36 / 224
part 4-7
しおりを挟む
「紗栄子、食べながら話をする。ホスピスに急ぎたいからな」
「…あ…ぁりが…と」
「頷くだけでもいい。しっかり食え」
サラダをモグモグとしながら応えた彼女に言うと、コクン…それでいい。
「ホスピスの名前は?」
すでに知っているがな。
「○○園」
「あ、そこに紗栄ちゃんのお母さんがいるの?」
コクン…
「そこならボクとくうちゃんが行ったことあるよ」
コテン…?
「縁があって、数ヶ月前から組から寄付をしているホスピスです。寄付の目録を舞生たちが届けました。良かったです、紗栄子さん。そこなら藤堂の車で堂々と入って行けますから」
ゴクン…
「ありがとうございます…でも電車で行け…」
「その足で?」「ダメです」
「…福嶋兄弟…息ピッタリ…」
「紗栄子さん、話を逸らさないで。おとなしく車で行きますよ?」
「……ここに…丁寧語の人がいるんですけど…?」
「ぶっ…紗栄ちゃん、カッコいい反抗期?兄貴はいつもこんなのだよ。車だよ?」
「…お願いします」
足が治ったって車に決まってるが、そこは追々話そうか。
「フルーツサンドが好きか?」
フルーツサンドをうまそうに食うモグモグを一旦固まらせた紗栄子が頷いたあと
「フルーツが好き」
「ん?それで?」
たぶん、続く言葉は飲み込んだ。
「…お母さんも…同じなの…」
「ん、紗栄子がそうして伝えてくれるといくらでも動ける」
「動ける?」
「人手は多い。ここにいる紗栄子ももう家族だ。皆が紗栄子に協力する」
「…藤堂さん、ありがとう…ちゃんとお礼はするので…母の頑張っている間は…あと少しだけは…」
頭を下げたのか項垂れたのかはわからない。
「紗栄子」
頬に触れた時に唇を震わせていた彼女は、俺と視線が合う時には奥歯を噛み締めた。
「まず、藤堂を何とかしてくれ」
「…龍之介さん?」
「えーっ、紗栄ちゃん、長くない?」
「黙れ、舞生」
「……龍之介って…いい名前を省略するのもどうでしょう?」
「今の…今の呼び捨てでかまわない。ここの皆を呼び捨てでいいぞ」
「…あ…ぁりが…と」
「頷くだけでもいい。しっかり食え」
サラダをモグモグとしながら応えた彼女に言うと、コクン…それでいい。
「ホスピスの名前は?」
すでに知っているがな。
「○○園」
「あ、そこに紗栄ちゃんのお母さんがいるの?」
コクン…
「そこならボクとくうちゃんが行ったことあるよ」
コテン…?
「縁があって、数ヶ月前から組から寄付をしているホスピスです。寄付の目録を舞生たちが届けました。良かったです、紗栄子さん。そこなら藤堂の車で堂々と入って行けますから」
ゴクン…
「ありがとうございます…でも電車で行け…」
「その足で?」「ダメです」
「…福嶋兄弟…息ピッタリ…」
「紗栄子さん、話を逸らさないで。おとなしく車で行きますよ?」
「……ここに…丁寧語の人がいるんですけど…?」
「ぶっ…紗栄ちゃん、カッコいい反抗期?兄貴はいつもこんなのだよ。車だよ?」
「…お願いします」
足が治ったって車に決まってるが、そこは追々話そうか。
「フルーツサンドが好きか?」
フルーツサンドをうまそうに食うモグモグを一旦固まらせた紗栄子が頷いたあと
「フルーツが好き」
「ん?それで?」
たぶん、続く言葉は飲み込んだ。
「…お母さんも…同じなの…」
「ん、紗栄子がそうして伝えてくれるといくらでも動ける」
「動ける?」
「人手は多い。ここにいる紗栄子ももう家族だ。皆が紗栄子に協力する」
「…藤堂さん、ありがとう…ちゃんとお礼はするので…母の頑張っている間は…あと少しだけは…」
頭を下げたのか項垂れたのかはわからない。
「紗栄子」
頬に触れた時に唇を震わせていた彼女は、俺と視線が合う時には奥歯を噛み締めた。
「まず、藤堂を何とかしてくれ」
「…龍之介さん?」
「えーっ、紗栄ちゃん、長くない?」
「黙れ、舞生」
「……龍之介って…いい名前を省略するのもどうでしょう?」
「今の…今の呼び捨てでかまわない。ここの皆を呼び捨てでいいぞ」
63
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる