57 / 224
part 6-10
しおりを挟む
「ん。福嶋」
「はい、では紗栄子さん。私がこちらで見せてもらって彼らの要求などの概要はお伝えします」
「スミマセン…お願いします」
「大丈夫だ、紗栄子。このまま福嶋にスマホを預けて、紗栄子は新しい物を持てばいい」
「名義変更もまだ出来ていませんからね。これはお預かりして、上村紗栄子さんのスマホを購入するのがいいですね」
コクン…
「ボクも見せてね。えっと…最初はああ、紗栄ちゃんの予想通り、やっぱりダメだったって言いたいんだよね、このババァ。お母さんがあんなに素敵な最後の1時間を過ごしたってことを知らないんだ、くっそが付くババァ。こいつにはあんなに穏やかな最期は迎えられない、絶対に。で、そう言ったあとの“あなたには清水しかないでしょ?”はぁ?」
「そんな感じだよ、いつも…お義母さんの通常運転だよ。腹を立てるのがもったいないの」
なるほど、紗栄子のいた環境がよく分かる。俺は紗栄子の頭を撫でながら、福嶋と舞生がうまい具合に丸くしたサマリーを聞く。
「3人が3日間、同じことが言いたいんだね…こんなにしつこいと、私を売りたいってバレると思わないのかな?まあ、いつも“無知だ”“トロい”って言われるから…」
「頭が悪いのはコイツらだ。紗栄子を差し出そうが、情報を流したとされる自分たちの信頼は回復しないのだから組に近い、監視があるようなところで捨て駒の働きを強いられるに決まっている。組の関係者という仕事をしてきてそれがわからないはずはないが、今の内容を聞く限り浅はか過ぎて相手になる必要はない」
紗栄子は両手で持ったマグカップに口をつけてから
「もしかしたら…自分たちの行く末は分かっていて、私だけが逃げたみたいに思ってるのかな?」
そう言ってチラッと俺を見る。
「あり得るかもな。それなら、要らぬ妬みを警戒はすべきだ」
頭が悪い奴はとことんゲスいことがある。
「紗栄子、清水への対応と警戒は福嶋に任せる。いいな?」
「はい」
「清水なんかに帰るワケがない。紗栄子の家はここだ。離婚届の提出の際に公的に届け出ている」
改めて言わないと、紗栄子はまだまだここが家だと思えない。
「ここまでは紗栄子がこれまでに知っている話。ここからは新しい話。紗栄子の未来を紗栄子が自由に動かして行くための話だ。聞けるか?」
「はい、では紗栄子さん。私がこちらで見せてもらって彼らの要求などの概要はお伝えします」
「スミマセン…お願いします」
「大丈夫だ、紗栄子。このまま福嶋にスマホを預けて、紗栄子は新しい物を持てばいい」
「名義変更もまだ出来ていませんからね。これはお預かりして、上村紗栄子さんのスマホを購入するのがいいですね」
コクン…
「ボクも見せてね。えっと…最初はああ、紗栄ちゃんの予想通り、やっぱりダメだったって言いたいんだよね、このババァ。お母さんがあんなに素敵な最後の1時間を過ごしたってことを知らないんだ、くっそが付くババァ。こいつにはあんなに穏やかな最期は迎えられない、絶対に。で、そう言ったあとの“あなたには清水しかないでしょ?”はぁ?」
「そんな感じだよ、いつも…お義母さんの通常運転だよ。腹を立てるのがもったいないの」
なるほど、紗栄子のいた環境がよく分かる。俺は紗栄子の頭を撫でながら、福嶋と舞生がうまい具合に丸くしたサマリーを聞く。
「3人が3日間、同じことが言いたいんだね…こんなにしつこいと、私を売りたいってバレると思わないのかな?まあ、いつも“無知だ”“トロい”って言われるから…」
「頭が悪いのはコイツらだ。紗栄子を差し出そうが、情報を流したとされる自分たちの信頼は回復しないのだから組に近い、監視があるようなところで捨て駒の働きを強いられるに決まっている。組の関係者という仕事をしてきてそれがわからないはずはないが、今の内容を聞く限り浅はか過ぎて相手になる必要はない」
紗栄子は両手で持ったマグカップに口をつけてから
「もしかしたら…自分たちの行く末は分かっていて、私だけが逃げたみたいに思ってるのかな?」
そう言ってチラッと俺を見る。
「あり得るかもな。それなら、要らぬ妬みを警戒はすべきだ」
頭が悪い奴はとことんゲスいことがある。
「紗栄子、清水への対応と警戒は福嶋に任せる。いいな?」
「はい」
「清水なんかに帰るワケがない。紗栄子の家はここだ。離婚届の提出の際に公的に届け出ている」
改めて言わないと、紗栄子はまだまだここが家だと思えない。
「ここまでは紗栄子がこれまでに知っている話。ここからは新しい話。紗栄子の未来を紗栄子が自由に動かして行くための話だ。聞けるか?」
63
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
警察官は今日も宴会ではっちゃける
饕餮
恋愛
居酒屋に勤める私に降りかかった災難。普段はとても真面目なのに、酔うと変態になる警察官に絡まれることだった。
そんな彼に告白されて――。
居酒屋の店員と捜査一課の警察官の、とある日常を切り取った恋になるかも知れない(?)お話。
★下品な言葉が出てきます。苦手な方はご注意ください。
★この物語はフィクションです。実在の団体及び登場人物とは一切関係ありません。
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる