48 / 203
chapter※04※※※※※※
しおりを挟む
ビジネスを諦めるかと思えば、コネクションはキープしたいというのが狙いか?
この女、佐井友理奈はどうってことなく押さえておけるが、今この場でその発言はやめてくれ。
頭取以下、錚錚たる顔ぶれが注目する中で、高田頭取の娘を無下に扱う訳にはいかない。
「おっしゃる通りです。困りますね」
「いやいや、困ることもないだろう?少なくともありさは付き合っている方もいないのだから」
「それはそうですけど…」
「失礼ですが、蜷川社長はどなたかとお付き合いされていらっしゃいますか?」
頭取の質問にさらに人が集まった気配がしたのは気のせいか?
「いえ」
いると言えば、調べる人間が出てくる。
その中で美鳥を傷つけるようなことがあってはならない。
「それなら一度娘と付き合ってみてもらえませんか?」
「私などではお嬢様にはとても」
「そんなご謙遜を」
「それに、お付き合いをしたとしてうまくいかない場合を考えますと、取引先など仕事関係の方とのお付き合いは避けたいとかねてより考えております」
「その辺の公私混同はないと、ここでお聞きの皆様に証人になっていただいていいですよ。ありさと交際してみて、うまくいかなかったとしてもNinagawa Queen's Hotel様との関係には何の影響もないとお約束致します」
おっさん…でなく、頭取の演説に熱が入り、これ以上断ると俺が悪者になるシチュエーションを作り上げられてしまった。
「朱鷺様、何度も申し訳ございませんがお時間です」
「ああ」
遠藤の機転の利いた言葉は俺の耳へ向けられながらも、しっかりと周りへ聞こえるものだった。
「皆様、大変申し訳ありませんが…私、次の予定がございますので失礼致します。本日はおめでとうございます、高田頭取」
俺がそう言うとギャラリーたちは自分の人脈作りへとすぐに戻っていく。
そこで俺は高田頭取と娘に申し訳なさそうなふりで告げた。
「こんなことを申し上げるのは気がひけますが…先ほど申し上げた理由ともう一点このお話を受けられない理由がございます」
「取引先とは付き合わないと…もうひとつ?」
「ええ」
「それは?」
「ご紹介のようにお言葉を頂いた、こちらの方…私はよく存じ上げないものですからどうも気が進みません。何かしらの思惑があるのでは…と勘ぐってしまうのは私の悪い癖ですが今のお話はなかったということでお願いいたします」
「友理奈さん、お知り合いじゃないの?」
驚いた様子の頭取の娘の質問に先手を打つ形で俺が答える。
「私が高校大学とイギリスで暮らす間のどこかの数ヶ月間、こちらの…」
「佐井様です」
遠藤とも西田と同じように仕事ができるな。
「失礼致しました。こちらの佐井様がイギリスに来られて何かの会でお会いしたようにおっしゃるのですが、数年のうちの1日や2日のこと…私にはわからないので知り合いとは申し上げられないです」
「友理奈さん、そうなの?」
この女、佐井友理奈はどうってことなく押さえておけるが、今この場でその発言はやめてくれ。
頭取以下、錚錚たる顔ぶれが注目する中で、高田頭取の娘を無下に扱う訳にはいかない。
「おっしゃる通りです。困りますね」
「いやいや、困ることもないだろう?少なくともありさは付き合っている方もいないのだから」
「それはそうですけど…」
「失礼ですが、蜷川社長はどなたかとお付き合いされていらっしゃいますか?」
頭取の質問にさらに人が集まった気配がしたのは気のせいか?
「いえ」
いると言えば、調べる人間が出てくる。
その中で美鳥を傷つけるようなことがあってはならない。
「それなら一度娘と付き合ってみてもらえませんか?」
「私などではお嬢様にはとても」
「そんなご謙遜を」
「それに、お付き合いをしたとしてうまくいかない場合を考えますと、取引先など仕事関係の方とのお付き合いは避けたいとかねてより考えております」
「その辺の公私混同はないと、ここでお聞きの皆様に証人になっていただいていいですよ。ありさと交際してみて、うまくいかなかったとしてもNinagawa Queen's Hotel様との関係には何の影響もないとお約束致します」
おっさん…でなく、頭取の演説に熱が入り、これ以上断ると俺が悪者になるシチュエーションを作り上げられてしまった。
「朱鷺様、何度も申し訳ございませんがお時間です」
「ああ」
遠藤の機転の利いた言葉は俺の耳へ向けられながらも、しっかりと周りへ聞こえるものだった。
「皆様、大変申し訳ありませんが…私、次の予定がございますので失礼致します。本日はおめでとうございます、高田頭取」
俺がそう言うとギャラリーたちは自分の人脈作りへとすぐに戻っていく。
そこで俺は高田頭取と娘に申し訳なさそうなふりで告げた。
「こんなことを申し上げるのは気がひけますが…先ほど申し上げた理由ともう一点このお話を受けられない理由がございます」
「取引先とは付き合わないと…もうひとつ?」
「ええ」
「それは?」
「ご紹介のようにお言葉を頂いた、こちらの方…私はよく存じ上げないものですからどうも気が進みません。何かしらの思惑があるのでは…と勘ぐってしまうのは私の悪い癖ですが今のお話はなかったということでお願いいたします」
「友理奈さん、お知り合いじゃないの?」
驚いた様子の頭取の娘の質問に先手を打つ形で俺が答える。
「私が高校大学とイギリスで暮らす間のどこかの数ヶ月間、こちらの…」
「佐井様です」
遠藤とも西田と同じように仕事ができるな。
「失礼致しました。こちらの佐井様がイギリスに来られて何かの会でお会いしたようにおっしゃるのですが、数年のうちの1日や2日のこと…私にはわからないので知り合いとは申し上げられないです」
「友理奈さん、そうなの?」
42
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました
瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。
冷たい外科医の心を溶かしたのは
みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。
《あらすじ》
都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。
アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。
ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。
元々ベリカに掲載していました。
昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる