173 / 179
遺跡の発掘
168話 発掘隊の到着
しおりを挟む
「教授、着きましたよ」
勝畑教授は大学の仕事を休み、かつての大恩人である松田マツの願いを果たすために、ここ徳島県阿波の遺跡現場へ到着した。数日で準備を整え、教授に同行してくれたのは、助手の松川をはじめ、遺跡発掘の時に必ず集まってくれる約20名の精鋭達だ。
「ふ~、やはり、東京から徳島までは遠いな。なにしろ、急な遺跡発掘の依頼で車で機材を東京から運ばなければいけなかったし、なにしろ、ここは、あまり、遺跡があるとは思われていないところでもあるから、全くの情報不足で現地にいる、リーダーの太平まみさんに状況を聞いてからでないと、どこを調べてよいのかもわからないしな」
同行している松本は神経質な男で、事前に遺跡現場の全容や細部にいたるまで、把握していないと気が済まない性格で今回の仕事に不安をいだいていた。
とんでもない、いなかの小高い丘のあちこちで、植栽の伐採や周辺の道路の整備、これから、集まってくる遺跡発掘に必要な仮設トイレや休憩所や仮に資材を保管できる倉庫のようなプレハブなど、あちこちで100人以上の作業員がめまぐるしく動いている様子を見て
「教授、すごいですね。松田さんから連絡があってからまだ数日しか経っていないのに
ものすごい、勢いで、ここは整備されていますね」
「アハハハ、あの人が本気になれば、こんなことぐらいどうってことないだろ、よし、とりあえず、あの仮設ハウスにいるリーダーに細かい話を聞こう、仕事はそれからだ」
10台のワゴン車で東京から来た発掘隊は全員、リーダーのいるところへ歩いて行った。
「葉子さん、こんな感じですかね」
まみはこれからくる発掘隊にできるだけ環境の良い所で仕事をしてほしいと思い、会議テーブルや椅子の配置などを気にしていた。
「まみさん、そういうのは先日から助手に頼んでくださいと言っているじゃないですか」
「でも、沢山の方が来られるのに私も何かお手伝いをしたいのです」
葉子は困った様子で
「まみさん、この前から言ってますが、あなたはリーダーなんですよ。そういった細かい準備は助手に任せて、あなたはこれから来られる発掘隊の指示をきちんとしてください。まみさんが個人としての能力がいくら高くても、10人いや100人の人間をうまく使えば、その能力は10倍、100倍にもなるんですよ。あなた1人だけの能力向上なんて意味がありません。とにかくここでは、今までの考え方を改め、リーダーとしての仕事にてっしてください」
まみは、また葉子にしかられて、苦笑いをした。
「コンコン、発掘隊到着しました」
「どうぞ」
まみは扉をあけて、用意した会議ができる部屋に皆を案内した。
「いやあ、外は暑いですが、ここは冷房が利いていて、最高だな。あのバイトさん、みんなに冷たい飲み物を出してもらえないですか」
松川はまみを見て、アルバイトの女の子だと思い、飲み物を頼んだ。
「はい、わかりました」
「あとさあ、バイトさん、外にある荷物が多いから、あとで運ぶの手伝ってくれる」
「はい、わかりました」
まみは急いで、冷蔵庫に行き、飲み物の準備をしようとした。
「まみさん!何回言ったらわかるんですか。それは、あなたの仕事ではありません。あちらで資料の準備をしている助手に頼んでください。あなたはバイトじゃなくて、ここの責任者なんですよ」
「だって、私は大学2年生で、そんな、私のお父さんよりも年上の人を使えなんて言われてもすぐには無理ですよ」
葉子はまみをにらんで、
「松田財閥がまみさんの話を信じて、いったいどれくらいの費用を出しているかわかりますか?うちはおおよそ30億円以上はかかる見込みでいます。そのお金を無駄にするつもりですか。おばあさまはまみさんと話して、あなたの考古学の能力もそうですが、リーダーとしての能力があると思ったから、まみさんに全てを任せているのです。昔から、おばあさまがこの人なら大丈夫と信じた人は必ず、その事業を成功させます。ですから自信を持ってください。ここでは以前のようにみんなにバカにされていた歴史オタクではなく、日本古王朝の王宮を見つけた、偉大な発見者として、あなたは見られているんです」
まみは葉子の話を真剣に聞きながら、自分自身に気合を入れて
「わかりました。葉子さん、私がんばってみます」
葉子は急に顔つきが変わったまみを見て、うれしそうに笑った。
20人の発掘隊が仮設ハウス内のミーティングルームに入って、椅子にすわった。まみの助手になった物資調達担当の伊藤がまみの代わりに冷たい飲み物を皆に配り、同じく助手の佐々木が資料を皆に配布した。
「教授、そういえば、リーダーの大平まみさんはどんな方なんですか。来る時も、みんなと話してましたが、学会でも研究者などでも、全く聞いた事が無いですよ」
勝畑教授も困った様子で
「私もマツ会長から、詳しく聞いていないんだ。ここに来れば、会えるから、聞きたい事があれば、本人に直接聞いてくれと言われてな」
「しかし、このような世紀の大発見ともいえるこのプロジェクトをあの世界でも大企業マツダのバックアップを得た女性ですからね。なんだか、ぼくは会えるのが楽しみでドキドキしてきましたよ」
