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変容期の心持ち 3

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緒方先生のオススメという意味はよく分かる。ダンス、特に私がやっていたダンスは実に細かく複雑に全身を動かすんだけど…

「先生、このあと詰まってます?」
「次は1時間後だね」
「ちょっと補助に立って頂いていいですか?」
「いいよ。何の補助?」
「体操みたいな。たぶん出来る感覚ですけど…」
「ああ、オーケーだよ」
「すみません。お願いします」

私が後ろ向けにゆっくり手を下ろしてブリッジすると

「補助いる?うちに来てる人も壁なしで、これは出来ないと思うけど」

という声を聞きながら、足を床から離して半円を描いて手の方へ…ゆっくりバク転をする要領だ。

「体操選手だね」
「先生のおかげで、上半身の感覚は問題ないです。ちょっと跳ぶので下がってもらっ…」
「跳ぶ?バク転?補助するよ」
「危ない時に頭を掬い上げてもらえばいいので」
「オーケー」

私は先生が言ったように、反復トレーニング以外の感覚を確かめるように、くるくるとバク転したあと、片手でバク転…途中で止まって…おぉ、止まれるね。

「才花」
「っと…羅依、お迎えありがとう」

私が逆立ちで歩いていたところへ、羅依とタクが来てくれた。

「何やってんだ?」
「筋トレ以外の動作確認だよ」
「羅依、サイサイはちょっとおかしいんだよ。ダンスの動きを取り入れるかと思えばそうじゃなく、くるくると体操選手の床運動を始めるんだ。補助もなしでね」
「先生のメニューのおかげで上半身の感覚が以前のままなんです。ありがとうございます」
「……才花ちゃん、トレーニングもヤンチャ系?」
「まさか。おとなしくゆっくりストレッチみたいなもんだよ…こうして…」

ゆっくりと体を反らせて床に手をついて足で円を描き、ゆっくり片足ずつ着地する。

「ゆっくりの方が難しいだろ?」
「別物だね。これはストレッチの感覚だもの」

羅依が私の様子を窺っているようだが、本当にどこも何ともない。

「膝の細かい動きは以前のようにいかないけどね」
「サイサイの言う‘以前のように’は世界のトップレベルだからね。もう普通の一般人のレベル以上に上手に踊れるだろうね。サイサイは何が踊れるの?ヒップホップだけ?」
「レゲエ」
「レゲエ?」
「そう、レゲエダンスは一応オーケー。遊びでやってたから」
「レゲエダンスがイマイチ分からない…」

タクがスマホを出して検索を始め、私が着替えに行こうとしたとき

「こんにちは~。えぇ、Kingと緑川さんだ。こんにちは。あ、才花さんのお迎えですか?」

香さんがジムに入って来た。
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