寝坊少年の悩みの種

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幕間 瑞穂の推理

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 結論から言いましょう。葵と遠藤君、二人の関係は限りなく怪しい。

 遠藤君はあんなに考えてものを話す人だったでしょうか。確かに込み入った内容ではありますが、それにしたって彼にしては慎重に過ぎるというか、どうとでも取れる内容でした。すでに用意された回答をしていた。そんな風に感じましるくらいには。
 伊達に新学期が始まってから、長い間毎朝一緒に登校していません。ちょっとした機微は読み取れるようになっているつもりです。
 今日の彼はいつもの純朴さは鳴りを潜め、どこか空虚な、無理をして動揺をしていない風を装っているように見えました。
 そして早織のことを出した途端動揺が表に出たような気がします。やはり文化祭の終盤に喧嘩ではない何かがあったとみて考えるのが自然でしょう。だとするといったい何が……?

 早織が探っていたということも考えると二人は偽のカップルである可能性があるということになります。偽のカップルになる目的といえば、そう、他の異性を寄せ付けないため。それによって不和を起こさないため。これが自然でしょう。ですがそんなフィクションみたいなことをするほど困っていたのでしょうか。こればかりは推測の域を出ません。それに遠藤君にメリットがない。
 しかし直前に早織との間に何かあったと考えるならば少なくとも遠藤君にメリットがある可能性が一つあります。メリットと言えるものかは人によりますが。

 早織がもし告白をしていて、遠藤君にそれを受け入れる気がなかった場合です。そしてそうだと仮定するとその後の早織の行動は諦めていないもののそれ、受け入れる気がないのなら鬱陶しいことこの上ないでしょう。
 しかし彼はやさしいことを私は知っています。彼が誠実な人であることを知っています。普段はなんだか捻くれた態度ですが、予想が正しければ誠実に断ったであろうことを。そして受け入れることができないその想いを何度も断り続けることは彼に負担を強いるであろうことを。

 諦めさせるために利害の一致した葵と徒党を組み、このような行動に出たと考えれば合点がいきます。
 だけれどもあまりに荒唐無稽。本当にカップルである可能性の方がはるかに高い。
 実は私が偽のカップルであればいいなと思っているだけなのかもしれません。小説の読みすぎでは、とも思いました。
 でもどうしてだか私はこの可能性を見過ごすことができません。
 といっても、今の私に何ができるでしょう。もし本当にそうだったとして、真実を明かすことは本当に正しいことなのでしょうか。

 早織がかなわない想いを抱き続け、遠藤君と互いに傷つき続けることになってもいいのか。葵と遠藤君がよしとしたことを無意味にしてもいいのか。そしてもし二人が本当のカップルだとして、それに難癖をつけるようなことをしていいのか。
 一連の件で蚊帳の外だった私には、それを引っ掻き回す権利なんてないんじゃないか。


 そんなことを考えながら、いつしか一学期も終わりを迎えようとしていました。
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