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part 7-3
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「若、いくつかご報告を伊坂からさせます。今、よろしいですか?」
そして芦田さんは自分よりずいぶんと若い龍之介に腰を折って聞く。
「ん」
私は全てのマグカップをトレイに乗せてから、今来た3人に珈琲を淹れた方がいいのかと思ったけれど、皆が出来ると聞いていることだし、しゃしゃり出るようなことは避けた方がいいと思い直してキッチンへ向かおうと…うん…?Tシャツの裾を龍之介が摘んだので立ち止まる。
「紗栄子、ん」
「…どうしたの…?」
「考えて飲み込んだことを言ってみろ」
「……ぁっと…芦田さんたちに…珈琲を淹れようか…どうしようとちょっと…」
「そうか、聞けなかったか?」
「…シャシャるなって…感じかなって」
「ぁーっ、それってあの家で家事を押し付けられ、シャシャるなとも言われ、ってこと?やっぱりあの時に仕留めたら良かったんだよ、龍」
空雅さんが唸るとパコッ…芦田さんが空雅さんの後頭部を叩いた。
「申し訳ありません」
ぐっと握りしめた両手を真っ直ぐ体の横に下ろした空雅さんは、さっきの芦田さんと比べ物にならないくらい深く腰を折ってから
「紗栄子さん、それキッチンに行く?オレも一緒に行くよ。珈琲も淹れたらいいし、昼飯一緒に考えませんか?仕事の話はつまらないでしょ?オレも関係ない話みたいなんで」
と私を見る。
「うん…そうするけど…空雅さん、混じってるのは返事が難しいので、丁寧に話すのを止めて欲しいです」
「あ、今わざと言葉混ぜた?頭いい子だね、了解」
空雅さんから龍之介に視線を移すと、彼はほんの僅かに頷いた。そして私と空雅さんがキッチンへ向かう後ろから
「紗栄ちゃん、考えてよ?」
と舞生さんの声がして
「何の話?」
隣を歩く空雅さんが私を見る。ここにいる人の中でダントツに細い空雅さんだけど、龍之介と空雅さんの2人が高身長だ。
「私が外出する時に誰とって話」
「そうなんだ。紗栄子さんはどこに行きたい?ってか、この口調に紗栄子さんは硬いよね?舞生式でいく?紗栄ちゃん?」
「大丈夫」
「やりたいことは?」
私はコーヒーメーカーに豆を準備して、彼は炊飯器を覗きながら話す。
そして芦田さんは自分よりずいぶんと若い龍之介に腰を折って聞く。
「ん」
私は全てのマグカップをトレイに乗せてから、今来た3人に珈琲を淹れた方がいいのかと思ったけれど、皆が出来ると聞いていることだし、しゃしゃり出るようなことは避けた方がいいと思い直してキッチンへ向かおうと…うん…?Tシャツの裾を龍之介が摘んだので立ち止まる。
「紗栄子、ん」
「…どうしたの…?」
「考えて飲み込んだことを言ってみろ」
「……ぁっと…芦田さんたちに…珈琲を淹れようか…どうしようとちょっと…」
「そうか、聞けなかったか?」
「…シャシャるなって…感じかなって」
「ぁーっ、それってあの家で家事を押し付けられ、シャシャるなとも言われ、ってこと?やっぱりあの時に仕留めたら良かったんだよ、龍」
空雅さんが唸るとパコッ…芦田さんが空雅さんの後頭部を叩いた。
「申し訳ありません」
ぐっと握りしめた両手を真っ直ぐ体の横に下ろした空雅さんは、さっきの芦田さんと比べ物にならないくらい深く腰を折ってから
「紗栄子さん、それキッチンに行く?オレも一緒に行くよ。珈琲も淹れたらいいし、昼飯一緒に考えませんか?仕事の話はつまらないでしょ?オレも関係ない話みたいなんで」
と私を見る。
「うん…そうするけど…空雅さん、混じってるのは返事が難しいので、丁寧に話すのを止めて欲しいです」
「あ、今わざと言葉混ぜた?頭いい子だね、了解」
空雅さんから龍之介に視線を移すと、彼はほんの僅かに頷いた。そして私と空雅さんがキッチンへ向かう後ろから
「紗栄ちゃん、考えてよ?」
と舞生さんの声がして
「何の話?」
隣を歩く空雅さんが私を見る。ここにいる人の中でダントツに細い空雅さんだけど、龍之介と空雅さんの2人が高身長だ。
「私が外出する時に誰とって話」
「そうなんだ。紗栄子さんはどこに行きたい?ってか、この口調に紗栄子さんは硬いよね?舞生式でいく?紗栄ちゃん?」
「大丈夫」
「やりたいことは?」
私はコーヒーメーカーに豆を準備して、彼は炊飯器を覗きながら話す。
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