平和への使者

Daisaku

文字の大きさ
上 下
92 / 179
暗躍組織 〈中東編〉

88話 ミッシェルの演技

しおりを挟む
博物館の待合室に到着した。マリ、イブ、ユウキ、カミーユの4人でミッシェルと話すことにした。待合室の扉を開けるとミッシェルが待っていた。

「ボンジュール、カミーユ」

「先生、お久しぶりです。お元気でしたか?」

「あ~、相変わらず、独身で気ままに生きているよ」

「この方達が、治安情報局の人達か?随分、若いな、まだ、高校生ぐらいじゃないのか」

「まあ、そうなんですけど、こちらの3人は私の上官にあたります」

「本当なのか!なんでこんなに若いのにそんなことになるんだ?」

「先生、これから話すことは政府でも秘匿情報になります。大変、申し訳ありませんが、
こちらの誓約書にサインをいただき、関係者以外には絶対に口外しないようにしてください」

「おいおい、随分、御大層な話だな、サインしなければどうなるんだ」

「先生の知りたい、古代文字の情報や常識では考えられない世界を知ることができなくなります。私もそうでしたが、人生の中で、今以上の決断は絶対にないと断言できます」

「そうすると、カミーユは今は仕事が楽しいのか」

「はい、信じられない世界を見ることができて、毎日、楽しいです。厳しい上司がいるのが
大変ですけど」

イブは隣でカミーユを睨みつけた。
ミッシェルは誓約書を見ながら、しばらく考えて

「カミーユ、サインするよ。どうせ、独身の気ままな人生だ、どう転ぼうが、大したことないだろう。
ハハハ」

ミッシェルは誓約書にサインをした。その途端、イブがニヤニヤしながら、

「随分、久しぶりだな、ミッシェルとやら、考古学研究所のロビーで会った以来だな」

ミッシェルは首をかしげ

「どなたですか?こんな若い少女には、会ったことがないけど」

「そうか、わからないか。お前達で考える年から15歳ほど若い姿になったからな」

「ロビーでトイレの話をしただろ。モーリスが、忘れたのか?」

ミッシェルはイブに近づいて、ジーっとその容姿を見て、驚いた様子で

「もしや、あなたは、あの時に逃げ出した、金髪美人の古代人ですか」

「お前も鈍いやつだな。やっと思い出したのか」

ミッシェルは体を震わせながら、イブの体を触りまくり

「本物なんですね。あなたは」

「ベタベタ、触るんじゃない。気持ち悪い」

「すいません。失礼しました」

「マリ、どうやら、こいつは、私に興味があるみたいだから、このまま用件を話すよ」

マリは笑いながら

「そうだね。イブ、お願い」

イブはミッシェルに

「今日、来たのは、今、展示室で行っている、棺の再調査をやめさせ、何事もなかったように
してほしい、その代わり、お前の質問に答えてやろう」

「棺は別の物に入れ替わっていますから、再調査はやめれませんよ」

「なぜ、別の物に入れ替わっているとわかったんだ?」

「棺に描かれている文字がほとんど違うものになっているからですよ」

「なるほどな、確かにあれは、ベータのことが記載されているから、それに気が付いたというわけか」

「じゃあ、元の文字と同じにすれば、その再調査しているやつを帰すことができるのか」

「はい、そんなことができれば、そうすれば、見間違いだったと言えますから」

「それじゃあ、私を展示室まで連れていけ、文字を私の宇宙船と同じものに書き換えるから」

「そんなことができるのですか?」

「簡単なことだ。あれを作ったのは私なんだから」

それを聞いていたユウキが

「ミッシェル、イブが書き換えている間、調査をしている人を全員一度、外に出してくれないか、モーリス博士も含めて」

「モーリスもですか?」

「そうです。書き換え作業を見られると面倒なので」

「わかりました。何とかやってみます。おっと、その前に、あの棺には何が書いてあるんですか?」

イブが笑いながら

「そんなまじめな顔で聞くようなものは書いてないぞ、宇宙船を使用している者の名前、階級・特徴・能力、それと、従う主人の名前、製作年数、製作場所などが書いてあるだけだぞ」

「そうなんですか」

「ミッシェル、ちょっと、今は時間がないから、来週でも治安情報局に来てくれれば、細かいことまで、教えてやる。だから、今は急ぎで協力してくれ。頼む」

ミッシェルは頷いて

「わかりました。あなたを信じます。でも、約束ですよ。絶対に教えてくださいよ」

「わかったから」

「じゃあ、行ってきます。しばらくしたら、展示室まで来てください」

そう言ってミッシェルは展示室に向かった。

「すみませ~ん。もう一度、じっくり棺を確認したいので、皆さん一度、外に出てもらえますか」

モーリス博士が驚いた様子で

「なんだよ、外にでたって、状況は変わらないだろ、急にどうしたんだ、お前」

「お願いします。細かく見るには、人がいると、確認しづらいので、10分ぐらいでいいんです。
ちょっと休憩もかねて、出ていただけますか」

「まあ、いいよ。お前がそこまでいうなら、外でタバコでもやってくるか」

「ありがとう」

やっと、調査員やモーリス達を外にだすことができ、イブたちは展示室に入った。
棺の前にイブが来ると、棺に向かって手をかざして、目を閉じた。しばらくして、イブの手が赤く光りだして、棺の文字がみるみると改変されていった。1分ぐらいしたら

「終わったぞ、ミッシェル、以前の文字と寸分違わず、同じものになったぞ」

ミッシェルはその様子を見て、興奮が収まらなかった。

「それじゃあ、ミッシェル、後は頼んだぞ」

「わかりました。何とか、うまくごまかしてみます」

「先生、それでは、すみませんが、今日は時間がないので、これで行きます」

「おう、カミーユまたな」

カミーユはミッシェルと握手をして、マリ達は博物館の外に出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

隠れチート!異世界スローライフを謳歌する侯爵令嬢

 (笑)
恋愛
侯爵家の令嬢として異世界に転生したアリシアは、静かなスローライフを夢見ている。しかし、彼女の中には秘められた強大な魔力が眠っており、その力が国の未来に深く関わる存在だと知らされる。彼女は自身の力に戸惑いながらも、平穏な日常を守るためにどう行動すべきかを模索していく。 王家や騎士団、そして謎の襲撃者たちに囲まれる中、アリシアはその力をどのように使うべきか、そして何を守るために戦うのかを選択しなければならない。彼女の静かな願いと、国の命運が交差する中で、アリシアは自分の道を切り開いていく。

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

転生した悪役令嬢は異世界でメイドカフェを開きます。あ、勇者様はスポンサーでお願いします!

高井うしお
ファンタジー
リリアンナは冷たい言葉と共に王子に婚約破棄された。しかしそれは彼女の目的の序章に過ぎなかったのだ。 「私、メイドカフェの妖精さん(運営する人)になれるなら鬼になります!」 「え?」  リリアンナは異世界転生したメイドフェチだったのである。  一方、高校生の時に異世界転移し、魔王討伐を終えた勇者ハルトは褒美に領地を与えられ、悠々自適の生活を送る予定だった。  だが、ついでに王からリリアンナを花嫁として押し付けられる。 こいつは、やばい!だが……。 「離婚? やだ、王の名前で鳴り物入りで結婚したのに出来るわけないじゃないですかー」 かくして、ハルトは魔王よりやっかいな嫁とともにメイドカフェを経営することに……? ━━━━━━━━━━━━━━━ お陰様でホットランキングにのれました。 ありがとうございます。 お気に入り登録をぜひお願いします!

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

処理中です...