助手の佐々木はミーティングルームに集まった発掘隊が全員着席したのを確認して
リーダーであるまみに
「リーダー、全員揃いました」
「わかったわ。佐藤さんドローンから撮影した映像やイメージ画像の準備は大丈夫ですよね」
「はい、指示通りできてます」
助手の佐藤はパソコンで特殊な構造物やイメージ映像などを制作できるスペシャリストで、歳は若いがいつもは東京で特殊映像やIT関連のデザインなどを制作する会社を経営しており、その会社の20人以上の技術者が、今回の資料やこの映像を作成するのに会社を上げて取り組んでいた。彼も以前、松田マツに窮地を救われたことがあり、マツがひと声かければ、勝畑教授同様、命がけで、その指示に従う男であった。
まみがミーティングルームに入る前に松田葉子が先に入り、皆に事前説明をした。
「皆様、遠い所、また、お忙しい所、徳島県まで、お越しいただきありがとうございます。私は松田マツの孫、松田葉子といいます。松田マツは高齢のため、ここには来れない為、私が代理で事前説明をさせていただきます。今回のプロジェクトは松田グループが全面的にバックアプして行うものです。そして、この場所を長い時間をかけて発見した大平まみさんに全権限を委譲しております。ですから、大平リーダーの指示は絶大です。けっして、軽々しい態度や、見下した言い方をしないように注意してください。また、こちらの事情で発掘はかつてないほどのスピードで行っていただきたい。そのために人材や機材、遺跡の保管場所、それとこの地域の考古学協会員や学芸員なども手配済みです。また食事や宿泊先や移動手段など、勝畑教授からの依頼であれば、何でも対応可能です。松田グループとしては速やかな発掘のためなら、費用はいくらかかろうが対応いたします。それでは、皆様、これから、この遺跡発掘のリーダーの大平が細かい説明指示を行いますので、よろしくお願いします」
ミーティングルームに集まった勝畑教授率いる発掘隊20人は経験したことがない、高待遇にまた驚いていた。そしてこれから説明をしてくれる謎の大平まみに興味津津だった。
勝畑教授は大学の仕事を休み、かつての大恩人である松田マツの願いを果たすために、ここ徳島県阿波の遺跡現場へ到着した。数日で準備を整え、教授に同行してくれたのは、助手の松川をはじめ、遺跡発掘の時に必ず集まってくれる約20名の精鋭達だ。
「ふ~、やはり、東京から徳島までは遠いな。なにしろ、急な遺跡発掘の依頼で車で機材を東京から運ばなければいけなかったし、なにしろ、ここは、あまり、遺跡があるとは思われていないところでもあるから、全くの情報不足で現地にいる、リーダーの太平まみさんに状況を聞いてからでないと、どこを調べてよいのかもわからないしな」
同行している松本は神経質な男で、事前に遺跡現場の全容や細部にいたるまで、把握していないと気が済まない性格で今回の仕事に不安をいだいていた。
とんでもない、いなかの小高い丘のあちこちで、植栽の伐採や周辺の道路の整備、これから、集まってくる遺跡発掘に必要な仮設トイレや休憩所や仮に資材を保管できる倉庫のようなプレハブなど、あちこちで100人以上の作業員がめまぐるしく動いている様子を見て
「教授、すごいですね。松田さんから連絡があってからまだ数日しか経っていないのに
ものすごい、勢いで、ここは整備されていますね」
「アハハハ、あの人が本気になれば、こんなことぐらいどうってことないだろ、よし、とりあえず、あの仮設ハウスにいるリーダーに細かい話を聞こう、仕事はそれからだ」
10台のワゴン車で東京から来た発掘隊は全員、リーダーのいるところへ歩いて行った。
「葉子さん、こんな感じですかね」
まみはこれからくる発掘隊にできるだけ環境の良い所で仕事をしてほしいと思い、会議テーブルや椅子の配置などを気にしていた。
「まみさん、そういうのは先日から助手に頼んでくださいと言っているじゃないですか」
「でも、沢山の方が来られるのに私も何かお手伝いをしたいのです」
葉子は困った様子で
「まみさん、この前から言ってますが、あなたはリーダーなんですよ。そういった細かい準備は助手に任せて、あなたはこれから来られる発掘隊の指示をきちんとしてください。まみさんが個人としての能力がいくら高くても、10人いや100人の人間をうまく使えば、その能力は10倍、100倍にもなるんですよ。あなた1人だけの能力向上なんて意味がありません。とにかくここでは、今までの考え方を改め、リーダーとしての仕事にてっしてください」
まみは、また葉子にしかられて、苦笑いをした。
「コンコン、発掘隊到着しました」
「どうぞ」
まみは扉をあけて、用意した会議ができる部屋に皆を案内した。
「いやあ、外は暑いですが、ここは冷房が利いていて、最高だな。あのバイトさん、みんなに冷たい飲み物を出してもらえないですか」
松川はまみを見て、アルバイトの女の子だと思い、飲み物を頼んだ。
「はい、わかりました」
「あとさあ、バイトさん、外にある荷物が多いから、あとで運ぶの手伝ってくれる」
「はい、わかりました」
まみは急いで、冷蔵庫に行き、飲み物の準備をしようとした。
