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part 6-8

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「あれは…普通に動け始めたようで、彼女の普通が息苦しいものだと明白になる言動ですね」
「表情もな。かと言って、ベッドルームで生きていくワケにはいかねぇ」
「龍なら世話するだろうけど」

ニヤニヤしてんじゃねぇ、舞生。

飼うように手元に置きたいとは思わない。もっといろんな表情を見たいと思う。

「お待たせしました…」
「ミルクは?」
「…パックごと持って来てもいい?」
「ん。トレイはもらう」

カフェでカフェオレを飲んでいたように、紗栄子はブラックを好まない。だけど、自分だけのミルクを持って来られないのだ。

「このマグにしたんだ。紗栄ちゃん、こんなのが好き?」
「なんかモロッコとかのイメージの柄がマグの厚さとぴったりだなって。で、底を見たら“Made in Japan”って書いてあった」
「いつも見る?」
「見るのかなぁ…Chinaしか見なかったのが、最近VietnamとかMalaysia、Myanmarって見掛けるね」
「ははっ…めっちゃ見てるじゃん」

舞生がそう言うと、着ている長袖Tシャツの左裾を捲って

「わ…何処で買えば、Made in JapanのTシャツになるんだろ…」

と紗栄子が呟いた。

「上手に淹れられてる、うまい」
「マシンだからね」
「豆の数がピッタリだったんだろ。スマホ見ていいか?」
「うん」
「紗栄子さん、充電器ごと私が動かします」

コクンと福嶋に応えた紗栄子には、清水から逃げられない諦めが見えなくもない。ひとつずつクリアするしかないな。大丈夫だと言って裏で済ませるのが手っ取り早いが、それでは紗栄子に言葉を飲み込ませることになる。

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