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文目も分かず 2
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ガシッと片腕を私の腰に巻きつけて支えてくれた男の声を知っている。
ヤダ…どうして会うの…
慌てて男から離れようとした私の左足には力が入らず痛みだけを感じて、更なる崩壊感を覚える。
「ん」
私をたて向きに抱き上げた男を見て
「え…っ…?」
私の脳は混乱を窮める。
声はあの夜の男に違いない。
でも顔を見るとカフェで見ることのある、サングラスと髭の人だ。
話したことはない。彼はいつも誰かと一緒にカフェに来て注文は人に任せたまま席につくから。
「この子、知り合いだから預かる」
男は車椅子を持つナースにそう言うとゆっくりと歩き始める。
「ちょっ…と…どこ…」
「どこに行きたい?」
声を聞くとやっぱり混乱する私は、彼のサングラスに手を掛けてそっと外した。
「ん?一人で答え合わせか?」
何と応えるのが正解なのだろう。でも…
「…何も考えたくない…」
「そうか。眠るか?」
「…どうでもいい」
「ん、そうか。今日も俺好みだ」
誰でも、何でも好みなんだね。
「違う」
相変わらず冷たい声で私の心の声を否定した男の言葉と、エレベーターの到着を告げる電子音が同時に聞こえた。どこへ行くつもりだろうか。
「え…才花ちゃん?どうした?こんなところで…」
「…ぇっ…きんぐ?」
洋輔さんの声がしてエレベーターを見ると、洋輔さんの隣の香さんが何か言うけれど私にはわからない。
「あの仕事は…言わないで…お願いします」
男の耳元でそう伝えると
「ん、大丈夫だ」
彼は私の後頭部をゆっくりと撫でた。そして降りようとする私に
「足、無理だろ」
そう言い抱き直す。
「才花さん…キングとどういう関係なの?」
「……」
香さんの言う意味が分からず、私はボーッと、袖がフレアになっているピンクカーディガンのボタンを全てとめてある香さんの胸元を見ていた。
ヤダ…どうして会うの…
慌てて男から離れようとした私の左足には力が入らず痛みだけを感じて、更なる崩壊感を覚える。
「ん」
私をたて向きに抱き上げた男を見て
「え…っ…?」
私の脳は混乱を窮める。
声はあの夜の男に違いない。
でも顔を見るとカフェで見ることのある、サングラスと髭の人だ。
話したことはない。彼はいつも誰かと一緒にカフェに来て注文は人に任せたまま席につくから。
「この子、知り合いだから預かる」
男は車椅子を持つナースにそう言うとゆっくりと歩き始める。
「ちょっ…と…どこ…」
「どこに行きたい?」
声を聞くとやっぱり混乱する私は、彼のサングラスに手を掛けてそっと外した。
「ん?一人で答え合わせか?」
何と応えるのが正解なのだろう。でも…
「…何も考えたくない…」
「そうか。眠るか?」
「…どうでもいい」
「ん、そうか。今日も俺好みだ」
誰でも、何でも好みなんだね。
「違う」
相変わらず冷たい声で私の心の声を否定した男の言葉と、エレベーターの到着を告げる電子音が同時に聞こえた。どこへ行くつもりだろうか。
「え…才花ちゃん?どうした?こんなところで…」
「…ぇっ…きんぐ?」
洋輔さんの声がしてエレベーターを見ると、洋輔さんの隣の香さんが何か言うけれど私にはわからない。
「あの仕事は…言わないで…お願いします」
男の耳元でそう伝えると
「ん、大丈夫だ」
彼は私の後頭部をゆっくりと撫でた。そして降りようとする私に
「足、無理だろ」
そう言い抱き直す。
「才花さん…キングとどういう関係なの?」
「……」
香さんの言う意味が分からず、私はボーッと、袖がフレアになっているピンクカーディガンのボタンを全てとめてある香さんの胸元を見ていた。
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