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第六話 8
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「…正宗…近い」
「ああ、近づいてるからな」
「ちょっと…話しにくい」
「離れたら言うか?」
私がコクコク頷くと、彼はくくっと喉で笑い私の鼻にキスしてほんの少し顔を離した。こういう甘い戯れは慣れないどころか初めてで自分の顔が熱を持ったのがわかり、彼の胸に手を当て体ごと離れようとするが離れられない。
「真っ赤、綸。可愛い」
そう言って彼は一度離れた顔を再接近させたかと思うと唇を重ねた。すぐに彼の舌は私の唇を割り歯並びを確かめるように上に下になぞり動く。後頭部の彼の手に力が入り、彼はさらに大きく口を開けると私の舌を奥の方から引き出すようにねっとりと絡め取る。片腕で体を強く引き寄せられ、自分の乱れた呼吸に合わせて上下する胸が彼に密着している。口から唾液がこぼれ落ちると思った時、ジュッと彼は音を立ててそれを吸い最後はチュッと小さな音を立て唇を離した。
ローソファーに似合わない長い脚をもて余した彼は片膝を立てると、その脚で私を囲い込むように座り直しまたもや聞いてくる。
「で?何があった?」
「どうして…何かあった、じゃなく何があった、なの?」
「お前の瞳の色を見ればわかる」
私が思うよりも遥かに彼は人の表情、そして目の動きや色に敏感なのかもしれない。
もし彼が生まれ育った環境がそうさせたのならば、生まれた時から普通一般とは違う私たちは似ていて理解し合えるのかもしれない。
「本当に何もないの。ただ急に27年間で初めてというものに囲まれて、どうすればいいいか、どう受け止めようか、どう理解しようかと考えたいんだけど、その考えるのが面倒になったというだけ」
正宗は良く言えましたとばかりに私の唇に軽くキスを落とすと
「頭で考えないで生活しながら感じればいい。どうもしなくていい。好きなように過ごせ。それがわからないなら俺とこうしてずっと一緒にいればいい。それだけだ」
「…正宗や潤たちの当たり前がわからないから戸惑ってるっていうのもある」
「ん?例えば?」
「何故、さっきお重やお皿を洗って片付けなくてよかったの?」
「綸、そうやってひとつずつ聞けばいい」
そして彼はとても丁寧に説明をしてくれた。
「ああ、近づいてるからな」
「ちょっと…話しにくい」
「離れたら言うか?」
私がコクコク頷くと、彼はくくっと喉で笑い私の鼻にキスしてほんの少し顔を離した。こういう甘い戯れは慣れないどころか初めてで自分の顔が熱を持ったのがわかり、彼の胸に手を当て体ごと離れようとするが離れられない。
「真っ赤、綸。可愛い」
そう言って彼は一度離れた顔を再接近させたかと思うと唇を重ねた。すぐに彼の舌は私の唇を割り歯並びを確かめるように上に下になぞり動く。後頭部の彼の手に力が入り、彼はさらに大きく口を開けると私の舌を奥の方から引き出すようにねっとりと絡め取る。片腕で体を強く引き寄せられ、自分の乱れた呼吸に合わせて上下する胸が彼に密着している。口から唾液がこぼれ落ちると思った時、ジュッと彼は音を立ててそれを吸い最後はチュッと小さな音を立て唇を離した。
ローソファーに似合わない長い脚をもて余した彼は片膝を立てると、その脚で私を囲い込むように座り直しまたもや聞いてくる。
「で?何があった?」
「どうして…何かあった、じゃなく何があった、なの?」
「お前の瞳の色を見ればわかる」
私が思うよりも遥かに彼は人の表情、そして目の動きや色に敏感なのかもしれない。
もし彼が生まれ育った環境がそうさせたのならば、生まれた時から普通一般とは違う私たちは似ていて理解し合えるのかもしれない。
「本当に何もないの。ただ急に27年間で初めてというものに囲まれて、どうすればいいいか、どう受け止めようか、どう理解しようかと考えたいんだけど、その考えるのが面倒になったというだけ」
正宗は良く言えましたとばかりに私の唇に軽くキスを落とすと
「頭で考えないで生活しながら感じればいい。どうもしなくていい。好きなように過ごせ。それがわからないなら俺とこうしてずっと一緒にいればいい。それだけだ」
「…正宗や潤たちの当たり前がわからないから戸惑ってるっていうのもある」
「ん?例えば?」
「何故、さっきお重やお皿を洗って片付けなくてよかったの?」
「綸、そうやってひとつずつ聞けばいい」
そして彼はとても丁寧に説明をしてくれた。
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