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part 7-5

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「ん、紗栄子。それは空雅に渡せ」

龍之介が立ち上がりながらそう言うと、空雅さんが私の手からトレイを取る。そして手招きする龍之介の方へ私が行くと、龍之介は奥に行くようだ。

「仕事と紗栄子の買い物の話は別。奥で相談」

奥へ向けて長い足を運び始めた彼の背中を見て、いいのかなと思いながら福嶋さんや芦田さんを見ると、二人は頷きと手振りの二刀流を見せ、舞生さん空雅さんの二人はヒラヒラと手を振り、伊坂さんは無表情というか…まだ自分で判断出来ない私と似た感じなのかもしれない。

「紗栄子」
「あ、うん。伊坂さんに砂糖とミルクだなって見てただけ」

振り向いた龍之介の側へ駆け寄ると、彼は私の頭をポンポンとしてからそっと肩を抱いて奥へ向かう。

うん?連日こういう“よしよし”という感じで眠らせてもらっているから触れられるのが初めてではないけれど…

「スマホがまず必要」

龍之介は彼のプライベート空間のリビングのソファーに私を座らせ、自分も隙間なく隣に座ると私の手を握った。

「すっ、スマホっ…だねっ、うん…」
「慌てんな。時間はたっぷりある」

慌ててはいないけれど、今までと明らかに違う距離感にドキッと緊張する。

「一気に何もかも変化して、大切な家族が天国へ旅立ってしまった紗栄子にいつ伝えるかは…毎日考えても答えが出なかったが、今だと思う」

うん、と頷くしかない彼の視線は鋭くて暖かい、真っ直ぐに入ってくるバリトンと同じ真っ直ぐな視線。

「初めてカフェで見た時から、紗栄子の眼差しは俺を惹き付ける」

握られた手の指がゆっくりと絡められ、ピタリと手のひらが合わさり、手の甲は彼の長い指がしっかりと押さえる。

「俺とは無縁の透明な瞳…癒しの眼差しに魅了された」

初めてカフェで見た…

「…私が飛び出したから…事故って偶然だよね…」
「偶然の縁」
「その後の…カフェバーは?」
「俺が会いたいから、空雅のいる時に紗栄子が来たら連絡するように頼んでいた」

あの日、会えていなければ、あれだけ話をしていなければ…私は彼に助けを求められただろうか?

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