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part 4-1
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「藤堂さん、ありがとう。表に出してくれて…ありがと……出られた…」
紗栄子の語尾が僅かに震えるのは当然だろう。
あんな野郎たちと毎日顔をつき合わせるのは、母親のことを除いても苦痛なはずで、さらに母親のことをあんな風に言われるなど心身が痛め付けられていたに違いない。
ヤクザだって親兄弟、家族のことをこれほどぞんざいに扱うことはない。
「紗栄子が手を伸ばした結果だ。よくやったな」
「…都合よく…ごめんなさい」
昨夜‘覚えておきます。幸せは知らないけれど甘い言葉が怖いことはよく知ってるんです’と俺に言ってからの今朝の連絡のことを‘都合よく’と言っているのだろう。
福嶋が紗栄子の頭をぶつけないように、車側と頭側に手でガードする後部座席に乗り込むと
「都合よくであろうが、身勝手なタイミングであろうが、求められれば必ず助けてやる。紗栄子にはそう感じたから手を伸ばせと言った。無責任に出来ないことは言わない」
俺は含むところなく応えるが、紗栄子は思い切りの悪い頷きしか見せない。
表に出られて嬉しく、ホッとしているのは母親を思っての本心で、それ以外は‘甘い言葉が怖いことはよく知ってる’という警戒心と諦めがあるのだろう。
「甘い言葉が怖いことはよく知ってると紗栄子は言ったが、俺は甘い言葉がそのまま紗栄子に甘い幸せをもたらすと証明する。覚悟しろ…これからの自分の幸せを」
裸足のままの紗栄子をシートに座らせていると
「若、署名済みの離婚届を受け取りました」
福嶋によって閉められかけていたドアの隙間から、最後に家を出たであろう組員の声が聞こえる。
「預かります」
福嶋の手に渡ったそれはおそらく、ヤクザ丸出しの取り立てがここに来ることを避けようと急いで清水親子が書いたのだろう。意味のない足掻きだ。
紗栄子の語尾が僅かに震えるのは当然だろう。
あんな野郎たちと毎日顔をつき合わせるのは、母親のことを除いても苦痛なはずで、さらに母親のことをあんな風に言われるなど心身が痛め付けられていたに違いない。
ヤクザだって親兄弟、家族のことをこれほどぞんざいに扱うことはない。
「紗栄子が手を伸ばした結果だ。よくやったな」
「…都合よく…ごめんなさい」
昨夜‘覚えておきます。幸せは知らないけれど甘い言葉が怖いことはよく知ってるんです’と俺に言ってからの今朝の連絡のことを‘都合よく’と言っているのだろう。
福嶋が紗栄子の頭をぶつけないように、車側と頭側に手でガードする後部座席に乗り込むと
「都合よくであろうが、身勝手なタイミングであろうが、求められれば必ず助けてやる。紗栄子にはそう感じたから手を伸ばせと言った。無責任に出来ないことは言わない」
俺は含むところなく応えるが、紗栄子は思い切りの悪い頷きしか見せない。
表に出られて嬉しく、ホッとしているのは母親を思っての本心で、それ以外は‘甘い言葉が怖いことはよく知ってる’という警戒心と諦めがあるのだろう。
「甘い言葉が怖いことはよく知ってると紗栄子は言ったが、俺は甘い言葉がそのまま紗栄子に甘い幸せをもたらすと証明する。覚悟しろ…これからの自分の幸せを」
裸足のままの紗栄子をシートに座らせていると
「若、署名済みの離婚届を受け取りました」
福嶋によって閉められかけていたドアの隙間から、最後に家を出たであろう組員の声が聞こえる。
「預かります」
福嶋の手に渡ったそれはおそらく、ヤクザ丸出しの取り立てがここに来ることを避けようと急いで清水親子が書いたのだろう。意味のない足掻きだ。
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