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感情、知性の複合体 10

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裕子さんの髪は、今は肩に当たらないくらいだけれど、以前はロングでセルフアレンジが得意だったらしい。くるくると私の髪を巻いたのにさっさと編むので不思議に思っていると

「ストレートのまま編んでもふわりとしたボリュームが出ないでしょ?装いが大人だから、纏まりすぎると老けて見える可能性がある。だから玖未ちゃんの年齢にあったゆるふわに仕上げるわね。シンプルなワンピースには髪もアクセサリーよ」

話をしながらも手を動かす裕子さんは、両サイドをロープ編み…ひとつにまとめてくるりんぱ…毛先をゆるく三つ編みして完成…いい感じにほぐして…と説明もしてくれているようだが、私にはさっぱり分からない。

もう自分が使わなくなった物でごめんね、と言いながらパールを散らしてから

「三面鏡で見ておいで」

洗面所へと私の背中を押した。私は初めてのヘアアレンジに少しドキドキしながら両サイドの鏡を使って後ろを見ると…自分じゃないみたいだ。

「あ…プリンセスっぽい…可愛い…」

「裕子さん、ありがと…可愛い」
「気に入った?」

コクン…じゃない…

「すごく気に入った」
「よかった。あとは社長がエスコートしてくれるから心配ないわよ。大きな口を開けて美味しく食べて来て」

コクン…

「あそこ美味しいのよ。玖未ちゃん、お酒も飲むんでしょ?ここで全快祝いに飲んだって聞いたわ」
「少し…」
「楽しんで来てね」
「裕子さん、ありがとうございました」
「またいつでも呼んでね」

そう言って玄関に向かう裕子さんは

「どのパンプスも、デニムとかにも合うわよ?普段から履いてね」

と手を振って帰りそうになったので

「待って」

私は慌てて冷蔵庫まで行くと、スーパーで用意していたイチゴを2パック袋に入れた。

「これ…ありがとうのお礼です…ちょっとだけ」
「わぁ、嬉しい。大好きなのよ、イチゴ。遠慮なく頂くわね。ありがとう、玖未ちゃん」

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