15 / 120
文目も分かず 6
しおりを挟む
「まだ何も言っていませんが?話の順序が違います」
ひどく冷ややかな羅依は怖くも見えるけれど、香さんは怖そうにすることなく興味津々という感じだ。
「退院するな?」
「うん」
「いい子」
その時、コンコンコン…扉がノックされたけれど開かないので、ナースではなさそうだと洋輔さんが‘はい’と言いながら扉をスライドさせた。
「失礼します。○○署の吉井です、田村です。大島さんはお休み中ですか?」
「いえ、どうぞ」
ケガをした日、検査の合間に少し話をした警察の方なので、姿は見えないけれど入ってもらう。吉井さんは男性、田村さんは女性だ。
「あ、お見舞いの方がたくさん…って、藤堂さんと緑川さん」
「ご苦労様です、吉井さん。警察が才花ちゃんに何か用事?」
「はい。でも…」
吉井さんは羅依とタクを知ってるようだけれど、ここで話してもいいのかと私を見た。
「かまいません。何か?」
あのときは、誰かとトラブルはないかと聞かれて‘ない’と応え、スーツケースの主である西河京子49歳を知っているかと聞かれて‘知らない’と応えただけだ。
「大島さんのスマホを見せて頂けますか?」
「任意だとちゃんと言え」
「藤堂さん、厳しいですね。実は、西河京子が駅の階段から転落して骨折、入院しました」
「ニシカワキョウコって誰ですか?」
「この方は部外者でしたか。田村、連れて出て、待ってもらって」
「はい」
「ちょっと、私は家族のようなものよっ」
瘤に響く大声を出した香さんに驚いてビクッとしてから
「居てもらっていいので話を進めてください」
と私が言うと、羅依が私の頭を一度ポンとしてからクルクルと撫でる。
さっき洋輔さんが羅依たちにいろいろ説明する中で西河京子ってことまで言ってたと思うけど、彼女は聞いていなかったのだろう。
「西河京子本人が‘誰かに押された’と証言しているので、タイミング的に申し訳ないですが…」
「チッ…才花が誰かに指示していないか、任意で協力しろってことだな?」
「才花ちゃん、そんな余裕ないけどねぇ。疑われた鬱憤ばらしに拒否していいよ。警察がデータ集める手間をかけてやれば?」
「…タク…面倒くさいこと考えるんだね。どうぞ」
私はここに来てから、一度も発信も送信もしていないスマホを吉井さんに差し出した。
ひどく冷ややかな羅依は怖くも見えるけれど、香さんは怖そうにすることなく興味津々という感じだ。
「退院するな?」
「うん」
「いい子」
その時、コンコンコン…扉がノックされたけれど開かないので、ナースではなさそうだと洋輔さんが‘はい’と言いながら扉をスライドさせた。
「失礼します。○○署の吉井です、田村です。大島さんはお休み中ですか?」
「いえ、どうぞ」
ケガをした日、検査の合間に少し話をした警察の方なので、姿は見えないけれど入ってもらう。吉井さんは男性、田村さんは女性だ。
「あ、お見舞いの方がたくさん…って、藤堂さんと緑川さん」
「ご苦労様です、吉井さん。警察が才花ちゃんに何か用事?」
「はい。でも…」
吉井さんは羅依とタクを知ってるようだけれど、ここで話してもいいのかと私を見た。
「かまいません。何か?」
あのときは、誰かとトラブルはないかと聞かれて‘ない’と応え、スーツケースの主である西河京子49歳を知っているかと聞かれて‘知らない’と応えただけだ。
「大島さんのスマホを見せて頂けますか?」
「任意だとちゃんと言え」
「藤堂さん、厳しいですね。実は、西河京子が駅の階段から転落して骨折、入院しました」
「ニシカワキョウコって誰ですか?」
「この方は部外者でしたか。田村、連れて出て、待ってもらって」
「はい」
「ちょっと、私は家族のようなものよっ」
瘤に響く大声を出した香さんに驚いてビクッとしてから
「居てもらっていいので話を進めてください」
と私が言うと、羅依が私の頭を一度ポンとしてからクルクルと撫でる。
さっき洋輔さんが羅依たちにいろいろ説明する中で西河京子ってことまで言ってたと思うけど、彼女は聞いていなかったのだろう。
「西河京子本人が‘誰かに押された’と証言しているので、タイミング的に申し訳ないですが…」
「チッ…才花が誰かに指示していないか、任意で協力しろってことだな?」
「才花ちゃん、そんな余裕ないけどねぇ。疑われた鬱憤ばらしに拒否していいよ。警察がデータ集める手間をかけてやれば?」
「…タク…面倒くさいこと考えるんだね。どうぞ」
私はここに来てから、一度も発信も送信もしていないスマホを吉井さんに差し出した。
73
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~
けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。
私は密かに先生に「憧れ」ていた。
でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。
そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。
久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。
まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。
しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて…
ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆…
様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。
『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』
「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。
気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて…
ねえ、この出会いに何か意味はあるの?
本当に…「奇跡」なの?
それとも…
晴月グループ
LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長
晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳
×
LUNA BLUホテル東京ベイ
ウエディングプランナー
優木 里桜(ゆうき りお) 25歳
うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。
冷たい外科医の心を溶かしたのは
みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。
《あらすじ》
都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。
アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。
ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。
元々ベリカに掲載していました。
昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる