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第十話 7

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「綸、いい表情だな」

 組長さんが独り言のように言ったあと

「正宗、守れよ。皆も綸を頼む」

 と頭を下げ、黒スーツたちが

「「「「「「承知」」」」」」
「うるさーいっ!!黙りなさいっ!!」

 金切り声の方を向くと姐さんが震える両手で銃をこちらへ向けているのが見えたが、一瞬で黒スーツたちに前方を塞がれ視界が閉ざされた。正宗は相変わらず私の髪を撫で、いつの間にかすぐ後ろに潤と駿がいる。

「そんな女、ここに出入りさせるものですかっ!!」

 ヒステリックな声だけが響き異様な雰囲気の中、組長さんの声がする。

「俺は今しがた‘綸を頼む’と言ったんだが、お前はそれをわかって、そんな物騒なものを綸に向けているのか?」
「当たり前ですっ!あなたたち、そこを退きなさいっ!」
「組長の俺の決定に逆らうんだな…ここまでは好きにさせていたが…未来ある正宗と綸に負の遺産を残す訳にはいかない、処分する」

 姐さんとヨウが連れて行かれた後、組長さんが簡単にしてくれた話は、以前から問題行動ばかりの姐さんを今、私に銃を向けたことがきっかけで処分することができた。怖い思いをさせて申し訳ない。処分は離れに軟禁という形になるので対応を徹底するため今日は失礼するが、今度食事を一緒にしよう。今後ここへは自由に出入りしてくれ。そう言って部屋を出ていきかけた組長さんはくるっと戻ってくると

「綸、連絡先を交換しよう」
「いらねぇ」
「いや、いるだろ。綸、これがプライベートな方だ」
「いらねぇ」
「正宗に言ってねぇ。綸」

 最後は渋い声を低く響かせアドレス交換を済ませた組長さんは

「必ず近々、食事に誘うからな」

 と足早に出ていった。すぐに今泉先生が

「綸ちゃん、一回伸ばして体重かけたやろ?しばらくこれ使い」

 とサポーターを持って来てくれたのでありがたく受け取った。そして先生は正宗に短く告げて出ていった。

「京太から、飯食って行けと伝言」

 そして……大きなテーブルをふたつ合わせ、私たちを含め20人ほどで食事を前にする。

 私たち4人と、正宗の車の前後についている8人、瀬口さんの後に正宗付きだった2人、情報という仕事する私のことも調べた人や本家にいながら正宗をサポートする人が数名。そして食事を準備して下さった京太さん親子だ。
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