彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

光と影 8

先に到着していた組員、前後の車の組員らが左右に並ぶ。社長業ではやらない‘組仕様’だ。

車を降りても女には見向きもせず…本来は見えることもないが、うちの優秀な組員は女からこちらがよく見えるスペースを空けている…車内に手を差し出すと、冷たい無表情のまま玖未が俺の手を取り車を降りた。

「「「「「「お疲れ様です」」」」」」

ここでも無表情のままだった玖未が

「若、先に子どもと嫁がプールに入らせてもらってます」
「お先に始めさせていただいてます」
「子どもより…嫁が待ちきれませんでした、すみません」

という組員たちの声を聞いて、くるくると瞳を動かす。マンションで顔見知りの家族のパズルをしているのだろう。

「皆、戻って家族サービスしてきてくれ。すぐに行く」
「「「ありがとうございます」」」
「玖未さん、嫁も子どもも待ってるんで早く来て下さい」

ペコリ…

「玖未～待ってたよ～」
「彼女を更衣室へ案内して下さい」

野沢がホテルスタッフに告げると

「かしこまりました」

スタッフ1名が女を案内し始める。しかし

「玖未は？一緒に行こうよ」

女がドスコイと踏ん張って、玖未を呼んだ。

「申し訳ございません。玖未さんは若とお部屋をご利用になりますのでご一緒はされません。後程、プールで」

丁寧に腰を折ったヤクザ顔の津川を見て女は何を思うか…これくらいで何も気づくような奴ではないか。