平和への使者

Daisaku

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暗躍組織 〈中東編〉

84話 トニーの任務

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「あれは、ちょうど半年前の1月、軍の諜報部からトニー軍曹を諜報部に異動させてほしいと
連絡がありました。だが、トニーは今年いっぱいで退官することも決まっていたので、そのように話をしたんですが、どうしてもトニーが欲しいというので、理由を聞いたんですが、どうも煮え切らないような回答で、体術や近接戦がすごいとか、言ってしきりにお願いをされまして、本人にも聞いたんですが、すぐに退官になるからと言って拒否され、一度は断ったんですよ。まあ、任意の話だったので」

将軍はマリ達が、どんな人達かよくわかっているようで、躊躇なしにどんどん話をしていった。

「また、1週間ぐらいして、今度は軍からの命令書が届き、トニーを軍曹から少尉に昇格、それと、諜報部への異動について、報償金が支払うと記載がありました。それも、かなりの額の、
また、そのことをトニー軍曹に話をしたら、実家の農家が最近は不作続きで、経済的に厳しいということもあり、報奨金が出るのならということで、本人も了承して、異動になりました」

「なるほど、それで、トニーはどうなったんですか?」

「いえ、その後は、異動してしまったので、現在の状況は全くわかりません。ですが、諜報部に問い合わせれば、すぐにわかると思います。異動する時に、私は条件を出しましたから、この基地の教官として、永い事、彼は頑張ってくれましたから、異動する条件として、彼が、どんな仕事をして、どこに行くか、私が聞いたら、隠さずに話すこと、それを承諾しなければ、異動させないとね。ちょっと、お待ちください。いま、諜報部の長官に連絡しますから」

「ぶ~、ぶ~、はい、」

「長官、久しぶりだな」

「そうだな、どうした、めずらしいな将軍、連絡してくるなんて」

「ちょっと聞きたいことがあるんだが、半年前に異動させた、トニーは元気か?」

「元気だぞ」

「今、どこにいるんだ?」

「今かあ~」

諜報部長官は少し考えこんで、アベルが電話越しから、

「長官、命令だ、すぐに話せ」

「将軍、他に誰かいるのか」

「ああ、アベル大臣とそれと、なんとマリ・トビシマもいるんだぞ」

「え~、あのマリ・トビシマかあ、どうなんだ、やっぱり若くてキュートなのか」

「ばか、隣にいて、スピーカーで聞こえてるんだぞ」

「やばい、すみません。失礼しました」

マリはクスクスと笑ってしまった。

「大臣、トニーはさきほど中東のムセビア国に入りました。明日、チームと合流、核兵器・化学兵器の捜査が主ですが、あわよくば、アハド大統領の所在も突き止めるように指示をだしています。居場所がわかれば、ピンポイント攻撃で彼を抹殺することも準備しています。もちろん、攻撃の時は国の承認が必要になりますが、それとチャンスがあれば、トニー少尉とチームには暗殺も選択肢の一つと話してあります。ピンポイントとはいえ、ミサイルでは、必ず巻き添えで数十人~数百人の犠牲がでてしまうこともありますから」

アベルは話を聞きながら、そんな行動計画があったこと自分の知らないところで進行中だとは思わなかった。そこでアベルは

「長官、外国での活動は必ず、実施する前に連絡をしろ」

「いえ、大臣に1年前にこの計画の報告書を出して、政権が不安定になった場合や核や化学兵器について、確信があれば、秘密裏に動く、承認はいただいております」

アベルは

「そうだったか」

「そうです」

マリはすかさず、

「長官、それで、トニーは今どこのホテルにいるの?」

「え~とそれは、安全区域のホテルというだけで、わかりませんね。チームとの集合も彼らに任せているし、情報漏洩もこわいので、首都の安全区域のホテル内ということだけしか
わかりません」

「そうですか。でも、それだけわかれば、ある程度は探せると思います。とんでもない、暗躍組織がトニー少尉の命を狙っているので、それでは、我々は 救出するべく、行動させてもらいます」

アベルは驚いた様子で

「暗躍組織?そんな組織があるんですか?」

イブはもう、しびれをきらしたように

「マリ、ここでは、マリのサポートに回るように厳しく言われてたけど、意見してもいいかな?」

さっきから、話に入りたくて、ウズウズしていた、イブにマリは

「いいわよ、イブもう話しても」

「ありがとうマリ」

「アベル、この組織は世界中に散らばる、とんてもない暗躍組織だぞ、どういう理由かわからないが、何もしなければ、トニーは必ず殺される、さっきチームが明日、合流するとか言ってたな、何人合流するかしらないが、もしかししたら、その時に全員、殺されるかもしれないぞ」

アベルや、将軍、長官達はびっくりして

「長官、すぐに連絡を取って、集合を止められないのか」

「無理です。任務が達成されるまで、へたな連絡は危険が増すだけなので、こちらからは連絡を取ることはできません」

「そうか・・・」

そんな中マリは

「皆さん、大丈夫です。治安情報局でなんとか、みつけ、救出してきますから」

マリは笑顔で、皆に話した。

「長官、命令書のようなものを出すことはできるか?さっきの少佐ではないが、我々が彼らをみつけても、言うことを聞いてくれなければ、助けようがないからな」

「そうですね、今、作成して、そちらに送ります。それを見せれば、彼らは任務をすぐに中止、
日時指定をされた連絡があるまで、任務をしなくなりますから」

「それでは、ここで待っているから、命令書の発行を至急、頼む」

「アベル大臣、ガエル将軍、今日はありがとうございました。あとは、我々で対応します。それと、このことは、くれぐれも、口外しないようにお願いします。すぐそばに、あの組織の仲間がいるかもしれませんから」

「承知しました。それではマリさん、また、よろしくお願いします。でも、大統領には報告義務があるので、話はさせてもらいますよ」

「わかりました」

そう言ってアベル大臣は電話を切った。
何とか、うまくマリは情報を聞き出すことができた。そんなマリを見ながら、イブは、ここに来る前に車内でマリに

『治安情報局のイメージを大事にしたいので、私の指示があるまで、イブは絶対に話をしたら駄目よ。命令だからね、今回は私に任せて』

と言われ、自分の考えていた話ができなくて、不完全燃焼といった感じだった。
そして、ガエル将軍が10分ぐらいして、自分の職務室から、命令書を持って、マリ達のところへ戻ってきた。

「マリさん、これが、命令書です。よろしくお願いします。あと、長官から、出国の際に空港でマリさんの身分証を出せば、同行者もすぐに飛行機に乗れるように手配してありますと、言ってました。また、フランスの政府専用機もだせますが、そうすると、さすがに目立ちすぎますので」

「ありがとうございます。利用するようであれば、そうします。でも、今回は急ぎなので、たぶん利用しないとは思いますけど」

将軍は不思議そうな顔で

「あの~飛行機を使わないで、どうやってムセビア国に行くのですか?」

「将軍、そのことはまたの機会に」

マリはニコっと笑って席を立った。

「じゃあ~行こうか。ムセビアに」

将軍に挨拶をして、マリ達は陸軍基地をあとにした。
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