63 / 120
変容期の心持ち 3
しおりを挟む
緒方先生のオススメという意味はよく分かる。ダンス、特に私がやっていたダンスは実に細かく複雑に全身を動かすんだけど…
「先生、このあと詰まってます?」
「次は1時間後だね」
「ちょっと補助に立って頂いていいですか?」
「いいよ。何の補助?」
「体操みたいな。たぶん出来る感覚ですけど…」
「ああ、オーケーだよ」
「すみません。お願いします」
私が後ろ向けにゆっくり手を下ろしてブリッジすると
「補助いる?うちに来てる人も壁なしで、これは出来ないと思うけど」
という声を聞きながら、足を床から離して半円を描いて手の方へ…ゆっくりバク転をする要領だ。
「体操選手だね」
「先生のおかげで、上半身の感覚は問題ないです。ちょっと跳ぶので下がってもらっ…」
「跳ぶ?バク転?補助するよ」
「危ない時に頭を掬い上げてもらえばいいので」
「オーケー」
私は先生が言ったように、反復トレーニング以外の感覚を確かめるように、くるくるとバク転したあと、片手でバク転…途中で止まって…おぉ、止まれるね。
「才花」
「っと…羅依、お迎えありがとう」
私が逆立ちで歩いていたところへ、羅依とタクが来てくれた。
「何やってんだ?」
「筋トレ以外の動作確認だよ」
「羅依、サイサイはちょっとおかしいんだよ。ダンスの動きを取り入れるかと思えばそうじゃなく、くるくると体操選手の床運動を始めるんだ。補助もなしでね」
「先生のメニューのおかげで上半身の感覚が以前のままなんです。ありがとうございます」
「……才花ちゃん、トレーニングもヤンチャ系?」
「まさか。おとなしくゆっくりストレッチみたいなもんだよ…こうして…」
ゆっくりと体を反らせて床に手をついて足で円を描き、ゆっくり片足ずつ着地する。
「ゆっくりの方が難しいだろ?」
「別物だね。これはストレッチの感覚だもの」
羅依が私の様子を窺っているようだが、本当にどこも何ともない。
「膝の細かい動きは以前のようにいかないけどね」
「サイサイの言う‘以前のように’は世界のトップレベルだからね。もう普通の一般人のレベル以上に上手に踊れるだろうね。サイサイは何が踊れるの?ヒップホップだけ?」
「レゲエ」
「レゲエ?」
「そう、レゲエダンスは一応オーケー。遊びでやってたから」
「レゲエダンスがイマイチ分からない…」
タクがスマホを出して検索を始め、私が着替えに行こうとしたとき
「こんにちは~。えぇ、Kingと緑川さんだ。こんにちは。あ、才花さんのお迎えですか?」
香さんがジムに入って来た。
「先生、このあと詰まってます?」
「次は1時間後だね」
「ちょっと補助に立って頂いていいですか?」
「いいよ。何の補助?」
「体操みたいな。たぶん出来る感覚ですけど…」
「ああ、オーケーだよ」
「すみません。お願いします」
私が後ろ向けにゆっくり手を下ろしてブリッジすると
「補助いる?うちに来てる人も壁なしで、これは出来ないと思うけど」
という声を聞きながら、足を床から離して半円を描いて手の方へ…ゆっくりバク転をする要領だ。
「体操選手だね」
「先生のおかげで、上半身の感覚は問題ないです。ちょっと跳ぶので下がってもらっ…」
「跳ぶ?バク転?補助するよ」
「危ない時に頭を掬い上げてもらえばいいので」
「オーケー」
私は先生が言ったように、反復トレーニング以外の感覚を確かめるように、くるくるとバク転したあと、片手でバク転…途中で止まって…おぉ、止まれるね。
「才花」
「っと…羅依、お迎えありがとう」
私が逆立ちで歩いていたところへ、羅依とタクが来てくれた。
「何やってんだ?」
「筋トレ以外の動作確認だよ」
「羅依、サイサイはちょっとおかしいんだよ。ダンスの動きを取り入れるかと思えばそうじゃなく、くるくると体操選手の床運動を始めるんだ。補助もなしでね」
「先生のメニューのおかげで上半身の感覚が以前のままなんです。ありがとうございます」
「……才花ちゃん、トレーニングもヤンチャ系?」
「まさか。おとなしくゆっくりストレッチみたいなもんだよ…こうして…」
ゆっくりと体を反らせて床に手をついて足で円を描き、ゆっくり片足ずつ着地する。
「ゆっくりの方が難しいだろ?」
「別物だね。これはストレッチの感覚だもの」
羅依が私の様子を窺っているようだが、本当にどこも何ともない。
「膝の細かい動きは以前のようにいかないけどね」
「サイサイの言う‘以前のように’は世界のトップレベルだからね。もう普通の一般人のレベル以上に上手に踊れるだろうね。サイサイは何が踊れるの?ヒップホップだけ?」
「レゲエ」
「レゲエ?」
「そう、レゲエダンスは一応オーケー。遊びでやってたから」
「レゲエダンスがイマイチ分からない…」
タクがスマホを出して検索を始め、私が着替えに行こうとしたとき
「こんにちは~。えぇ、Kingと緑川さんだ。こんにちは。あ、才花さんのお迎えですか?」
香さんがジムに入って来た。
48
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~
けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。
私は密かに先生に「憧れ」ていた。
でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。
そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。
久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。
まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。
しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて…
ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆…
様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。
『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』
「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。
気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて…
ねえ、この出会いに何か意味はあるの?
本当に…「奇跡」なの?
それとも…
晴月グループ
LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長
晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳
×
LUNA BLUホテル東京ベイ
ウエディングプランナー
優木 里桜(ゆうき りお) 25歳
うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。
冷たい外科医の心を溶かしたのは
みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。
《あらすじ》
都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。
アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。
ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。
元々ベリカに掲載していました。
昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる