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後日談 9

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「選ぶのはもちろんいいけど…たくさんの人の時間を無駄にしちゃう…どうしよう…お父さん」
「はははっ、いいか、綸。こんなことはこれから何度でも起こる。俺たちがいろんな意味で特別な目で見られているからだ。これくらいの時間の無駄なんてたった数時間だろ?問題ないぞ。高須の嫁がえらい言われようなまま買い物し続ける方が俺たちには問題だ。楽しんでいるところ悪いが、高須の面子を立てて今日は引き上げてくれ」

 お父さんが困ったように笑い私の頭をポンポンと叩くから、なんだか涙が出そうになった。

 その夜遅くマンションに帰った私は正宗と二人になった途端、気が抜けたように一気に疲れを感じた。

「綸?」

 着替えるでもなく、お風呂に入るでもなくソファーに座ったままボーッとする私をすでにシャツを脱いだ正宗が覗き込む。両手を伸ばすと

「ん?甘えたか?」

 と嬉しそうに私を抱きしめてくれる彼の胸に耳を当て目を瞑り、ただ彼の鼓動を聞く。彼は何も言わず私の気の済むまでそっと背中を撫でてくれるだけだ。

「私…今日…高須のみんなに悪い事をしちゃったな。もちろんお父さんや正宗にも…」
「何も悪くないだろ?」
「正宗が‘終わりだ、帰る’って言ったときに帰るべきだったでしょ?」
「そんなこと気にしなくていい。お前は何でも思ったようにしていいんだぞ」
「でも…」
「高須の面子が…とか親父が言ってたから気にしてるのか?」

 その通りだ。お父さんにも正宗にも皆にも申し訳ないと思うところは…

「あんなの気にすることないぞ。親父も俺も一般人相手に面子なんて大して気にしてない。だが、お前が同じような目にあうことは今後必ずある。だから教えたんだよ、こうやって引いて無視して帰って来いと。そうでないと今日以上の事を言われるぞ…悪いがお前の家族はそんな家柄だ。そしてな…綸があれ以上の事を言われたら俺だけじゃなく親父も暴れるな…あれは今日も我慢してたぞ」

 彼はそう言うと、くっくっと喉を鳴らした。
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