「まみさん!何回言ったらわかるんですか。それは、あなたの仕事ではありません。あちらで資料の準備をしている助手に頼んでください。あなたはバイトじゃなくて、ここの責任者なんですよ」
「だって、私は大学2年生で、そんな、私のお父さんよりも年上の人を使えなんて言われてもすぐには無理ですよ」
葉子はまみをにらんで、
「松田財閥がまみさんの話を信じて、いったいどれくらいの費用を出しているかわかりますか?うちはおおよそ30億円以上はかかる見込みでいます。そのお金を無駄にするつもりですか。おばあさまはまみさんと話して、あなたの考古学の能力もそうですが、リーダーとしての能力があると思ったから、まみさんに全てを任せているのです。昔から、おばあさまがこの人なら大丈夫と信じた人は必ず、その事業を成功させます。ですから自信を持ってください。ここでは以前のようにみんなにバカにされていた歴史オタクではなく、日本古王朝の王宮を見つけた、偉大な発見者として、あなたは見られているんです」
まみは葉子の話を真剣に聞きながら、自分自身に気合を入れて
「わかりました。葉子さん、私がんばってみます」
葉子は急に顔つきが変わったまみを見て、うれしそうに笑った。
20人の発掘隊が仮設ハウス内のミーティングルームに入って、椅子にすわった。まみの助手になった物資調達担当の伊藤がまみの代わりに冷たい飲み物を皆に配り、同じく助手の佐々木が資料を皆に配布した。
「教授、そういえば、リーダーの大平まみさんはどんな方なんですか。来る時も、みんなと話してましたが、学会でも研究者などでも、全く聞いた事が無いですよ」
勝畑教授も困った様子で
「私もマツ会長から、詳しく聞いていないんだ。ここに来れば、会えるから、聞きたい事があれば、本人に直接聞いてくれと言われてな」
「しかし、このような世紀の大発見ともいえるこのプロジェクトをあの世界でも大企業マツダのバックアップを得た女性ですからね。なんだか、ぼくは会えるのが楽しみでドキドキしてきましたよ」
助手の佐々木はミーティングルームに集まった発掘隊が全員着席したのを確認して
リーダーであるまみに
「リーダー、全員揃いました」
「わかったわ。佐藤さんドローンから撮影した映像やイメージ画像の準備は大丈夫ですよね」
「はい、指示通りできてます」
助手の佐藤はパソコンで特殊な構造物やイメージ映像などを制作できるスペシャリストで、歳は若いがいつもは東京で特殊映像やIT関連のデザインなどを制作する会社を経営しており、その会社の20人以上の技術者が、今回の資料やこの映像を作成するのに会社を上げて取り組んでいた。彼も以前、松田マツに窮地を救われたことがあり、マツがひと声かければ、勝畑教授同様、命がけで、その指示に従う男であった。
まみがミーティングルームに入る前に松田葉子が先に入り、皆に事前説明をした。
「皆様、遠い所、また、お忙しい所、徳島県まで、お越しいただきありがとうございます。私は松田マツの孫、松田葉子といいます。松田マツは高齢のため、ここには来れない為、私が代理で事前説明をさせていただきます。今回のプロジェクトは松田グループが全面的にバックアプして行うものです。そして、この場所を長い時間をかけて発見した大平まみさんに全権限を委譲しております。ですから、大平リーダーの指示は絶大です。けっして、軽々しい態度や、見下した言い方をしないように注意してください。また、こちらの事情で発掘はかつてないほどのスピードで行っていただきたい。そのために人材や機材、遺跡の保管場所、それとこの地域の考古学協会員や学芸員なども手配済みです。また食事や宿泊先や移動手段など、勝畑教授からの依頼であれば、何でも対応可能です。松田グループとしては速やかな発掘のためなら、費用はいくらかかろうが対応いたします。それでは、皆様、これから、この遺跡発掘のリーダーの大平が細かい説明指示を行いますので、よろしくお願いします」
ミーティングルームに集まった勝畑教授率いる発掘隊20人は経験したことがない、高待遇にまた驚いていた。そしてこれから説明をしてくれる謎の大平まみに興味津津だった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
お父様の相手をしなさいよ・・・亡き夫の姉の指示を受け入れる私が学ぶしきたりとは・・・
マッキーの世界
大衆娯楽
「あなた、この家にいたいなら、お父様の相手をしてみなさいよ」
義姉にそう言われてしまい、困っている。
「義父と寝るだなんて、そんなことは
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
俺達は愛し合ってるんだよ!再婚夫が娘とベッドで抱き合っていたので離婚してやると・・・
白崎アイド
大衆娯楽
20歳の娘を連れて、10歳年下の男性と再婚した。
その娘が、再婚相手とベッドの上で抱き合っている姿を目撃。
そこで、娘に再婚相手を託し、私は離婚してやることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる