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第1章 異世界転移と旅立ち

第21話 鍛冶スキルと魔道具作成スキル

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 アントンのところで鍛冶を練習し始めて、ちょうど1週間が経った。

 最近の日課であるナイフを打っていると、

 『スキル鍛冶を取得しました。』

 そう聞こえたとたん、どの部分を打てばいいのか、どれくらいの力加減なのかが、なんとなく理解できた。

 《アリス!! 鍛冶のスキルを取得できたよ。 なんとなくだが理解できるようになった。》

 (おめでとうございます。 確かに金槌の音が違いましたね、がんばってください。)

 様々な事が理解できた事に嬉しくも、ナイフを1本打ってみる。
 昨日までとはぜんぜん違うように見える。

 「アントンさん! 見てください。」

 嬉しくて、アントンにナイフを見せると、

 「なかなかだな、もしや鍛冶スキルを取得したか?」

 「はい、取得したら叩く場所などがだいたい理解できるようになりました。」

 「スキル取得は普通では何ヶ月もかかるんだが・・・ まあいい。 おれも時間停止付与の効果がだいたい分かったから、付与を解除してくれ。 ありがとな。」

 そう言いながらナイフを2本渡してくる、時間停止付与効果を聞くと、

 ・物理的に破壊は不可能と思われる。
 ・熱や氷にも影響はなく、熱を遮断していると思われる。
 ・衝撃についてもナイフ自体は大丈夫だが、ナイフの向こうに衝撃を与えることは可能。
 ・錆びることも酸に侵される事もない。
 ・時間停止付与同士では、素材や耐久力が元の状態として扱われる。

 と言う事らしい、防具に応用する場合には対衝撃方法を考えなければいけないし、もし相手が時間停止付与の付いた武器で攻撃してきた事を考えると、元々の武器ランクが高いものが望ましい事が分かった。
 
 「こっちこそ、いろいろ知ることができました。 時間停止はもう解いたから普通のナイフですよ。」
 
 「おう、まだ鍛冶は続けるだろ? せっかくだから次は研磨や装飾、柄や鞘の作り方まで教えてやる。」

 「ありがとうございます。 よろしくお願いします。」

 その日も作業を再開し、
 さらに1週間後には大体の鍛冶技術を教えてもらった。
 最後のテストでナイフを作ってみたが、店に出してもいいくらいのナイフと言う事で合格が出た。 ちなみに鍛冶スキルはレベルが2になっていた。

 「ナイフはある程度出来ているから、剣も大丈夫だろ。 これからどうするんだ? 武器を自分で作ってもいいが、まだまだおれの武器の方がいいと思うぞ。」

 「武器は今のサーベルを使うつもりです、腕も未熟ですし、試してみたいこともあるので、また鍛冶をさせてもらいに来ても良いですか?」

 「それはかまわないぞ、ここ2週間を見てきて鍛冶に対する姿勢が気に入ったのもあるし、弟子が出来たみたいで嬉しかったぞ。 そういえば魔道具も作成したいと言っていたな、基本的なことは魔道具屋のラーレに聞いてみてくれ、エルフだが良い職人だぞ。 手紙も書いてやる。」


 お礼を言って、その手紙を魔道具屋に持っていく。
 
 「すいません。 ラーレさんはいらっしゃいますか。」
 
 「いらっしゃいませ、私がラーレですが。」

 カウンターには金髪で細身、耳のとがったエルフの女性が立っていた。
 心の中では「エルフだ!ファンタジー通りの美形だ!」と感動しながらも真面目な顔で話す。 ちなみにカバンの中からのアリスの視線は感じるが見ないようにしている。

 「始めまして、アントンさんから鍛冶を教えていただいているヤストと言います。 アントンさんから手紙を預ってきてますが、よろしければ魔道具について教えていただけませんでしょうか?」

 そう言って手紙を渡すと、黙って目を通す。

 「ヤストさんですね。 手紙の内容はごらんになられましたか?」

 「いえ、内容までは見ておりません。」

 少し嬉しそうに手紙を渡してきたので見てみると、


 ~ ラーレへ

   ヤストはなかなかいいやつで、おれの弟子みたいなもんだ。
   魔道具に関する事を教えてやってくれ。

       PS、前に言っていたナイフを作ってやるやら、教えてやってほしい。

                     アントン           ~


 簡潔に書いてあるが、前に言っていたナイフはなんの事だろうかと聞いてみると、

 「以前、宝石や魔石を組み込んだ装飾ナイフを注文したんですが、そんな装飾用は作らんと言って一蹴されたのですよ。 それを作ってくださるってことですね。 ヤストさんはアントンに相当気に入られたみたいですね。」

 「そうなんですか? まだ2週間ですが弟子として扱ってくれるのは素直に嬉しいです。」

 「ドワーフ族と言うこともあるでしょうが、職人は基本的には無愛想ですし気難しいですから、いいやつと言う事は気に入られてますよ。 分かりました。 魔道具のことはお教えしましょう。」

 エルフの女性に微笑みながら言われれば照れてしまうが、アントンに感謝しないといけない。 今度、修行がてらにインゴットを作って渡そう。

 「よろしくお願いします。」

 「それでは、魔道具に関して何が聞きたいのでしょうか?」

 「魔道具に関しての概要と、作成について教えていただきたいのですが、わたしは魔道具作成スキルも持っているのですが、まだまともに使えていないのですよ。」

 「スキルを持っているなら話は早いですね。 それでは魔道具について話しましょう・・・」

 魔道具に関しての概要は、

 ・魔道具とは魔力で作動するものや、特殊な効果をもつものを魔道具という。
 ・金属や魔石に魔法を付与したり、魔石の属性を引き出す事で魔道具として扱える。
 ・素材の属性に順ずる効果は反映できるが、反する効果は反映しない。
 ・作動させるには基本的に少量の魔力が必要だが、MPが減るほどは感じない。
 ・複数の機能を持たせることも出来るが、相応の素材と魔力が必要。
 ・素材の内蔵魔力により効果の大きさ、持続時間が変化する。ただし付与する魔法で変化あり。
 ・金属や魔石の内蔵魔力は基本的に大きさに依存する。
 ・魔道具作成スキルが無ければ魔法の付与は不可能。
 ・スキルレベルにより付与の範囲、効果も変化する。

 火の属性を持つ魔石を用いてライターの様な機能を持つ魔道具は出来るが、火の属性を持つ魔石に冷蔵庫の様な機能を持つ魔道具は出来ないようだ。
 おれには魔道具スキルがあったから、時間停止の付与もすんなりかけれたようだ。

 「インゴットからペンダントや指輪を作成しますが、鍛冶の範疇でもあるのでそこはアントンさんに任せましょう。 私は銀を用いて実際に魔法を付与する事を教えていきましょう。」 
 
 「ありがとうございます。」

 奥の工房は魔道具用の小さな炉と、作業台、様々な素材がキレイに棚に並んでいた。
 早速目の前でまだアクセサリーにもなっていない銀の小さな塊を手に取ってラーレさんが説明してくれる。

 「今回はこの銀の塊を使いますが、本当は先に装飾品などの形に整えてから、魔法を付与します。 装飾品のランクが高いほど付与効果も高まりますが、練習なのでこれで大丈夫でしょう。 それでは今から硬化の付与を行いますので見ていてくださいね。」

 直径1センチ程の銀の塊を手のひらに置いて、魔力を込めている。 5秒くらいで緊張が解けたように微笑みながら、銀の塊を作業台の上に置いた。

 「そう言えばヤストさんは、鑑定のスキルは持っていますか? 無ければ叩いて硬度を確認してみるしかないのですが・・・」

 (ヤスト、鑑定スキルは職人や商人は持っている人がある程度いるので言っても大丈夫です。)

 「鑑定スキルはあります。」

 「聞いてはいけない事だけれども、レベルを聞いてもよろしいかしら?」

 (鑑定レベルによって、見える範囲が違います。 5と言って下さい。)

 「ええ大丈夫です。 鑑定のレベルは5です。」

 「がんばってレベルを上げられたのですね、それなら付与の効果まで見れるはずです。 こちらの銀と付与した銀を見比べて見てください。」

 (鑑定スキルは1で名前、2でランクと素材、3で攻撃力や防御力、4で切れ味や耐久度、5で属性や特殊な付与効果・レア度が鑑定出来ます。 6からは精度が上がっていきますが、レア度やランクによって鑑定出来る範囲が狭まることもあります。 説明はランク7ですので言わないようにしてくださいね。)

 《さっきからありがとうなアリス、助かるよ。》

 念話で話しながらも、魔眼で銀を確認する。

   銀 (付与なし)
   ランク C
   硬度  C
   レア度 C
   属性 なし
   特殊 なし
   素材 銀
    精錬された銀

   銀 (付与あり)
   ランク B
   硬度  B
   レア度 B
   属性 なし
   特殊 付与:硬化
   素材 銀
    精錬された銀に硬化の付与がかかっている。精錬銀より硬度は増すが加工はしにくい性質を持つ。

 「硬化の付与が確認出来ました。 硬化と出ています。」

 「良かったです。 私の鑑定にもそう出ています。 見てもらった様に硬化のイメージを持って付与してみてください。 それでは私は店にいるので硬化付与が上手くいったら持って来て下さいね。」

 そう言いながらラーレさんはスタスタと店に戻っていき、いきなりの放置系スパルタ具合におれとアリスは無言で見詰め合っていた。
 
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