み掛けて話をなかったことにして帰りたい。

「朱鷺様」

強く俺を呼ぶ遠藤の声に頭取が反応した。

「お忙しいところ、下らない話でお引き留めして申し訳ありません、蜷川社長」
「お気を悪くされませんように、蜷川社長。父が失礼致しました」

頭を下げるこの親子はまともなようだ。

「こちらこそ、おめでたい席を中座して申し訳ございません。今後もどうぞよろしくお願いいたします」

語尾に合わせて俺が最敬礼すると、遠藤もそれに倣う。
この話は完璧にクリアだ。
部屋を出る間にも挨拶を交わし、時間的に帰る者もあるので表で車を待つ間にも挨拶が飛び交う。

「疲れた…遠藤、助かった」
「お疲れ様でした、朱鷺様。今夜はあれが最善かと」
「ああ」

後部座席で助手席の遠藤に答える。
こんなに疲れるパーティーは久しぶりだ。


蜷川の使用人は住み込みの者と通いの者がいる。
屋敷で遠藤の部屋の準備が間に合ったので、今夜から遠藤も屋敷の住人だ。

「この屋敷は変わりませんね」
「マンションはどうする?」

パーティーでは食事をしていないので、遠藤と二人で食事をする。
普通は使用人と食事はしないが、西田や遠藤は俺付きのビジネスパートナーの側面もあるのでこういうこともある。

「買ってから結婚していたのは2年ほどですし、夜勤でホテルの仮眠室を使うことも多かったですから部屋は綺麗なんで賃貸に出そうかと思っています」
「それがいいだろうな」
「ここの住人になると食事が助かります。どうしても弁当を買うことが続いたりするので」

たっぷりの香味ソースがかかった蒸し鶏を口へ運ぶと箸を置いた遠藤が

「朱鷺様の年齢ですと、今日のようなことは増えるに違いありませんね」
「そうだろうな」
「正式な見合いが断れないようなことも起こり得ます。それともお断りしなくていいですか?その辺り、一度伺っておきたいです。今日はもし高田頭取のお嬢様とお付き合いされるにしても佐井の紹介のようなことは避けたかったのと、見世物のような中で話することではないと判断したのですが、実際にはご結婚に関してのお考え等を全く伺っておりませんでしたから」

西田は俺と美鳥が付き合っていると知っているが遠藤は知らない。
どこまで話すべきか…一瞬考えたとき

「遠藤くん、いらっしゃい。これから朱鷺と美鳥をよろしく頼むよ」

父が部屋へ入って来た。そして

「再会に乾杯しよう。今の話を私も聞かせて欲しいというのもあるからね。座らせてもらうよ」

と俺たちの食事のテーブルへついた。
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